第778話 研修最終日。アニータ達の練習風景。3(アリス・・・飽きてる?)
ここは王城内の小会議室。
最終日の新人貴族研修が行われていた。
「なるほど、これも取り扱い品目の一部なんですね。」
武雄が講師である専売局員の説明を聞いて頷いていた。
「専売局ですか・・・
この品目数を良く管理しているものですね。」
アルダーソンも資料を見ながら言ってくる。
「んー・・・ニール殿下と隣の領地だからカトランダ帝国への流通はうちを通るのか。
これは通行料がある程度見込めるんですね。」
バビントンが頷いている。
「皆さん、どうでしょうか?
バビントン殿は文官出身でしたが、知っていらっしゃいましたか?」
「はい。いやここまでの詳細な項目は知りませんでした。
クリフ殿下領で必用な材料は購入していましたが、ここまで多様だとは思いませんでした。
それに試験をされていたのですか。」
「そうですね。
塩や茶葉、鉄鋼を主に専売していますからそちらの売買に皆さん目が行かれます。
ですが、我々は専売と同時に生産性の向上や品目増加を狙っての試作部署を持っています。
ここでは主に製造方法の見直しをしているので試作という言葉は違うかもしれませんが、この言葉を使っています。
アルダーソン殿とキタミザト殿には鉄鋼について材質の試作品の製作をお願いするかも知れません。」
専売局員が言ってくる。
「・・・それは私達と契約している工房で、という事でよろしいでしょうか?」
アルダーソンが聞く。
「はい。しっかりとした工房であれば問題ないと思っています。
ですが、まだ素案が出来た段階ですので詳しい内容が出来ましたら相談をいたします。」
「「わかりました。」」
武雄とアルダーソンが頷く。
「アルダーソン殿、キタミザト殿。
研究所の人員の辞令書が用意出来ました。
ご確認をお願いします。」
オルコットが講師席に座って言ってくる。
「「はい。」」
総監局の文官が武雄とアルダーソンの前に辞令書の束を置く。
2人とも昨日の研修中に辞令書の内容確認はしており、総監局での最終確認後にアズパール王の蝋印がされ完成していた。
「あと、キタミザト殿の試験小隊は魔法師専門学院からの登用がありますのご指示の通り内定書を作成しています。」
「「内定書?」」
バビントンとアルダーソンが武雄に顔を向ける。
「ええ。採用内定者に書面通知はしないのですか?」
武雄がバビントンとアルダーソンを見てからオルコットに聞き返す。
「ええ。魔法師専門学院や王立学院での採用決定者には所属先・・・魔法師専門学院と王立学院の学院長にリストが送られ、生徒達には4月1日に所定部署に出頭するという掲示通知のみされます。」
「なるほど。
なら内定書は異例なのですか。」
「そうなります。
ですがキタミザト殿は王立ですので内定書を渡し、特別感を出す事もありなのではないでしょうか。
アルダーソン殿も魔法師専門学院から採用される際には同様に内定書をお作りしますのでお申し出ください。」
「はい、わかりました。」
アルダーソンが頷く。
「えーっと・・・内定書は私の蝋印ですね。
マイヤーさん、2名の辞令は預かってください。
4月に来た際に渡しましょう。」
「畏まりました。」
「ヴィクター、さっさとしちゃいましょう。」
「はい。」
と、ヴィクターが武雄の横に来て総監局の文官が用意した蝋を溶かし始めるのだった。
・・
・
「・・・これで良いのでしょうか・・・」
武雄は蝋印をした所をマジマジと見つめながら呟く。
「どれどれ・・・初めてにしてはよろしいのではないでしょうか。
もう少し強く押した方がくっきりと付きますね。」
オルコットが武雄が押した蝋印を確認する。
「なるほど、そういう物なのですね。」
「ある程度慣れでしょう。」
オルコットが武雄に内定書を戻す。
「アンダーセンさん、アンダーセンさんの辞令が出次第、魔法師専門学院に行きケイ・ケードとパメラ・コーエンに渡してきてください。」
「はっ!
謹んでお受けいたします。」
アンダーセンが内定書を仕舞う。
「さて辞令についても終わりましたね。
午前中はそろそろ終わりにしましょう。
午後はこれからの気構え等についての最終確認ですね。
では一旦、解散です。」
オルコットが午前の研修を終わらせるのだった。
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王都守備隊専用の運動場。
「・・・んしょ!」
「ぐっ・・・」
アリスが左から薙ぎ払うと対峙している王都守備隊員が防御した体勢で少し後ろに飛ばされ膝を地面に付ける。
「よし!次の者前へ!」
次の者が前へ出る。
予想通りアリス対皆の構図が成り立っていた。
そしてアリスは体力は常時ケアをかけている為、問題なく続けている。
精神的には疲れがあるだろうが襲撃時と比べれば何ともなかった。
数度打ち合って薙ぎ払って相手が交代をさっきから繰り返していた。
「・・・何というか・・・単調だな。」
アズパール王がボーっとしながら見ている。
「いやいや、やっている者達は必死ですよ。
数度受けていますけど、相当精神的に参っているはずです。
むしろ鮮紅殿がおかしいです。
全く疲れを出していないのですから。」
総長が呆れながら言ってくる。
そして「全力ではないという事か」と難しい顔をさせる。
「・・・アリス様、これで何人目ですかね?」
「えーっと・・・15?16人かな?」
クリナが呟く横でアンが指を折りながら数えている。
「はぁ・・・これは凄いわね。」
「そうですね、エイミー殿下。」
エイミーとジェシーがアリスを見ながら言ってくる。
スミスは黙って見ているが「アリスお姉様、全然本気じゃないように見えるんだけど。」と呆れているのだった。
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