第791話 4人目(武雄に精霊。)
「んー・・・パラス、コノハ、摩利支天殿?・・・」
「「「ん~?」」」
チビッ子精霊が一斉に武雄を見る。
「いや、摩利支天殿は通称はないのですか?」
「某は・・・ないですね。」
「チュン?」
スーが首を傾げながら言ってくる。
「そうそう、マリちゃんで良いじゃない。
他の精霊達はそう呼んでるし。」
コノハがそう言ってくる。
「・・・コノハ、某はマリと呼ばれるのは女性っぽくて嫌なのですが。」
摩利支天が嫌そうな雰囲気を出す。
「・・・マリと皆が言っているならそれで良いのではないのですか?」
スミスが言ってくる。
「主!?」
摩利支天が驚く。
「仮でマリで良いのではないですか?
他に呼び方が見つかったらそれにしましょう。」
パラスも便乗してくる。
「ではマリで。
屋敷に着くまでに何か思いついたらそれにしましょう。」
「ぐっ・・・」
スミスの決定にマリは耐え忍ぶのだった。
と、本棚が光り始めるのだった。
光が止むと白衣を着た女が立っていた。
「・・・こちらへ。」
武雄が女性の元に行き面接用の椅子に案内する。
「こちらが私の概略書になります。」
女性が席横に立ち武雄に紙を渡す。
「はい、お預かりします。」
と武雄が席に戻る。
席に着いて武雄は概略書を見るのだが・・・
「・・・ん?・・・」
内容を見て悩むのだった。
・・
・
「パナケイア殿ですか。」
議事進行を務める王家専属魔法師が概要書を見て言う。
「はい。
私が求める場がありそうなので参りました。」
「したい事に『研究』とありますが。」
「私は研究の末、全てを癒す万能薬を作成できました。
ですが、研究とはあらゆる事象を追い求める行為。
私は回復薬という分野で1つの結果は出したのですが、他の題材もしたいのです。」
「ふむ・・・魔法は何か使われますか?」
「使える魔法はケアでしょうか。他は出来ませんね。」
「わかりました・・・これも問題ないと。」
王家専属魔法師が呟く。
「適応者はどなたでしょうか。」
「契約者は貴方です。」
バナケイアが武雄に顔を向ける。
「研究・・・何がしたいですか?」
「題材を与えてくれるならとことんさせて頂きます!
もちろん、考察や今後の出来うる事まで報告書にまとめさせて貰います。」
「そもそも神なのですから知っているのではないですか?」
「知っている事と実地では経験値が違います。
それに私達神は出来る物は知っていますが、研究を通しての失敗内容までは知らないです。
失敗の経験値は成功と同等かそれ以上の価値があります。
失敗を重ねる事で新たな発想にも繋がります。
また研究の種別による報告の違いについては父から教わった事なので」
パナケイアが熱弁してくる。
武雄は「あ、これ長いヤツだ」と瞬間的に諦めるのだった。
・・
・
10分が経過。
「ですので、私は貴方の下でいろいろな研究をしたいと考えています。
どうか採用をしてください。」
パナケイアが喋り倒していた。
「・・・それは良いのですが、結果がわかっている研究をして楽しいのですか?」
「楽しいですよ。
結果はわかっていますが、過程はわかっていませんから。
例えば何か原材料を作ろうとした時に私達は『材料は何を使うか』、『どう加工をするか』はわかりますが、実際は『どのくらいの時間』で『どういった工程を踏まえるのか』は知りません。
私はこの部分をしたいのです!
未知なる事に挑戦するのは楽しいのです!」
「・・・いや、私も技術系ですので、研究や検討は楽しいのはわかります。
ですが・・・素材研究となると何万、何十万通りの配合を試し、結果を記録していく・・・
とっても地道な作業なんですけど・・・大丈夫ですか?」
「ええ!ええ!それがしたいのです!
神格化してしまって結果がわかるとつまらなかったのです!
結果よりも工程が大事です。」
「・・・組織の長として工程より結果が大事ですと反論します。
まぁ良いでしょう。私が預かっている研究所の研究員の席が余っていますからそこに配置します。
それと・・・好き勝手されても困ります。
先の3名の契約内容はわかりますか?」
「それで構いません。
私はケアしか出来ませんので契約者に毎回確認をさせて貰います。
それ以外の意見も最大限飲む事も誓います。
研究をさせてくれるのであれば飲みますとも!」
「研究意欲があるのは構いませんが、大量破壊兵器を作る気はありません。
軍事的な大改革はしない。わかっていますか?
この世界を変革する気は基本的にはありません。」
「はい、それで構いません。
研究をさせてくれれば何でも言う事は聞きます。」
「・・・本当にわかっているのでしょうか・・・
まぁ良いです。研究の内容は後日教えます。」
「はい!」
武雄が半ば「どうやって扱おう」と悩むがパナケイアは望みが叶いそうなので満面の笑顔を向ける。
「では、最終契約をお願いします。」
王家専属魔法師が促す。
「私、タケオ・エルヴィス・キタミザトはパナケイアと契約を結びます。」
「タケオ殿。
私の事はパナと呼んでください。」
武雄とパナが握手をすると眩い光が再び部屋を覆うのだった。
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