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第789話 2人目(流派の考え方。)

「タケオ様、私は騎士団辺りには出来ると思うのですが。

 これはお爺さまと話さないといけないですね。」

アリスが武雄に聞いて来る。

「そうですね・・・ですが・・・

 摩利支天殿、腰の物を見せて頂いてもよろしいでしょうか。」

「どうぞ。」

摩利支天が刀を鞘ごと武雄に渡し、武雄が鞘から抜き黒刃の日本刀が露わにされる。

「「「ほぉ。」」」

その場の男性陣は一目見て何とも言い表せぬその刀の美しさに感嘆の声を上げる。

「・・・やはり日本刀ですか。

 摩利支天殿、ありがとうございます。」

武雄が鞘に納めて摩利支天に渡す。

「このような片刃剣はこの国で生産がされていません。

 基本は両刃剣となります。

 日本刀に近い物は・・・これになるかと思います。」

今度は武雄が小太刀を鞘ごと摩利支天に渡す。

「・・・これは小太刀。

 魔法を組み込むことで業物にまで昇華しているのですか。

 悪い刀ではないですね。」

摩利支天が品定めをして鞘に納め武雄に返す。

「・・・これを装備しているのは私と私の配下であるこのジーナのみです。

 摩利支天殿がしたい流派は両刃剣で出来ますでしょうか。」

「・・・ふむ・・・剣や戦い方の理念が違い過ぎるのかもしれません。

 という事は某は流派は起こせないというのでしょうか。」

「騎士団や兵士と言った現状の組織に対しては難しいと思います。

 ですので、例えば私の部下であるジーナにとりあえず教えて貰えませんでしょうか。

 『流派をその通りに教える』という考えも大切だとは思いますが、ある程度妥協し『この世界に合った戦い方を教える』と出来ないでしょうか。」

「なるほど、確かに流派とはその時代に合った物が創設されると考えればその通りでしょう。」

武雄の妥協案に摩利支天が頷く。

「それに各地方貴族で似たような剣技が採用されていると仮定するならいきなり一貴族の兵が違う考え方の戦い方をしてしまうと他国との戦争で足並みが揃わない可能性があります。」

「それも然り、他方が前進のみの戦い方であるのにこちらが一歩引くような戦い方は戦での乱れに繋がるでしょう。」

「ですので・・・そうですね。

 まずはキタミザト家(うち)の執事達から教えて貰えませんか?

 そこで成果が出れば第二研究所(うち)の試験小隊で採用し、結果が出るなら王都で精査して採用して貰える兵団を探すというのはどうでしょうか。」

「順序立てて浸透させるというのですね。」

「はい。それに従ってその小太刀も多少の普及が出来るかもしれません。

 いきなり普及を目指しても鍛冶屋が日本刀を作れませんから『徐々に広める』という形を取らないといけないと思います。」

「なるほど。

 武具の浸透はままならないのはわかります。

 では、御仁の配下に何を教えて欲しいのですか?」

「1対1戦闘での戦い方。えーっと・・・確か居合いというのが剣術の中にあるのですよね?

 警護者であるジーナは敵と数回打ち合うといった時間の余裕(・・・・・)はありません。

 居合いを使い一撃を持って致命傷を与えないといけません。」

「居合術はタイ捨流にもあります。『すべて袈裟斬りに終結する』という考えもあり、立ち合いにも使えるでしょう。

 それに剣術と言うと刀のみの話と勘違いされますが、剣術とは戦場での総合的な戦闘技術である「兵法」の一種なので投げたり蹴ったり色々するのです。」

「そうなのですか。

 ・・・立ち合いで蹴るのですか?」

「はい。蹴りも取り入れます。

 流派を簡単に言えば『どうやって相手の隙を作るか』『相手の意を外すか』という考え方を示しています。

 タイ捨流は少し足癖が悪いと言われるかもしれませんが、それはそれ。

 合戦で己の命がかかっているのです・・・死を前にして綺麗に刀を振るも何もないでしょう。」

「摩利支天殿がそれを言いますか。」

「さて・・・神々(私達)は色々と教えを説きはしますが、合戦の方法(・・・・・)に何か言ったりはしていません。」

「それはそうですね。

 わかりました。で、いかがでしょうか。」

「某としては剣術の教授はそれで構いません。

 そして契約者への武具の強化と身体強化、そして運は先に説明した通りになります。」

「あとはスミス坊ちゃんですね。」

「僕も構いません。

 それで契約としては先のコノハと同じで良いでしょうか。」

「はい。某が力を行使する際には貴方の判断を仰ぎます。

 某の一存で力を行使するのは御身を助ける時のみで構いません。

 また先のコノハの言う通り、貴方の家族からの命令にも善処するとお約束いたしましょう。」

「タケオ様、僕は問題ないです。」

「はい。では・・・仮契約をしましょうか。」

武雄が唐突に言ってくる。

「「仮契約?」」

スミスと摩利支天が同時に聞き返してくる。

「ええ、そうですよ。

 正式契約条件は『領主になる事が決まっている』と『成人に成りたての男性』でした。

 陛下、スミス坊ちゃんの最短での正式領主就任はいつですか?」

「学院卒業後だな。」

「では3年後の今時期・・・スミス坊ちゃんが15歳になって卒業までの間に本契約をしましょう。

 そうすれば全能力を制限なく契約する事が出来ます。

 それまでは仮契約にしておいて問題はないでしょう。」

「タケオ・・・考えたな。」

アズパール王が頷く。

「はい、ちゃんとした契約が出来る機会があるのです。

 ならその機会を逃す手はありません。」

「まぁ3年後にこの場ですれば良いだろう。

 クリフも良いな?」

「はい、構いません。」

アズパール王の言葉にクリフも頷く。

「陛下、クリフ殿下、ありがとうございます。」

武雄が感謝を示す。

「では、仮契約をお願いします。」

王家専属魔法師が促す。

「私、スミス・ヘンリー・エルヴィスは摩利支天と仮契約を結びます。」

「スミス殿。

 某の事は摩利支天と呼んでください。」

スミスと摩利支天が握手をすると眩い光が再び部屋を覆うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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