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第833話 ライ麦の交渉価格。5(エリカ微復活。)

「あり得ませんね。」

武雄がバッサリと切る。

「それはウィリアム殿下達だからですか!?それとも私だからですか!?

 なんでそんなに信用できるんですか!?」

エリカが涙目で聞いて来る。

「何を勘違いしていますかね。

 私もそうですけど自分達が選んだ幹部に信用を置かないなんてあり得ません。

 それに私が殿下達の立場にいた場合、各局の次長辺りまで今のエリカさんのように悩み顔をしていたらどうしたか聞きます。

 それは評価の話ではなく、各専門部署の幹部が不安に思うことは他の幹部全員で共有しないといけません。

 そして全員で話し合い解決させておかないと後々問題になる可能性があるからです。」

「・・・でも、殿下達は聞いてきません。」

「まぁ・・・そうでしょうね。」

武雄が考えながら普通に返す。

「なぜですか?」

「私が思うに・・・ウィリアム殿下達、部下を持った事ないですよね?

 不安顔なのか考え込んでいるのかそれとも違う事なのか・・・何を考えているのか明確に判断できないのでエリカさんから話をしてくれるのを待っているのでしょう。」

「え?・・・判断できない?」

「ええ。眉間に皺を寄せて唸っているのは傍から見てもどっちなのか判断は難しいでしょう。

 考え込んでいる人に『何が不安なの?』と言っても反感を持たれるかもしれませんからね。

 それに報告自体はエリカさんからされているのです・・・でも考え込んでいる。

 何を考えているのかわからないから様子を見ていると言ったところでしょうね。」

「タケオさんは不安なのか考えているのか・・・わかりますか?」

「わかりませんね。

 だから聞くんですよ『どうしましたか?』とね。」

武雄がにこやかに言う。

「あ・・・」

エリカが武雄を見る。

「エリカさん、3人とちゃんと今現在での不安な事を全て話した方が良いです。

 もし4人で解決できなければ局長達とも話をしてエリカさんの不安を取り除かないといけません。」

「はい・・・」

エリカが頷く。

「エリカさん、その不安ですけど・・・

 誰かに任せても解消しませんからね?自分で動いて他の人の意見を見聞きして言い合って・・・

 自分で納得するまでしないと解消は出来ません。

 自分の気持ちを他人に伝えるのは苦しいものです。

 でもこのまま不安を抱えているだけではエリカさんは進めませんよ。

 苦しくても話をしてきなさい。」

「はい、わかりました。」

「エリカさん、部下は上の人達がやると言ってくれるならあとは思いっきりやれば良いのです。

 そこまでエリカさんが張り詰める事はないですよ。

 ならあとは『どーん』と座って報告を待っていたら良いのです。

 そのぐらいお気楽な方が他の人は動き易いでしょう。」

「タケオさんはどーんと座っているのですか?」

「依頼している物については最初と経過と出来上がった物を見るだけにしていますね。

 最初に示した内容なんて私の空想が下地ですからね。実際に物を作る人達はもっと現実を見ます。

 材料費、作業時間、人員費・・・それを勘案して私に報告してきます。

 『現状だとこれだけしか出来ませんから変更してください』と。

 なら私はその納期や価格を元に私の行程を変えて動けば良いと思います。

 もちろん逆もあり得ますよね。

 品質を落としても納期最優先と言わないといけない時もありますが、製作側は基本的に品質を下げる事は快く思いません。

 なら出来るだけ品質を維持させながらも、当初の予定通りに納めさせるギリギリの交渉をするのが私のお仕事であり、納期が遅れる場合は、遅らせる事を客先に了承させるのもまた私のお仕事です。

 私は発案者であり、調整者でもあります。

 製作者や実施者は別ですね。」

「んー・・・」

エリカが腕を組んで悩む。

だが、最初にあった陰りは少し和らいでいるように武雄は見えていた。

「私は担当者が他人に相談したから能力が足らないとは思いません、むしろ自分の考えだけでなく他者の意見も聞ける、わからないことがあっても見栄を張らないというのは評価するべきだと思います。

 『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』とも言いますからね。」

「聞くは一時の恥・・・」

エリカが考える。

「知ったかぶりをしないで素直に聞きましょうという事ですよ。

 さてと、私は先に戻りますかね。」

武雄がリバーシを持ち上げる。

「あ、私も。」

「エリカさんはもう少しここに居た方が良いかもしれませんね?」

「え?」

「顔・・・洗ってきた方が良いですかね?

 目が少し腫れてます・・・美人が台無しです。」

「う!・・・はい・・・わかりました。」

エリカが顔を赤らめる。

「あと、気が向いた時にでもどうぞ。」

武雄が片手でリバーシを持ち、懐から手紙を出してエリカに渡す。

「?・・・これは?」

「いえ、ふと思った事を書いたので使えたら使ってください。」

武雄がそう言うが、エリカは手紙と武雄を交互に見る。

「・・・新しい事業・・・ですか?」

「さぁ?それはエリカさんが決めてください。」

「卸売市場と同じですか・・・」

エリカがガックリとする。

「別にしなくてはいけない事ではないですし、『出来たら便利だろうなぁ』という程度です。」

「私に渡すという事は大事なのですよね?」

「そうですね・・・まぁやり方にも寄るでしょうけどね。

 規模をどうするかとか、人員をどうするかとか、受け持ちはどこがするのか・・・

 まぁハッキリ言えば卸売市場より面倒かもしれませんね。」

武雄がにっこりと笑う。

「・・・後で見ます。」

「ええ、気が向いた時で良いですよ。

 では私は先に戻ります。」

「はい、私も顔を洗ったら戻ります。」

エリカが頷くのを確認して武雄は執務室をあとにするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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