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第817話 武雄総監局に連行。(産み分けが問題なのか?)

ここは王城内のオルコットの執務室。

武雄は厨房での打ち合わせの後、アリス達に戻ったことを知らせるために部屋に行こうとした際に玄関を通ったのだが、そこで総監局の文官に捕まってここに通されていた。

「キタミザト殿・・・厨房から帰ってこないで頂けますでしょうか?」

オルコットから「そういう想定はしていません」と苦言を言われる。

「いや・・・はい、すみません。」

武雄は頭を下げる。

「はぁ・・・では、出入りに付いては今後注意してください。」

「はい。で・・・その・・・どうしてここに?」

「はい。陛下から聞きました。」

「どの件でしょうか?」

「全部です。

 本日までに王家に精霊と男子を授けて頂きました。

 これは王家だけでなく国に対して最大の業績を上げてくれましたので、その恩賞を出そうと思っています。」

「・・・ん~・・・」

武雄が腕を組みながら悩む。

「恩賞では足りませんか?

 相応の金額にしますけど。」

「いえ、ありがたく頂戴はしたいのですが・・・

 陛下や殿下方には申し上げましたが、確かに知識を教えたのは私です。

 ですが、実践し子供を作ろうと努力したのは皆さまですので私個人に恩賞が出るのは正しい事なのでしょうか?」

「キタミザト殿を基点として教授された今回の知識は国の将来に対する貢献度という意味では計り知れないでしょう。

 ですので相応の金額を出させて頂きます。

 で・・・ですが、恩賞と共にお願いしたい事があります。」

「はい、なんでしょうか。」

「私達総監局の意向としては、今後は王家とキタミザト殿に近しい貴族であるエルヴィス家の関係者以外には祝福について言わないとして頂きたいのです。」

「・・・使い方によっては男女の産み分けに繋がるからですか?」

武雄が聞き返す。

「はい。流産で流れてしまうというのは体調や運で変わりはするでしょうが・・・

 当主の意見で流すのは良い事とは思えません。」

「・・・オルコット宰相が危惧しているのは貴族による産み分け(・・・・・・・・・)なのですか?」

「そうですね。

 国民達が産み分けをしているとは・・・いや、しているのかもしれませんが、私が危惧しているのは貴族だけになります。

 ですので、最低でも絶対に子の性別を口外してはならないという確約をして欲しいのです。」

「・・・わかりました。王家とエルヴィス家、そしてゴドウィン家とキタミザト家(私の一家)以外の貴族に対してはコノハの祝福はお願いしないとしますし、子の性別は発覚しても他言しないと約束をします。

 こちらでよろしいでしょうか。」

「そちらで構いません。

 他領の貴族にコノハ殿の事が露見すれば、最悪は王家廃絶に繋がる可能性すらあります。」

「それは・・・縁故による貴族の結びつきとその拡大による王家の廃絶・・・ですか?

 オルコット宰相、それは流石に考えが深すぎです。

 それにそんなことを言えば第3皇子一家とゴドウィン伯爵家はエルヴィス伯爵家の娘が入っています。

 さらにウィリアム殿下の長男はテンプル伯爵家の血が入っています。

 そしてゴドウィン伯爵家の長男はエルヴィス家の血が入ります。

 十分に縁戚関係ですけど?」

「それは王家を中心とした(・・・・・・・・)地域支配と発展(・・・・・・・)という観点から問題はありません。

 私達総監局の懸念は王家不在の地域支配(・・・・・・・・・)です。

 枠組み内に王家が・・・皇子一家が居るのであれば問題はないと考えています。」

オルコットが手を組んで真摯に言ってくる。

「・・・セリーナ殿下の懐妊・・・良い時期だったのかもしれませんね。」

武雄も口元に手を置き考えながら言う。

「ええ・・・これでクラリッサ殿下に男子が出来ればなおのこと嬉しい限りですね。

 キタミザト殿、セリーナ殿下とクラリッサ殿下の男子、どちらを現在のクリフ殿下領の跡取りにすれば良いと思いますか?」

「え?それは決ま・・・いや、オルコット宰相、お止めください。

 私は王国の西側の将来まで意見する立場にはありません。

 その時期の周囲の状況、その時の王家と文官達が決めれば良いのです。」

「キタミザト殿、将来総監局の局長の席を用意しましょうか?」

「いえいえ、折角研究所を拝命したのに投げ出すわけにはいきません。

 それに優秀な人達が集まる王城に勤める気はありませんよ。

 私は凡人、この国において蓄積された知識と所員達の発想力を頼りに仕事をするしかありません。」

「私からすれば貴方様程優秀な者はいないと思いますが?」

「それは違いますよ。

 今私が優秀に見えるのは皆と違う方向を向いていて意見しているだけです。

 誰かが私が見ている方を見て意見を始めれば、私の意見など戯れ言程度でしかありません。」

オルコットが「王城に来い」と言えば、武雄が「面倒だから行かない」と返している。

「ふむ・・・心変わりをされたらいつでも言ってください。

 いつでも相応の席は用意させて貰います。」

オルコットがニッコリと笑う。

「ははは・・・用意される席が下がらないように成果は出してきますよ。

 うちの所員は王城内の人員と同等に優秀です。

 さて、どんな理解不能な物が出来上がるのか楽しみですね。」

「キタミザト殿、変な物は作ってはいけませんよ?」

「わかっています。

 私達研究所は負けない為の研究が目的ではありますが、大量虐殺を呼んだり、何かを生贄にしないといけないような物騒な物は作りません。

 そんなことは誰も望んでいないでしょう。

 攻めないが守り切る為の研究・・・改めて考えると難しいですね。」

「そうですか?」

「ええ・・・相手を殲滅する為だけの兵器の方が研究としては楽でしょう。

 ですが、陛下も私達研究所所長もそれは望まない。

 陛下が望まれるのは今の国民と国土を守り切る力。」

「そうですね。」

オルコットが頷く。

「ですが、5年後には侵攻をする。

 大きな矛盾ですが・・・国としてカトランダ帝国に後れを取らないというのは未来の国民への担保。

 国は輝かしい未来を国民に約束するのが理念ですかね?」

「あらゆる災難から国民を守ることが国家の勤め、将来不利な条件で戦争を挑まれる可能性があるなら今の内にその芽を潰し、自国を有利なままで次代に渡すのもまた国家の勤めですね。」

「次代の王の周辺が戦争好きでなければ良いのですが。」

「まったくですね。

 周辺人事もこれからなんとかしないといけませんね。

 キタミザト殿、良い人材が居たらこっちに紹介してください。」

「私に見る目があるのかを問われますか・・・

 それにそれこそ現状の局長達がする事だと思いますけど?」

「ふふ、痛い所を突きます。

 完璧な人員を揃えられないのはどこも一緒ですかね。」

「まぁ、欲を言えば限りないでしょうからね。

 どこで妥協をするのかは各局長・・・まぁ私もですが、判断が試されますね。

 幸いうちの部下は目が良いみたいです。

 当分は問題ないでしょうね。」

「羨ましい事で。

 さて、恩賞については今日中にキタミザト家のプレートに入れておきます。」

「・・・すみません。

 出来れば私個人の方に入れて欲しいのですけど。」

「わかりました。

 あの時の振込先ですね。」

「はい。」

「わかりました、入れておきます。」

「ではよろしくお願いします。」

武雄が礼をして退出して行く。

・・

と、武雄が出て行った方とは違う所の・・・一見本棚にしか見えない扉が開きアズパール王が入って来る。

「陛下、以上です。」

オルコットが立ち上がってアズパール王を出迎える。

「なんていう会話をするかな・・・

 まぁタケオらしい返答だったがな。」

「キタミザト殿は相変わらず優秀ですね。」

「王都に入れると軋轢になりそうなくらいにな。」

「まったくですね。」

「それでも席を用意するか?」

「キタミザト殿が望めば軍務局長、総務局長、総監局長、外交局長のどれかを用意しますよ。」

「中枢だな。だが相応しいかもしれんな。

 それにしても相変わらず金額を聞かなかったな。」

「ええ、本当に優秀な方です。」

「いくら渡す気だ?」

「それは・・・局の幹部と話をします。」

「そうか。」

アズパール王とオルコットがため息を付くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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