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第828話 麦茶の試飲。

王城内の皇子妃達が居る部屋にて。

ジェシーやエリカが皇子妃達とのんびりとしている部屋の隅でアリスとスミスが机に陣取り打ち合わせをしている。

ジーナが武雄から持たされた経済局が持っていた全貴族領の主要穀物の生産量の概要数値も一緒に見比べていた。


「んー・・・アリスお姉様、これでどうですか?」

スミスが簡単に試算した物をアリスに見せる。

「・・・スミス、値引きをするのですか?」

アリスが単価の所を見てスミスに聞いて来る。

「だって・・今よりも安くないと大量に買ってはくれないのではないですか?」

「ん~・・・」

アリスが腕を組んで目線を横にずらして考える。

コノハとマリはその様子を見守る。

ジーナとヴィクターは皆のお茶等を変え回っている。

パナとパラスはボーっと外を眺めている。


と、扉がノックされローナが許可を出すと武雄と執事達がお盆を持って入って来る。

「皆様、戻りました。」

「あ、タケオさん、お疲れ様~。」

レイラが手をひらひらさせて出迎える。

「タケオ、出来たのですか?」

コノハが武雄に聞いて来る。

「ええ、とりあえずですね。

 コノハ、試飲してください。」

「は~い。

 アリス、スミス、休憩ですよ。」

「わかりました。」

「・・・そうですね。

 一旦考えを止めましょう。」

アリスとスミスもコノハ達と一緒に席に戻る。

と武雄と一緒に来た執事達によって皆の前に麦茶を白い器で3種類置く。

「?・・・タケオさん、3種類あるの?」

アルマが不思議そうに聞いて来る。

「いえ・・・たまたま3種類を作る事になったのですけどね。

 一番右が現在王城内に有ったライ麦、真ん中と左が今回ヴィクターが買った店で扱っている2品種。

 どれも同じ時間焙煎をしているので、作り手側からするとほぼ同じ条件で作りました。

 私や料理人達、マイヤーさんも試飲したのですが・・・まぁ飲んでみてください。」

武雄が説明を止めて皆に試飲を促す。

「・・・色が茶色?・・・いや黄色に近いですかね?」

リネットが麦茶を見ながら言う。

「・・・タケオさん、3つ同じ条件で作ったのに色が若干違います。」

アンが3つを見比べて聞いて来る。

「はい、そうなんです。

 品種の違いなのか、火加減が微妙に違ったのかもしれないですけど・・・そこは何とも。」

「ふむ・・・じゃあ1つずつ頂きましょうか。」

「「はい!」」

皇子妃達が一斉に飲み始める。

・・

「?・・・??・・・」

皆が3つ飲み終えると2つ目や1つ目に再び口を付ける。

そして皆首を傾げる。

武雄はその様子を見ている。

「タケオ、大麦とは違いますが、十分に美味しいです。」

「久しぶりに麦茶を飲みましたがスッキリしていますね。

 この味も悪くないと思います。」

コノハとマリが武雄に感想を言う。

「やはり2人もそう思いますか。」

「これはライ麦なのでしょう?味が違ってもしかたないですよ。」

「某とコノハ、タケオが飲んでいたのは大麦由来の麦茶ですからね。

 多少違ってもそれは致し方ないでしょう。

 タケオもそう思ったから満足げな顔をしていないのでしょう?」

「はい・・・麦茶の癖自体はあるのですが・・・私が知っている物より口当たりというか・・・後味がスッキリとしていて、間違ったかと内心不安でした。

 厨房で試飲した皆さん評価は『新しい飲み物』という認識をしてくれましたので幾分気持ちは楽なのですが。」

「今はそれで良しとしてはいかがでしょうか?」

マリが言ってくる。

「そうですね。

 マリが言うように全てが再現できるわけではないですものね。」

武雄がため息をつく。

「タケオ、妥協も必要よ。

 それに今回は材料が違う。なら味も違って当然。

 そのなかで同じような物を作っていくことが重要でしょう。」

「それは・・・わかってはいるつもりなのですけどね。」

「タケオは完璧主義なの?」

「本人的には違うと思っていますね。

 ですが・・・所々差異があると気になりますね。」

「難しい物ね。」

コノハが言ってくる。

「はい。自重しようとは思っても出てしまう時は出てしまいますから。」

武雄がため息をつくのだった。


「はい!タケオさん!」

アンが手を上げて聞いて来る。

「どうしましたか?アン殿下。」

「あ・・・味が一緒です。」

アンの言葉に皆が頷く。

「ええ、ほぼ一緒ですね。それがどうしましたか?」

「色が濃いのも薄いのも同じなんです!なぜですか!?」

「えーっと・・・何か問題があるのでしょうか?」

「ありません!でも不思議です。」

「・・・濃い色なら濃い味で薄い色なら味が薄いと思ったという事でしょうか?」

「はい!」

「まぁ、もう少し煮だす時間が多ければ色も味も濃くなるかもしれませんが。

 今回はほぼ同じ条件で作ったので色以外は同じになったのだろうとは思います。」

「なるほど。」

アンが頷く。

「で、どうでしたか?」

武雄が皆に目をやる。

「1つ目が良かったです。」

アンが即答し、武雄は苦笑するしかないのだった。

「想像していたより飲みやすかったですね。

 これなら毎日飲めそうです。」

リネットが答えると皆も頷く。

「ならとりあえずは平気でしょうか。

 あとは各家で各々の味を作れば良いと思います。」

「はい、ありがとうございますタケオさん。」

「・・・レシピは・・・」

武雄が懐から紙を出すとその場の王妃達が緊張感に包まれる。

「回すので保健に追記しておけば良いでしょうかね?」

「丁度、飲み物の注意事項があるからそこに追記して貰いましょう。」

アリスが武雄からレシピを貰い自分の保健のノートに追記する。

その様子を皇子妃達はホッとしながら見るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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