第804話 アルマの悲壮感と激震。
アルマを先頭に武雄達はウィリアム達の執務室に向かっていた。
「あ・・・」
王城の裏庭が見える所でアルマが足を止める。
アルマの後ろを歩いている武雄とジーナも立ち止まる。
「・・・」
アルマの目線の先には小さな木があった。
「私達の結婚記念樹・・・大きくなったなぁ・・・」
アルマが何気に呟くと同時に片目から涙が流れた。
「「・・・」」
武雄とジーナは何も言わずにアルマを見ている。
「・・・タケオさん。
私ね、皇子の正室失格かもしれない。」
「「・・・」」
武雄とジーナは何も言わない。
「さっき・・・レイラのお腹に子供がいると言われてね。
ウィリアムの妻としても第3皇子一家としても喜ばしい事だし、レイラを祝福しないといけなかったのに。
・・・私が最初に感じたのは悔しさだった。
ウィリアムが悪い訳ではない、レイラが悪い訳ではない、ましてやレイラのお腹の子が悪い訳では絶対にない!
でも・・・1人目は・・・1人目は私が産みたかった・・・」
アルマがぽろぽろと泣いている。
「こんな人間が皇子の正室ではダメだと思うのよ。」
「「・・・」」
武雄とジーナは何も言わない。
「ウィリアムと結婚して8年。
レイラが来てもうすぐ4年か・・・いろいろあったわ。
ふふ、お義父さまとウィリアムが魔王国との慣例の戦争に観戦しに行った際の留守中に文官から『今度全貴族の息女を対象に試験をするから上位者から側室を選んでは?』と言われてやきもきしてたら、ウィリアムがレイラを側室に迎えて戻って来たり、その試験の上位者がアリスとクラリッサだったり。
子供は出来なかったけど・・・楽しかったなぁ。」
アルマが遠い目をさせながら呟く。
「・・・アルマさん。」
「ん?なにタケオさん。」
「私は王家の事はわかりませんけど。
何を悲壮感を漂わせているのですか?
まだアルマさんは20代でしょう?」
武雄がぶっきらぼうに言ってくる。
「28になったわ。
でも8年間産まれないとね・・・役立たずと陰口を言われちゃうのよ。」
アルマが苦笑する。
「まだ28なら産めますよ。
それにこれからはレイラさんが産休なのですからウィリアム殿下の夜はアルマさんが独占するのでしょう?
初めての男子を産む確率は高いと思いますけどね。」
「ん?・・・あぁ!なるほど、そうとも言えるわね。
うんうん!そうね!そう考えようかしら!」
アルマがさっきまでの悲壮感が嘘のように楽しそうに笑う。
だがその乾いた笑顔は武雄からしたら痛々しく見えた。
「・・・それにコノハは母子のケアが出来ますが、私的には体調の調整も出来ると思っています。」
「ん?どういうこと?」
「女性の体を子の種が着床しやすい状態に持って行く事も可能だろうと思っています。」
「出来るのかしら・・・」
「アルマさん、後でコノハに相談してみてはどうですか?
まずは産みやすい日にちを導き出して、それに向かって何をすれば良いのか。
やる事をやってから悲壮感を漂わせてください。」
「わかったわ、とりあえずコノハ殿に後で相談します。
アリスも貸してくれる?」
「ええ、構いませんよ。
まぁ姉2人が妊娠したのでアリスお嬢様はそれどころではないと思いますけどね。」
「あ、そうね、そうかも。
ならコノハ殿だけでも借りて話をするわ。」
アルマがいつもの明るさを出してくる。
「それと正室の資質というのは一家を守る事が出来る性格と夫婦間で仲違いをしないよう努力する事だと思います。
そして側室に子が先に出来たから羨ましかったというのは正室の資質ではなく、ただ単に自分が見初めた男の子供が欲しいと思うのが本能でそれが他の女だったから羨ましかっただけだと思います。
正室や側室だからと子供の生まれ順を気にするようなアズパール王家ではないでしょう?
少なくとも私がいろいろ話している中で陛下も皇子達もそういった考えはないと思います。」
「うん、そうね・・・私は馬鹿ね。
子供の有無で正室を決める物ではないのは知っていたのにね。」
アルマが苦笑するのだった。
「・・・タケオ、話の最中にすみません。」
パナが人間大になって武雄の横に現れ話しかける。
「ん?この女性は?」
アルマが聞いて来る。
「私の精霊で名はパナケイア、通称パナです。医者で今度第二研究所に入れ研究をさせます。」
「ふ~ん、精霊が研究かぁ。凄い物が出来そうね。
で、そのパナ殿がどうしたの?」
「ええ。
さっきから気になっていたのですが。
貴女、コノハから言われてないのですか?」
パナが不思議そうに聞いて来る。
「え?・・・何も言われてない・・かな?
レイラの子が精霊と契約したいから名前を決めてくれって事で急いで執務室に移動したんだけど・・・
何かあるの?」
「いえ、貴女も妊娠していますよ。」
「・・・・・・・・・はい?」
アルマが真顔で聞き返す。
「だから貴女も妊娠しています。
男の子ですよ。」
「ええええええ!??!?!?」
パナが衝撃的な告白をするのだった。
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