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第829話 ライ麦の交渉価格。1(スミスの成長。1)

皇子一家がワイワイしながら書いているのを見ながら。

「ライ麦の価格はどうなりましたか?」

武雄がスミスに聞く。

「ん~・・・一応、アリスお姉様と話をしているのですけど・・・僕の提示価格を見せたら難色を示されまして。」

「そうなのですか?」

武雄がアリスを見る。

「ええ、スミスは王都の小売価格から値引きする金額を書いたのですけど。

 最初に値引きをしても良い物なのでしょうか?」

「ふむ・・・ジェシーさんはどう思いますか?」

武雄が今度はジェシーに振る。

「ん?・・・まずは内容を見せて貰って良いかしら。」

ジェシーがスミスが書いた価格と資料を見る。

「・・・ふむ・・・なるほどね。王都ではエルヴィス領からの仕入れがないと。

 スミスはこの時点で不利と悟ったのね。」

「はい。

 王城で買って貰うには他領での仕入れ価格より低く抑えれば確実に採用して貰えると思うのです。」

スミスがジェシーに言ってくる。

「タケオさんはどう思う?」

「確実に言えるのは、初回で値引きをするのは頂けませんね。」

「あ、タケオ様はそう思うのですね。」

「ええ。それでは他の地域へ卸す場合は同等の値引きをしないといけません。

 私が4姉弟で話せと言ったのは『ウィリアム殿下領とゴドウィン伯爵領にも卸すんだよ?』という事を意味して言っています。

 ですが、見た感じお二人とも参加している様子がない。

 ジェシーさんとレイラ殿下の事ですからその辺も考えて打ち合わせに参加してないのかもしれませんけど。」

「あ、やっぱりタケオさんの意図はそこなのね。」

ジェシーが「やっぱりね」という顔をさせて言ってくる。

「いちいちするのが面倒ですからね。

 それに施政者側で直接取引が出来るんですよ?今手を打たないと勿体ないでしょう?」

「はは、タケオさん、ほんと商売人ね。

 まぁなので私とレイラは見知らぬふりをしています。」

「そうですか。

 ではスミス坊ちゃん、この初回で引くのは頂けないと言われた場合はどうしますか?」

「ん~・・・ん~・・・

 タケオ様は値引きをしなくても買って貰える自信があるのですよね?」

「料理長に『他の2領より優先的にこっちを買って貰える候補』にして貰えるだろうというくらいの内容は説明出来ますね。

 まぁ後は実際に料理長の判断になりますので最終候補まで残れば、他の領地へも同じ内容で提示出来るでしょう。

 スミス坊ちゃん、何を根拠に私は言っていると思いますか?」

「んーんー・・・」

スミスが悩み始める。


スミスは武雄が言った『値引きしないでも説明だけで買って貰える候補』になれると言う所を思案する。

要は他の地域よりもエルヴィス領のライ麦の方が有利だ、もしくは品質が良いと言っているという事なのだ。

流通コストとしては他の2領よりも遠い・・・ならこれはマイナス要因。

他の2領でなくてエルヴィス領にはある物、もしくはこれから出来る・・・と。その時スミスが閃く。


「!・・・タケオ様。」

スミスが目を見張りながら武雄を見る。

「どうしましたか?」

武雄が嬉しそうに頷く。

「た・・・例えばです。

 ライ麦の生産地というのはどの地域も北方の地域です。」

「そうですね。

 エルヴィス領でも北町のみでの生産ですね。」

武雄が真面目な顔で頷く。

「はい。

 そして国民や領民からはライ麦から作ったパンは味が不人気で最低限の生産しかしていません。

 明らかに小麦の生産量の方が上です。

 えーっと・・・この資料です。」

スミスが生産量の資料を武雄の前に置く。

「・・・そうみたいですね。」

武雄も軽く資料を見る。

「タケオ様・・・ライ麦の増産に動いているのはエルヴィス領(うち)だけだと想定します。」

「それで?」

「それもただ量を増やすのではなくウォルトウィスキー(・・・・・・・・・)の為に増産がかけられます。

 他の地域のように予備的な穀物生産ではなく、製品を作る為の増産になるので、当然、農家たちのやる気もあり、結果、品質を維持した物を今後も作っていくと思います。

 品質の面で他の2領いや3領よりも上ではないでしょうか・・・いや、僕達の領民は絶対に良い品質を作ってくれると思っています。

 なので、現状の王都で流通している価格で卸して貰えるよう交渉をしようと思います。」

スミスが顔を輝かせて言ってくる。

「ふむ・・・アリスお嬢様、ジェシーさんと聞き耳を立てているレイラ殿下。」

「はい。」

「ええ。」

「ばれてた。」

レイラが武雄達の方にやって来る。

「さて、スミス坊ちゃんのこの説明で買ってくれるでしょうか?」

「「「押しが足らない。」」」

3人の姉が即答する。

「ふぇ・・・」

スミスが涙目になる。

「ふふ、では品質面ではそれで良いでしょう。

 なら今度はどんな価格で卸すかを考えますか。

 とりあえず・・・王都で売られている値段で交渉するとしますか?」

「は・・・はい。この価格で品質を保つことを条件に・・・」

スミスが弱々しく言ってくる。

「スミス坊ちゃん、料理長が知りたいのは品質もそうですが価格だと思いますね。」

「それは・・・そうです。なので王都の現状の値段で・・・」

「ふむ・・・わからないか・・・

 組織というのは予算という物が基本になります。

 この予算編成は前年もしくは2年前から企画し通すのですが・・・スミス坊ちゃん、穀物や肉の価格は毎日同じですか?」

「いえ、多少上下してい・・・は!

 料理の食材は安定していないから予算が作り辛いということですね?」

「んー・・・概ね合っているのですけど、ちょっと私が伝えたい事と違います・・・」

武雄が難しい顔をさせる。

「スミス。

 タケオさんはね、『穀物価格の上昇を見越して、数年後までの卸値の確約をしてみては?』と言っているのよ。」

レイラが武雄の代わりに言うのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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