第824話 第二研究所の会議。3(アリスの忘れてる事とソースの販売について。)
「所長、時間とは何ですか?」
ブルックがアリスを見かねて聞いて来る。
「・・・ウィリプ連合国への視察ですけどね。
昨日確認しましたが、下手したらエルヴィス邸に帰還するのは1か月近く後になる可能性があります。」
「はい。」
「今は1月22日ですか。
確かエルヴィス伯爵家では私とアリスお嬢様の挙式を3月にする意向です。
あと2か月もしかしたら1か月半・・・こっちの準備が何も出来ないし、すぐに決めないといけない事もあるはずです。
ならアリスお嬢様は先行して戻って頂いてその辺の段取りを全てして貰います。
さらにジーナはスミス坊ちゃんの警護の訓練がありますからアリスお嬢様と一緒に帰って貰います。
ジーナが訓練を行っている間に研究所の打ち合わせや金銭等々についてはヴィクターが管理と判断をする必要があるでしょう。」
「う・・・」
アリスは「すっかり忘れてた」とうな垂れて顔に手を当てる。
「なのでアリスお嬢様とヴィクターとジーナは帰還させます。
アリスお嬢様、わかりましたか?」
「・・・確かに何も決めていませんね・・・
わかりました、屋敷に帰ります。」
アリスはガックリとする。
「ついでに言えば、アルマ殿下とレイラ殿下が懐妊され、ジェシーさん、ゴドウィン伯爵家も吉事ですけど。
3月の挙式の際は姉2人は来れません。
その辺の擦り合わせを王都に3人が居る内にしておいてください。」
「はい・・・わかりました。」
アリスが渋々頷く。
「・・・内輪の話は以上です。
他に異存はありませんか?」
武雄が他の面々を見ると皆が何も言わない。
「さて、話を元に戻しましょうか。
ウィリプ連合国への視察は馬で行き、帰りは幌馬車でと思っています。」
「はい、わかりました。
出立はいつにしましょうか。」
アンダーセンが聞いて来る。
「そうですね・・・3日後にしましょう。
食事についてもまぁ男達だけですから買って食べるか簡単な物を食べて行きましょうか。
初日ぐらいは私が作りますけどね。
食べれない物がある者は事前に言う事。
パナはミアと同じ大きさで行きますからね?」
「わかりました。」
パナが頷く。
「私が出立して以降のヴィクターとジーナへの指示はアリスお嬢様に任せます。」
「「「はい。」」」
アリスとヴィクターとジーナが頷く。
「さて、他に何を話しますか?
あ、アンダーセンさん、試験方法等の試作は終わっていますか?
それと・・・アーキンさん達から新人の歓迎会の素案を上げられているはずですけど?」
「「う!」」
アーキンとブルックが驚く。
武雄達はその後も話合いを続けるのだった。
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こっちは久々のエルヴィス邸の街。
「順調にやっているみたいですね、ほほほ。」
「結構人が来ていますね、良い事です。」
ローとラルフがベッドフォードの店に遊びに来ていた。
2人は奥に通されてお茶を飲みながら店内を伺っている。
「あぁ!毎日仕込みと樽に入れるのに苦労しているさ!
もう毎日人が来てくれて嬉しい限りだな!」
ベッドフォードが疲れ顔をさせながら言ってくる。
「ふむ・・・あれは娘さんですか?」
ラルフが店で対応している女性を見ながら言う。
「あぁ、流石に俺ら2人だけだとな・・・
息子の嫁さんに手伝いをお願いしているんだが・・・従業員増やすべきか悩みどころなんだ。
長男の方は向こうの店を畳んでこっちに住んでくれるとも言ってくれている。」
「良い事ではないですか。
何が問題なのですか?」
「ん~・・・折角向こうの街区で店を持っているのにそこを引き払うのは勿体なくないか?」
ベッドフォードが腕を組んで言ってくる。
「ですが、このウスターソースの後継も今から仕立ないといけないでしょう。
いきなり渡されても出来る物ではないですし。
ならここはその資金を使って少し大きくしても良いかもしれませんね?」
ローが言ってくる。
「そうか・・・販売量を多くするというのもありなのか・・・」
「『あり』というか『しないといけない』と言いたいんですけどね。ほほほ。
今はこの街だけで卸しているのをエルヴィス伯爵領全土と残りの3伯爵領分・・・
数年後には街区1個全部買わないといけないかもしれないのですよ?」
「・・・嘘だろ・・・」
「ははは、やっと自覚しましたか。」
ラルフは楽しそうに笑う。
「う・・・何を楽しそうに。」
「私もローさんも同じなんですよ。
店同士を統合し、領内全土への足掛かりを今急速に作っています。
もちろん確実に売れる物を用意してね。」
「全てキタミザト様の考える通りなんだよな?」
「ええ、考える通りですよ。
これでベッドフォードさんの所も上手く行けば、領内4店目の王国全土への巨大商店が誕生です。」
「4店目?」
ベッドフォードが聞いて来る。
「ハワース商会がキタミザト様の依頼で動いています。
あそこは玩具と文具だったでしょうか。
モニカや旦那さんが忙しそうにしていますよ。」
「忙しそうとは・・・注文が殺到しているのか?」
「ええ。王都から相当数の注文と見積り依頼が来ていてどういう順番で卸すか、製作納期の見極め。
職人の育成に頭を悩ませています。
ほら、そろそろ家具も売れる頃でしょう?そことの兼ね合いが大変そうです。
ふふん、最初は売れないとでも思っていたのか、想定が低かったのか・・・
あのキタミザト様が本気で売ると言った場合こういった弊害があるのですよ。
で、その弊害がここに来ました。」
ラルフが説明する。
「そうか・・・次はうちが決断しないといけないのか。」
「ええ。ですが、とりあえずエルヴィス伯爵領内を賄える量を生産する体制が必要でしょう。
今は街だけですけど・・・足りているのですか?」
「実は足りていない。
酒場等からの依頼が殺到している。
皆毎日ではないが、週に1樽もしくは2樽の注文なんだ・・・だが結構重なっていてな。
その仕込みと搬送が大変だ。
それに夕方になると主婦達が買いに来てくれてな。
野菜と一緒に買って行ってくれるんだ。
その対応で毎日売り切れ状態だ・・・」
「これは早めに総監部の方に相談した方が良いかもしれませんね。」
「あぁ・・・そうだな、明日にでも相談に行く。
それとこの調子が進むなら従業員も増やしたいんだが・・・どうすれば良いんだ?
雇った事がなくて仕方がわからないんだ。」
「ふむ・・・ローさん。」
「そうですね、そこも私達で面倒を見ないと大変そうですね。」
「お、相談に乗ってくれるのか?」
「ええ、キタミザト様に言われているんです。
その辺もしっかりと意見を言いますが、最終的に判断するのはベッドフォードさんですからね。」
「ああ!わかった!
よろしく頼む。」
ベッドフォードが嬉しそうに頭を下げるのだった。
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