第823話 第二研究所の会議。2(今後の事。)
「さてと。
どちらにしてもトレーシーさんの部下はパナと鈴音です。
上手く使ってください。
トレーシーさんには自身の研究とともに予算管理と各研究の工程管理をする事になるでしょうね。
研究については各結果報告書を確認して私に上げてくれれば良いです。」
「はい・・・わかりました。」
「あとは・・・トレーシーさんが受け持つのは盾の開発です。
向こうに来た際にお教えしますが、私の頭の中には大よそ出来ていますからそれを参考にしてください。
パナはスライム、鈴音は駆動部の開発をしていきますね。
トレーシーさんの予定の方は1年以内に試作をして、2年以内に市販出来るだけの性能を確定させる。
3年以降に市販が出来るようにしてください。
わかりましたか?」
「はい・・・わかりました。」
トレーシーがゆっくりと頷く。
「さて、他に聞きたい事はありますか?」
「所長、スライムの有効性の為の研究とエルヴィス家での体液の集中管理はわかるのですが。
さっきの説明では王都には話していないのですね?」
小隊の隊員が聞いて来る。
「ええ。
スライム研究を大々的に言った場合、他の所でも研究が進むかもしれませんが下手したら乱獲される恐れがあります。
今言わないのは、普通集められないはずのスライムの体液をどうやって集めているのか問われるとエルダームーンスライムを差し出さないといけない可能性があるからですね。
折角、エルダームーンスライムと良好な関係が築け始めたのに壊す気はありません。
パナの研究で何かしら面白い物が出来て来るでしょうが、その結果と一緒に報告すれば良いと考えています。
エルヴィス伯爵は森を管理してくれているスライム達を対等に接し共存を望んでいますが、こちらも交渉や報酬等の経緯を後々は報告する事になるかもしれませんね。
今は研究も関係も手探りです。報告まではもう少し時間がかかるでしょうね。
まずはお互いが知る事から始めないといけないでしょう。人間関係と一緒です。」
「わかりました。
私達も対等で接すれば良いのですね?」
「ええ、恐怖する事も見下す事もありません。対等でお願いします。
現状エルダームーンスライムは4体確認しています。
その全てが会話が出来ますから、向こうの街中で会った際に話をしても良いかもしれませんね。
試験小隊の訓練場の隅にスライム用の小屋がありますから頻繁に会うかもしれませんし。」
「はい。」
小隊の隊員が頷く。
「マイヤーさん、昨日はどうなりましたか?」
「・・・所長、あれ結構言ってはいけない事だったのではないですか?」
マイヤーが呆れながら聞いて来る。
「特に私は口止めはされていませんよ。
先ほども説明したコノハの『妊娠を確実にする能力』と『男女の判定』を王家とエルヴィス家と私以外の他の貴族には使わないという事だけ依頼されています。
それに小隊のメンバーで外に口外する人はいないでしょう。
今頃貴族会議でその辺の経緯が話されているでしょうし、明日にでも噂は流れる算段でしょう。
その辺はオルコット宰相も別段気にしていませんね。
もしかしたら今頃街中に通達する準備に追われていると思いますけどね。」
「はぁ・・・昨日、所長が戻られた後に総監局から第1騎士団に依頼が出されました。
皇子一家・・・皇子妃が領地まで着くまでの警護をするようにとの事です。
そして王都守備隊は現在4交代制に移行し、王城の妃が居る部屋の警護を実施しています。
はっきり言って皇子達より上の警護依頼がなされています。」
「それだけ男子を身籠った皇子妃が大切なのでしょうね。
マイヤーさん達は何か言われましたか?」
「ここにいる人員は辞令が正式に出ている為、警護の任務からは外れています。
ですが、皆が城の警備に駆り出されているので、この第八兵舎の警備をお願いされていますね。
たぶん今は皆が浮ついているのでそれが収まるまでと思っています。」
「そうですか。
ではこの件は適宜対応してください。
さてと、お使いの話をしましょうか。」
「「はい。」」
全員が姿勢を正す。
「マイヤーさんと今朝陛下から命令書と資金を受領してきました。
内容は『王都守備隊に所属させる2、3名の異種族の確保の為のウィリプ連合国への視察』です。
アンダーセンさん、総長は何か言っていましたか?」
「いえ・・・特に私達は何も言われていません。
所長に同行する事になるとしか言われていません。」
「そうですか。
なら、私の考えを言います。」
「「はい。」」
「ウィリプ連合国 ドローレス国にある奴隷市場に視察を行い、そこで人間と同様な外見を持つ奴隷を最低2名購入します。
どのような条件かはあとでマイヤーさんに渡しますので同行する者は目を通す事。
また先に説明した通り、私の個人的な方でエルフを2名もしくは農業が出来る者を数名確保します。
私の随伴はマイヤーさん、アンダーセンさん、試験小隊の4名です。
アーキンさん、ブルックさん、アニータとミルコはアリスお嬢様と一緒にエルヴィス邸がある街に帰還する事。
ヴィクターとジーナもアリスお嬢様とスミス坊ちゃんと一緒に帰還させます。
トレーシーさんとケードさん、コーエンさんは引き続き学院ですね。」
「な!?」
アリスが驚く。
「アリスお嬢様、何か?」
「な・・・なんで私が帰還ですか!?
一緒に行きます!」
「今回はダメです。」
「・・・なぜでしょうか?」
アリスが真顔で返してくる。
「う・・・タケオ様は女性の奴隷を買った際はどうするのですか?
対応する者が必要です。」
アリスは「一緒に居たい」とは言えずに違う方向で説明をしだす。
「必要ありませんね。
向こうにはバートさんとフォレットさんが潜入済みです。
さらに一緒にパナも行きます。2人居れば何とかなるでしょう。
なら追加で女性が行く必要はありません。」
「うぅ・・・ですが!?」
「はぁ・・・別に一緒に行きたいと言えば良い物をわざわざ遠回しに言って・・・」
武雄がため息をつく。
「・・・一緒に行きたいです・・・」
「ダメです。」
「ふぇ!?」
アリスが更に驚く。
「むぅ・・・ふぇ・・・タケオ様は私と一緒に居たくないのですか?」
若干アリスが涙目になりながら聞いて来る。
「一緒には居たいですけど、時間がないんですよ。」
「はい?時間?」
アリスがキョトンとしながら聞き返してくるのだった。
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