第815話 シモーナにエルヴィス伯爵からの発注と合同新兵訓練終了。
ここは魔王国 ファロン子爵邸がある街の商店「銀の月」の応接室。
シモーナと旦那がお茶をしながらエルヴィス爺さんからの手紙を見ていた。
「ふむふむ・・・
ウォルトウィスキーは月21本の年252本を米は500㎏を10年間か。
上々だな。」
「ええ、これで向こうともやり取りが出来るさね。
えーっと・・・直接レバントおばさんの所に発注すれば良いかな?
あとはおばさん経由でダニエラさんとタローマティさんにもお礼の手紙を書かないといけないし。
カールラさんにもお礼の手紙を書かないといけないさね。」
「陛下の侍女とブリアーニ王国女王の侍女・・・豪勢な物だな。」
「まったくね・・・
この関係を維持する為には年1、2回の文通ぐらいはした方が良いのかしら?」
「そうだな、折角知り合ったのだ。無下にする事もないな。
それこそエルヴィス伯爵ともだがな。」
「はぁ・・・普通こういった幹部の話はブルーノがするんじゃないのかい?」
「はは。そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるんじゃないか?
今回はお前が動いたからたまたま侍女と知り合えたのだ。
運のめぐり合わせだろうな。
それに伯爵とは昔からしていただろう?」
「あぁ、気風の良い客だったからね。それに世間話が知りたいなんて変な客もいたもんだと思っていたらこんな事になったさね。
もう随分前の事さね・・・お互いに何てことない天気や農産物の話を書いて送るだけなのに気心が知れているような感覚になるね。」
「そういう物だろう。
と、手紙に子爵達は王都に遊びに行っているとあるな。
その流れでウィリプ連合国に出張か・・・ウィリプ連合国・・・か。」
「・・・最近、騎士団長と6名が居なくなったそうさね。」
シモーナがつまらなそうに言う。
「あぁ・・・さっき道端で聞いた。領内を巡回しに行った際だそうだな。」
「随分と不穏な事をしてくれるさね。」
「戸締りと皆の帰宅を早めるか。」
「そうさね・・・用心に越したことはないという所だね。」
「じゃあそうしよう。」
旦那が頷くとシモーナも頷くのだった。
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こっちはゴドウィン伯爵領にて
3伯爵領の新兵達が整然と並んでいる。
今はゴドウィン伯爵が皆の前に用意された壇上に上がり訓示がされていた。
「今回の訓練で全体の動きの難しさを痛感しただろう。
この経験はなかなか得られん。この経験が諸君らの礎となる事を期待する物である。
だが、これが終わりではない!我々が次に会う時は戦場だ!各位精進せよ!
以上を持って合同新兵訓練を終了する。」
「「「ゴドウィン伯爵に対し敬礼!!」」」
全員がその場で敬礼をする。
ゴドウィン伯爵が壇上を降りる。
するとゴドウィン伯爵領の武官が説明を始める。
「では、以上を持って訓練項目を終了とする。
本日はこの後細やかだが立食がある。
各自満喫してくれ。
くれぐれも・・・くれぐれも!節度は守るように!」
過去に何かあったのだろうか・・・強い念押しをする。
「あ~・・・2年前でしたか?報告は見ましたが・・・」
「あぁ、あの時は大変だったなぁ。」
第15小隊長が後ろから話しかけ、兵士長がコソッと話していた。
「私も報告書のみなのですが・・・本当は何があったので?
当時は私もまだ兵士長ではなくてでして。」
テンプル伯爵領の兵士長がコソッと聞いて来る。
「ん?・・・どんな報告が行ったのですか?」
「街中での乱闘としか・・・」
「まぁ・・・正解ではありますが・・・
実際は立食会の後に新兵が向かった歓楽街の店で女性が付いた付かないの話が最初だったのです。
これが面倒だったのですよ・・・ははは。」
「・・・どこの軍とどこの軍が乱闘をしたのですか?」
「違いますよ。
伯爵領軍達同士の戦いではなく・・・歓楽街の主人達と3伯爵領新兵の合同で確か数十人ですね。
その中に魔法師専門学院出身が一堂に会していたらしいので・・・そこそこ出来てしまったのですよね。」
「・・・結果はどうなのですか?」
「向こうの主人の屋敷を強襲。それに感づいた捜査系の兵士達が追加突入し、双方取り押さえ。
向こうの主人に詫びを入れさせましたし、うちからも詫びを入れました。
特にこれと言って何か人的被害があったわけではないのですけどね。
まぁ各兵士長はゴドウィン伯爵様に詫びを入れましたが、ゴドウィン伯爵様は『良くやった』と褒めてくれましたよ。
顔は引きつっていましたけど。」
「まぁ・・・そうでしょうね。」
テンプル伯爵領の兵士長が苦笑する。
「なので昨年は結構厳重に見ていたのですが、何もなかったですね。
さて・・・今年はどうなることやら。」
デビットがため息を漏らす。
「と、兵士長、話は終わりのようですね。
まぁ、今年は大人しいのが多いので平気でしょう。」
第15小隊長が言ってくる。
「・・・お前達が暴れないかも心配なんだがな。
同期と飲むのだろう?」
「・・・知っていましたか。
向こうの魔法師小隊達とです。
節度は守りますよ。」
「そうか・・・深酒はよしておけ。
万が一は動いて貰うからな。」
「了解しました。」
第15小隊長が頷くのだった。
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