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第834話 ライ麦の交渉価格。6(スミスVSエイミー。)

王城内の皇子妃達が居る部屋にて。

扉がノックされローナが許可を出すと武雄が入って来る。

「皆さま、戻りました。」

「「タケオさん、おかえり~。」」

皆が朗らかに出迎えて来る。

武雄は一直線にスミス達の下に行く。

「さて、諸条件はまとまりましたか?」

「はい。タケオ様、どうでしょうか?」

スミスが渡してくる。

先ほど話していた数量や価格、価格変更方法等が箇条書きになっていた。

「・・・良いのではないですか?

 アリスお嬢様やジェシーさん、レイラ殿下は何と?」

武雄はスミスに聞く。

「え?・・・はい。

 お姉様方も問題ないだろうと。エイミー殿下も問題ないだろうと言ってくれました。」

スミスは「なぜ?僕に聞くのですか?」という顔をさせる。

3姉妹やエイミーは「交渉はスミスがするのだから当然だよね」と武雄の判断が間違っていないと思っている。

「わかりました。

 でははい、これです。」

リバーシをスミスの前に置く。

「・・・タケオ様、これでどうやって交渉時の緊張を訓練するのですか?」

アリスが聞いて来る。

「んー・・・簡単ですよ。

 エイミー殿下、スミス坊ちゃんの対面でお願いします。」

「はい?・・・あ、私とするのですね。

 良いですよ。」

エイミーは言われたようにアリスに変わりスミスの対面に座る。

「エイミー殿下とやって緊張感が出るのですか?」

アリスが武雄がしたい事がわからず聞いて来る。

「・・・スミス坊ちゃん、1手打ったらエイミー殿下の目を3秒以上見なさい。」

「「はぁ!?」」

武雄の変則的なルール宣言にエイミーとスミスが武雄を驚愕の顔をさせて見る。

「交渉術とは提示する内容や順番が重要ではありますけども、それ以外には、その場で自分に有利な雰囲気をどう作るかも重要です。

 つまりは相手の思惑を外し、自分が思う通りに話を進める場を作り出す事が必要になります。」

「まぁ、そうね。」

ジェシーが頷く。

「ですが、これは経験や会場の準備とか人員とか・・・事前準備に時間が結構かかるので、ここでスミス坊ちゃんにはお教えできません。

 なら出来る事は逆の事、つまりは相手が用意する交渉場において、どんな状況でも平常心で臨めるようする必要があります。

 なのでエイミー殿下とリバーシを行い常に平常心を心掛けるようにしましょう。」

「・・・殿下と打てば訓練になるのですか?」

「交渉中に相手の目を見るのは基本です。

 それに人は自信がない時や恥ずかしい時、目を合わせられなかったり逸らしてしまう方が多いです。

 これは交渉時に有利には働きません。

 相手の目をしっかりと見て『こっちは自信満々です。さぁ!どうです!』というのがあると相手は気圧されます。

 また相手が根負けすればその時点で目が動きます。

 その時が畳みかける機会なんですよ。

 それを見逃さない為に目を見て交渉をする訓練が必要です。」

「はぁ・・・」

スミスが生返事をする。

「それに対面にしたのはリバーシをさせる為というのもありますが、緊張が伝わりやすい為です。

 緊張が伝わりやすいという事は威圧が出来ます。

 なので、自分に自信がない時はこの位置は居心地が相当悪くなります。

 これも慣れておく必要があるでしょうね。」

「なるほどね。

 じゃあタケオさん、威圧したくない時はどうするの?」

レイラが頷きながら聞いて来る。

「威圧せずに交渉をするには・・・斜め向かいでしょうね。」

武雄が説明する。

「でも、タケオさん、それって難しくないの?

 訪問先なら席が決まってるでしょうし・・・こっちに招いた時も席は対面になってしまうのではないの?」

「そうですね・・・訪問先では使えませんが、招いた時ならまず相手と挨拶をして座らせてから自らお茶を淹れる(・・・・・・・・)という行動をすれば席を変えられるではないでしょうか。」

「・・・あ・・・なるほどね。」

レイラが考えてから頷く。

「さて、しましょうか。

 エイミー殿下、よろしいですか?」

「は・・・はい!」

エイミーが緊張しながら盤面を見ている。

スミスも難しい顔をさせながら見ている。

「では、エイミー殿下からどうぞ。」

エイミーが一手打ってスミスを見る。

「・・・!」

エイミーはスミスと目を合わせると若干顔を赤くさせる。

「これ・・・ヤバイ・・・」

ボソッと呟くのだった。


------------------------

「あら~♪

 エイミーもスミスも顔が赤いじゃない♪」

「ですね~♪」

ローナとクラリッサが楽しそうに見ている。

「どっちの為の訓練なんだか・・・」

アルマがため息をつく。

セリーナは何も言わずにエイミー達を見ている。

と序盤を見ていた武雄がその場の皆に何か言ってからアルマ達の方に来る。


「タケオさん、どんな感じ?」

ローナが聞いてくる。

「両方緊張しているんですよね。

 エイミー殿下なら上手くするだろうと思ったのでお願いしたのですけど・・・」

「タケオさん、女心がわかっているんじゃなかったの?」

セリーナが言ってくる。

「男はいつまでたっても女心はわからないものですよ。

 それにスミス坊ちゃんが緊張すると思われる年齢帯で交渉経験があるであろうエイミー殿下なら上手く表情を作ってくれるかと思ったのですが・・・あれは告白したての恋人同士でしょうか・・・

 予想外です。まぁあれはあれで良いでしょうけども。」

「・・・タケオさん、エイミーが『交渉経験があるだろう』って・・・

 交渉経験の有無はわからないけどタケオさんはあると思っていたという事よね?」

「はい、そうですね。

 前に頂いた手紙の内容を見ていると駆け引きが出来るんだろうと思ったのですが・・・

 エイミー殿下は無いのですか?」

武雄が不思議そうに聞く。

「あるわよ。

 同年代が相手なら圧倒出来る程度にはしているんだけど・・・いくらなんでも15歳だからね。

 突発的な交渉は流石に旦那達や私達か局長達大人が判断するわ。

 エイミーがわりと得意な交渉は事前に打ち合わせる内容がわかっていて、心の準備が整ってからの交渉ね。

 例えば穀物とかの取引とか立食の準備とかね。

 それにエイミーなら事前に決めていた結果か、それに近い結果を持ち帰る交渉は出来るわね。

 タケオさんみたいに直ぐに交渉を仕掛けられるのはエイミーは苦手よ。

 たぶん想定が出来ていないので先が読めないからだろうけど。

 まぁ王家相手に直ぐに交渉を持ちかける人は普通はいないわ。」

セリーナが苦笑しながら言ってくる。

「なるほど。

 ・・・なら今後は殿下達にも事前に教えた方が良いですか?」

武雄が何の気なしに言ってくる。

「私は事前かな、次は王城に入っているだろうしね。

 直接一貴族から提案されてしまうのも外聞が悪いしね。

 事前でなくても誰かしら中継させてほしいかな。」

ローナが苦笑する。

「「ん~・・・」」

セリーナとリネットが唸る。

クラリッサは考えている。

「あ~、第3皇子一家(うち)は事前でなくて良いわよ。」

アルマが即答する。

「そうですか?」

「うん。ウィリアムやレイラに聞いたらわからないけど。

 少なくとも私からしたらタケオさんの即決、即行動は魅力なのよ。

 まぁ唐突に言われるから身構えるけど・・・それでも割と有効な手段を提示してくれるからね。

 それが出来るか出来ないかの判断をするだけでしょう?

 予算とか人員とか頭に入れておけば判断できるし、それにタケオさんが気が付いたという事は誰かしら考え付いている可能性がある。

 なら、その考えを知っておくだけでも私達に有利に働くでしょうね。

 出来るだけ言葉を優しくして教えてくれるとありがたいかな。」

「わかりました。」

武雄が頷きながら「やっぱりローナさんとアルマさんは正室なんだなぁ」と思うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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