第827話 麦茶製作中と会議中。
「良いんじゃない?」
ジェシーがジーナの説明を聞いて頷く。
「タケオさん、相変わらず唐突ね。」
「まぁ、タケオさんらしいわ。」
王家の面々はやっぱり呆れている。
「なるほど・・・エルヴィス家に取っては何も悪くはないですね。」
アリスが頷く。
「んー・・・いくらにするかかぁ・・・
とりあえずヴィクターさんの報告待ちかな?」
レイラが机に肘をついて顔を手に乗せながら言ってくる。
「そうね・・・
それにライ麦はある意味流通量が少ないからね。
テンプル伯爵領も作っていないし。」
「セリーナ、確かうちの隣で作っていなかったっけ?」
「作っていたとは思うけど・・・少量だったはずね。
それに食べないし記憶に残っていないわ。
もちろんクリフ殿下領では作っていないわね。」
「ニール殿下領も作っていないですね。
確か近隣も作っていないかと。」
ローナとセリーナ、エイミーが自領内の事を考える。
「・・・えーっと・・・アリスお姉様、もしかしてライ麦って国内での生産量が少ないのですか?」
スミスがキョトンとしながらアリスに聞いて来る。
「ええ、各殿下方の言い方ならそうだけど・・・その辺の資料は欲しいですね。
国内の各貴族領での穀物の生産量は見ないといけないし・・・
ヴィクターが聞きに行っている売値の確認をして、うちの生産量は王城内の資料を見てみないと判断が付かないけど・・・
タケオ様が言った通り、年360kg程度なら何とでもなるか。」
「ん~・・・エルヴィス家ともう1つか2つぐらいしか作っていないとなると価格が上がるかもしれないわね。
うちも領内に戻ったらライ麦の確保に動かないといけないかも。」
ローナが言う。
「うちは・・・お母様、どうします?」
「んー・・・んー・・・
セリーナお姉様達の所から買うしかないかな?」
「そうですね・・・新たに作付けするのも違いますよね。」
エイミーは「大豆と小豆があるしなぁ」と考える。
各々が考えを巡らせるのだった。
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ここは厨房。
ライ麦を用意して貰い軽く洗い武雄が魔法で乾燥させて今焙煎中。
「ほぉ、茶色が濃くなってきましたね。
これが焙煎という事なのですね。」
「ええ。ですが、もう少し濃くしたいですね。」
「それでは焦げているというのではないですか?」
「んー・・・否定はし辛いですね。」
料理長と武雄がライ麦を煎りながら話し合っている。
「失礼します。主、戻りました。」
「失礼します。」
ヴィクターとマイヤーが厨房に戻って来る。
「はい、おかえりなさい。
マイヤーさんもすみませんね。」
「いえ、ヴィクター殿に言われて驚きはしましたが、変な依頼だったので皆面白そうに聞き回っていたようです。」
マイヤーが苦笑しながら言ってくる。
「ふむ。
で、どうでしたか?」
「はい。こちらがマイヤー様に清書頂いたこの城周辺の穀物価格になります。」
ヴィクターが武雄に紙を出してくる。
「・・・料理長、焙煎は任せます。」
「はい、お任せを。」
料理長が武雄と場所を変わり木べらでゆっくりと煎る。
武雄はメガネをかけヴィクターの資料を見る。
「小麦も調べたのですか。」
「ライ麦だけ調べるのは商店主から変な目で見られたので。」
「そうですか、苦労をかけましたね。
それで・・・王都で販売されているライ麦の産地が2つ。エルヴィス領のはないのですか?」
「はい。
私も聞き返してしまいましたが、どうも王城周辺の北方の地で少量作られている物を仕入れているようです。」
「なるほどね。
元々売れないのにわざわざ遠くからは購入しないと。」
「そうなります。
それと1㎏ずつ購入してきました。」
「ヴィクター、流石ですね。
あとで別々に麦茶を作ってみましょうか。」
武雄が嬉しそうに頷く。
「はい。」
ヴィクターが頷く。
「その情報と私が経済局から持って来た情報をスミス坊ちゃんの下に持って行ってください。」
「はい、畏まりました。」
ヴィクターは皆に礼をして厨房から退出していった。
「キタミザト殿、そろそろでしょうか?」
料理長が聞いて来る。
「うん、もうすぐですね。
ではお湯の準備は・・・出来ていますね。
料理長、焙煎を止めて別容器に入れて熱を取りますか。
あとは麦茶作りの最後、煮だしですね。
マイヤーさんも試飲して行ってください。」
「そのつもりです。」
武雄達が楽しそうに作業をするのだった。
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ここは王城内の広間にて王家と貴族会議議員、文官幹部による会議を開催中。
妃懐妊と精霊の事をアズパール王が皆に説明を終え。
「陛下!殿下方!どうしてそういう重大な事を事後で説明しますかね!?
ゴホッゴホッ・・グッ・・・わかっておいでですか!・・・はぁはぁ・・・」
クラーク議長が怒鳴っていた。
他の貴族会議の文官達も一様に喜んで良いのか怒って良いのか困惑中。
結果、クラーク議長の剣幕に皆が苦笑をしてるような・・・こんな状態です。
「だって・・・こうなるのが想定できたから・・・」
ボソッとアズパール王が呟く。
「妃方の懐妊も精霊付きも大いに結構!
先の貴族達の多くを入れ替えたりの不穏な空気を一変させる為の殿下方の挙式!そして!懐妊劇!
ええ!ええ!キタミザト殿が関与しているとか部下の執事にも精霊が付いたのは些細な問題です!」
アズパール王や3皇子は「いや、そこ、些細な問題じゃないから」と思うが口にも表情にも出さない。
「はぁ・・・クラーク、何を問題視しているんだ?」
「何で子の名前が決まっているのですか!?」
3皇子は「え?そこ?」と思う。
「そこか・・・だが、レイラの子の名前を決めないと精霊と契約が出来なくてな。」
「ええ!ヒナ殿下に関してはそうです。
緊急性も十分わかりました。そしてすぐに決められたのはウィリアム殿下が前々からしっかりと考えていた準備の賜物です!
ですが・・・なん・・・何で皇子殿下の名前が決まっているのですか!?」
「皇子達一家が考えた末の」
「一生に一度、もしくは二度あるかないかの重要な事柄なのに・・・
パット殿下の時は向こうの領地での出産でしたので命名は我慢しました・・・今回は王都での性別の発覚!名を皆で決めたいではないですか・・・」
クラークがガックリとうな垂れる。
「・・・そう言われるとそうなんだが・・・」
アズパール王が言いよどむ。
「はぁ・・・まぁ議長の言い分もわからなくはないですけどね。」
オルコットもため息交じりに言う。
「うっ・・・オルコットもか。」
「ええ。王城内で子が生まれた際には貴族会議議員全員と王城の全武官、全文官で候補に上げられた中から投票をして選ぶというのが慣例でした。
今この場に居る文官や貴族方の大半は知りませんけどね。
あれは王城が一致団結して王家を支えるという意思統一に繋がるのです。
それを蔑ろにされるのはいかがな物でしょうかね?」
オルコットが目を細めながら言ってくる。
「・・・すまん。だがなぁ・・・
子が出来、性別がわかったらすぐに名前を決めたいじゃないか?」
「そこはわかります。
・・・クラーク議長、なら確約を頂いた方が良いのではないですか?」
「確約ですか?」
「ええ。今王城に居る、アルマ殿下、レイラ殿下は懐妊され名が決まっている。
そして来年以降王城に住まわれるのはクリフ殿下です。」
「!・・・クラリッサ殿下ですな!?
クリフ殿下!」
「わかったわかった。
・・・次に王城内で生まれる子の名前はうちから候補を出すから皆に決めて貰う。
それでよろしいか?」
クリフが答える。
「ええ!そちらで結構です!」
クラークが嬉しそうな顔をさせる。
「あ~・・・じゃあ、引き続きその辺の話をしていこうか。
クリフから皆に動議がある。
検討をしてくれ。クリフ説明を。」
アズパール王が議事を進め始めるのだった。
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