第776話 84日目 アニータ達の練習風景。(準備運動。)
王城に隣接する王都守備隊専用の運動場。
早朝の部隊の練習がされている。
「せいっ!せいっ!せいっ!」
「やっ!やっ!えいっ!」
「はいっ!えいっ!やーっ!」
王都守備隊員に混じってアニータとミルコも剣の素振りをしている。
「アニータ、ミルコ、早く振るだけでなく目の前に相手を想像しなさい。」
その横でブルックが2人を見守っている。
ちなみに参加者は王都守備隊の第一近衛と第二魔法と第三魔法と二研の試験小隊の面々でアーキン達4名以外は全員がフルプレート姿だった。
その傍らで。
「ん~・・・朝から外でのお茶も良いですね。」
「ええ、まぁそうですね。」
アリスがフルプレート姿で座ってお茶を飲んでいる。
武雄は「もうどうにでもなれ」と投げやりにアリスの横でアニータ達を見ていたりする。
「・・・素振り長いですね。」
ジーナがその様子をボーっと見ている。
「体を温めないといけないからでしょうね。
主、お茶を入れました。」
ヴィクターもお茶を入れながら言ってくる。
「はい、ありがとう。」
今日の朝起きてアリスが「昼はタケオ様が作ってくれるから今日は王城内に居ます」と言ったのは良いとして「そう言えばアニータとミルコが王都守備隊と訓練するのですって。私も参加したいです♪」と言い出したのが問題だった。
で、武雄が「そんな簡単に参加できるのかな?」と思いながら用を足しに行った際にたまたま通りかかった総長に聞いた所「ええ。王都守備隊と二研の試験小隊で剣術の訓練をすると言っていましたよ。許可しましたが。」と言われ、「うちの婚約者が参加するって言っていますよ?」というと血相を変えて運動場に走っていった。
その後、昼食の件で厨房に向かう際に陛下とオルコットにも会ったので同様の事を言ったら「それは面白そうだな。参加してみたらどうだ?」とトップの許可が下り、「キタミザト殿は今日は研修最終日ですからね?」とオルコットに「遅れる事がないように」と釘を刺された。
そして今に至るのだが。
「・・・参加している王都守備隊・・・いやアニータとミルコ以外が緊張していますけど。
大丈夫ですかね?」
武雄がため息交じりに言う。
「陛下は許可してくれたのですよね?」
アリスが聞いて来る。
「ええ。楽しそうに『参加しておいで♪』と言われていましたね。」
「あ、本当に居た。
タケオさん、アリス、おはよう。」
「タケオ様、アリスお姉様、おはようございます。」
ジェシーとスミスが椅子を持ってやってくる。
「あ、ジェシーお姉様、スミス、おはようございます。」
アリスがジェシーとスミスに挨拶をする。
「ジェシーさん、スミス坊ちゃん、おはようございます。
ん?・・・スミス坊ちゃん、どうしたのですか額が青いですよ?ぶつけましたか?」
武雄がスミスに近寄りケアをかけて治しながら言ってくる。
「あ・・・まぁそんな物です。」
スミスが武雄のケアを受けながら曖昧な返事をする。
「・・・ジェシーお姉様、あれ・・・デコピンですよね?」
「あら?アリスは流石にわかるわね。」
「私あれ・・・昔受け過ぎて血が出ましたよ?」
「良い思い出ね♪」
「ジェシーお姉様、何をしたのですか?」
「昨日の晩にちょっとね~。」
アリスとジェシーがコソコソ話している。
「お、もう来ているのか。」
アズパール王がクリフとニールとウィリアム達3皇子とエイミーとクリナとアンを連れてやって来る。
もちろん執事達が椅子やら机やらも準備している。
「「「「陛下、殿下方、おはようございます。」」」」
アリスは立ち上がり、武雄達は一斉に挨拶をする。
「うむ、おはよう。
今日はここで朝食だな。
皆の分も用意させてるぞ。」
「あの・・・レイラお姉様達は?」
アリスがこの場に居ない姉達について聞いてみる。
「あぁ、ローナ達妃は会議中だな。
挙式の後に3日3晩やるのが恒例でね。今頃フラフラなんじゃないか?」
クリフが苦笑しながら言ってくる。
「僕たちも今日も貴族達が研修だから暇でね。
父上が『面白い事が待っている』というので付いて来たんだよ。」
ウィリアムが説明する。
「そうなのですか。」
アリスが「何が面白いの?」と不思議そうな顔をしている。
「タケオさん、アリス様が戦うのですか?」
アンが聞いて来る。
「戦いというよりも少し運動したいと言っているのですよ。」
武雄が苦笑する。
「そうなのですね。」
アンが楽しそうに言う横でクリナが目をキラキラさせながらアリスを見ている。
エイミーは武雄達に挨拶をした後、椅子に座りこっそりと懐中時計を見ながらにやけるのだった。
「タケオ様、私も準備運動します。」
アリスが模擬剣(両手用木剣)を片手に言ってくる。
武雄とアリスは皆から少し距離を取る。
「何をしますか?」
「ん。」
アリスは上段に構える。
「はいはい。」
武雄はアリスに左手をかざしてシールドを×15を発動するのだった。
・・
・
「んんっ!・・・」
アリスは力を込めるが武雄はシールドを展開し、不動で受け止めていた。
「・・・」
武雄はシールドでいつかの模擬戦の時のように受け止めているのだが、あの時よりも緊迫感が少ない感じを受けていた。
「・・・アリスお嬢様、魔眼を発動してもう一度お願いします。」
「はい。」
アリスが一旦引いて再び上段に構えて魔眼を発動させる。
武雄は身じろぎもせずに立っている。
見ている王家の面々は「良くもまぁ正面に立てるものだ」と感心する。
「・・・」
武雄は無言で左手をアリスにかざしている。
「行きます!」
と、アリスが一気に距離を縮めて剣を振り下ろし、やはり武雄は不動で受け止める。
「・・・」
武雄はシールドに軋みがない事を不思議に感じていた。
「んんんっ!・・・」
アリスが力を込めるがやはり武雄は揺るがないのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




