第787話 1人目(妊婦発見。)
光が止むと目鼻立ちも良く、和服を着た美しい・・・艶やかな女性が立っていた。
「・・・こちらへ。」
武雄が女性の元に行き面接用の椅子に案内する。
「こちらが私の概略書になります。」
女性が席横に立ち武雄に紙を渡す。
「はい、お預かりします。」
と武雄が席に戻る。
席に着いて武雄は概略書を見るのだが・・・
「・・・へ?・・・」
内容を見て固まるのだった。
・・
・
「木花咲耶姫殿ですか。」
議事進行を務める王家専属魔法師が概要書を見て言う。
「はい。
今日は色々な方がこの部屋に参られましたので我ら精霊は楽しんで見ていました。
そしてこの組の方は私達に興味を示さずに読み書きをしておいででしたので逆に興味を引きました。
またスー助が私達にこのような面接があると言ったので面白そうと思い先んじて私が手を上げた次第になります。」
木花咲耶姫は楽しそうに言う。
「そうですか。
したい事に『酒造り』とありますが。」
「はい。
先日、この部屋の前で米の入手をすると言っておられましたので、私が知る知識が使えるのではないかと思いました。
私も長年この部屋に居ましたので久方ぶりに飲みたいと思っております。」
「タケオさんが欲しがっている穀物でしたか?」
ウィリアムが武雄に聞いてくる。
「はい。確かに先日の夜にこの部屋の前で外交局長や総長と話をしました。
聞こえていたのですね。
酒は何を作られますか?」
「私は甘酒です。」
「なるほど。清酒や焼酎は作れますでしょうか?」
「そこは私の子供が専門ですが・・・
知識はありますからたぶん作れるとは思います。
ですが直接私がというよりも指導をさせて頂くという形になるかと思います。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
「魔法は何か使われますか?」
王家専属魔法師が質問をする。
「火や水も出来ますが私は戦力にはなりません。
焚き火だったり、飲み水だったりが精々です。
あとは母子のケアでしょうか。」
「わかりました・・・これも脅威ではなさそうですね。」
王家専属魔法師が呟く。
「適応者はどなたでしょうか。」
「適応者と話をしても?」
「はい、構いません。」
王家専属魔法師が頷くと木花咲耶姫は席を立ち武雄達の方に来て一礼する。
「私との適応条件は『将来を誓いあった番である事』、『妊婦である事』、前者は貴女と貴方、後者は貴女で条件が満たされた為、能力を下げられる事なく実体化出来ました。
本来は1組の男女が来た際に呼び掛け、祝福をしながら実体化するように仕向けたのですが、今回は別々に要件が満たされた為、お呼びできませんでした。
それと私と契約できるのは女性のみになります。」
「え?・・・」
「はい?・・・」
アリスとジェシーが驚きながら固まる。
「またお酒造りをしたいので貴女と契約をさせて頂けますでしょうか。」
木花咲耶姫はアリスにお願いする。
「は?・・・はい、構いませんが・・・」
アリスはとりあえず了承する。
「そして貴女の精霊になれなくて申し訳ないです。」
「え・・・いえ、そこは・・・ですが、さっきの話」
「それは後程話をしましょう。
これはこの場に来ていただいたお礼です。」
木花咲耶姫がジェシーの手を取り魔法を発動する。
するとジェシーの体が薄っすらと光に包まれるのだった。
「・・・これは?」
「この時代の母子は体が少し弱いのです。
なので流産しないように体調や血流、その他栄養面の流れを調整しました。
お子の種は着床を確実にさせましたので、あとはバランスの良い食事と決して無理をしない生活をしてください。
さて、契約者との話は終わりました。」
木花咲耶姫が席に戻る。
「・・・はぁ・・・タケオ。」
「はい、なんでしょうか、陛下。」
「凄いのが来たな。
続きは頼む。」
「はい。
木花咲耶姫殿。」
「はい、何でしょうか。」
木花咲耶姫が武雄に聞き返す。
「契約をするに際してテトことティシュトリヤの時と同じ条件を木花咲耶姫殿に飲んで貰わないといけません。」
「はい。
それはこの場の精霊は全員前回の時に聞いています。
貴方がいるのですからそうなるだろうと思って出てきていますので、その条件で構いません。
それに契約者が放逐されてしまうのは忍びないのは事実です。」
「では改めて条件を提示します。
精霊として目の前に困っている者が居ても貴女の判断で動かないという条件を付けさせて頂きます。
貴女が独自の判断で動けるのは契約者を守る時だけ。
それ以外は契約者の判断を聞いてからにして頂きます。」
「わかりました。
私は契約者の緊急時を除き、契約者の意思を尊重し判断を聞いてから行動をする事を約束します。
ですが、出来る事と出来ない事の判断は私にもさせて貰いますので概ねの指示には従うという事になると思います。
これでよろしいでしょうか?」
木花咲耶姫が武雄に聞き返す。
「はい、では・・・
あとはアリスお嬢様がお決めください。」
「・・・わかりました。
私の命令には従ってくれますか?」
「先の宣言通り、緊急時を除き契約者の判断を聞いたのちに行動する事を誓います。」
「私に従うという事は婚約者のタケオ様や家族の命令にも従ってくれますか?
また、私や私の家族にとって不利益になるような行動は慎んで貰えますか?」
「出来る限り善処いたします。」
「私、アリス・ヘンリー・エルヴィスは木花咲耶姫と契約を結びます。」
「アリスですね。
私は木花咲耶姫、通称コノハと呼んでください。」
アリスとコノハが握手をすると眩い光が再び部屋を覆うのだった
・・
・
コノハはテトや仁王と同じようにミアと同じ大きさになってアリスの前の机に座っている。
またこの場の全員と挨拶も済ませていた。
「・・・1人目から凄いのが来たな。
それにしても待望の子供だな!ゴドウィン伯爵に伝えないとな。」
「は・・・はい!これが終わりましたらすぐに伝令を送ります!」
ジェシーが突然の吉事にテンパっている。
「で、コノハ、本当にジェシーお姉様は本当に懐妊されたのですか?」
アリスがコノハに聞いて来る。
「妊娠7週目という所でしょうね。
着床は先ほどしっかりとしましたから余程の事がない限り流れないと思いますよ。
でも何事も絶対ではないので無理はしないでください。」
「はい!ありがとうございます!」
ジェシーがコノハに頭を下げる。
「ところでアリス。
この城の一角にアリスやジェシーと同じ感じの女性が居ますね?」
「レイラお姉様でしょうか?
明日にでも紹介させて貰います。」
「・・・そうですか、まぁそれでも良いでしょうね。」
コノハが若干考えながら頷く。
「何かあるのですか?」
武雄がコノハに聞く。
「いえ、そこに妊婦がいるのです」
「「「はぁ!?」」」
今まで黙って見ていたクリフとニールとウィリアムが席を立つ。
「・・・コノハ、出来ればそこの女性達にも祝福をして欲しいのですけど。」
武雄が真面目にお願いしてくる。
「ふむ・・・それは今後アリスやタケオに有利に働くの?」
「ええ、とっても。
お酒に関しての資金が手に入る可能性すらありますよ。」
「おぉ、それは良い事を聞きましたね。
ではタケオ、アリスの判断でして構いませんね。」
「はい、その方々は見返りが良いですからね。
貸しは作っておくと後々楽になると思います。」
「ふむふむ、やはりアリスを選んで良かったですね。
これからアリスとタケオといろいろな物が作れそうです。
そう言えばミアがお菓子がどうのとか言っていましたが、何か作りましたか?」
コノハが聞いて来る。
「餡子とかりんとうは出来ています。
米が出来たらおはぎでしょうか。もしくは焼き団子に餡子を乗せますか?」
武雄がこっそりと言って来る。
「ふふふ、これは私は良い人材と会えましたね。
良いでしょう、お菓子の為に酒の事業は上手く行かせるようにしましょう。
実入りが多ければさらに多くのお菓子が出来そうです。
タケオ、期待していますよ。」
「はい、努力していきます。」
武雄とコノハの密談が成立するのだった。
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