第772話 エルヴィス爺さんが思案中。(物の輸出入量についてと干物?)
ここはエルヴィス家の客間。
エルヴィス爺さんとフレデリック、夕霧と彩雲が居た。
「・・・」
エルヴィス爺さんがシモーナからの報告書を読んでいた。
「ふぅ・・・フレデリック、タケオの予想が的中したの。」
エルヴィス爺さんが報告書をフレデリックに渡しながら言ってくる。
「・・・ウォルトウィスキーが250本ですか。
タケオ様は450本を用意しましたから許容範囲内ですね。
米が金貨10枚で200㎏の予定が500㎏・・・向こうはやる気と取れば良いでしょうか。」
「そうじゃの。だが倍どころではないな。
さて・・・どうした物か。」
エルヴィス爺さんが腕を組んで悩む。
「一応、出立前にタケオ様には言いましたが・・・」
「米については10年間の取引をするとしか言っていなかったの。
量は200㎏で来ると思っていたが・・・」
「そうですね。
そもそも流通をしているかも確かではなかったのですからここまで来るとは思いませんでしたね。」
「価格は据え置きだから想定内と言えばその通りなのじゃがの。
・・・ふむ。米は500㎏を10年間輸入するかの。ウォルトウィスキーは月21本の年252本の輸出としようかの。
それに魔王国だけでなく、エルフのブリアーニ王国・・・これがロバートの所と森を挟んだところの国じゃの。
そこと貿易が出来るのは後々に良いかもしれぬ。」
「はい。
まさか国が動いてくれるとは予想しておりませんでした。」
「そうじゃの。たかだか地方領主からの依頼なのにの。
・・・フレデリック、向こうは何を狙っておるのかの?」
エルヴィス爺さんが目を細めて言ってくる。
「さて・・・魔王国の真意はわからないですね・・・
ですが、この手紙に書かれている内容が違う部分の判断が難しいですね。
この書き方では慣例の戦争があると言っています。」
「フレデリックもそう思うかの。」
「はい。
パーニ伯爵?・・・これは確かゴドウィン伯爵と対峙している貴族でしたね。
ここに『今年後半の頭には慣例の行事がある為、荷物を多く納入する可能性があるので早期の判断をお願いしたい』と最後の文言で言っていますね。
今の時点で『半年後の荷物』の話をそれも私達にするのは商売上変です。
そして『慣例の行事』と言いながら『納入する可能性』と行事が突発的に発生したと言っています。
ならここに何かしらの異変があるのだという点が想定されます。
そして突発的な慣例行事で我らにも関する事と言えば『慣例の戦争』しかないでしょう。」
「うむ、その通りじゃ。
半年後か・・・夕霧、初雪の関までの通路は順調かの?」
「はい。
東町へはもうすぐ・・・2、3日でしょう。
さらにそこから関まで一気に伸ばします。」
「夕霧達は仕事が早いの。」
「20体で休まずやっていますから順調です。」
「・・・過酷な労働でも体調を崩さないというのは便利じゃがのぉ。
時雨も初雪も無理はさせてはならん。」
エルヴィス爺さんが苦笑する。
「そこはわかっています。
あの2人は今日はタケオの試験小隊の広場の草刈りですね。
それと卵の殻の清掃をしているかと。」
「ふむ、それも順調そうじゃの。
あとは大量に作る際の卵の殻の確保だけじゃ。
フレデリック、文官内ではどうじゃ?」
「来月の局長会議に向けて文官内で昨日の内容の精査をしています。
概ね順調でしょうか。
若干、疲れが見えています。」
「ふむ・・・人員が足らぬかの?」
「ええ。中堅の仕事が増える見通しなので・・・少し残業が増えているようです。
ですが、どれも魅力的なようで楽しそうではあると上司達は言っていますね。」
「そうか・・・夕霧達スライムの体液事業と卵の殻は早々に着手して利益を取らないといけないの。
そこから皆に一時金を払えれば良いのじゃが。」
「そうですね・・・あと、ハワース商会への消しゴムの作成方法の供与についてはどういたしましょうか?」
「ふむ・・・向こうも人員がある事だからのぉ。
スライムの体液事業でハワース商会に素材の販売価格を教える際に伝えるしかないじゃろうの。
その内容は黒板等の契約書と同等で良いとは思うがの。」
「では、総監局が頭になって他の部局と話し合います。」
「うむ。
最終的には局長会議後だろうの。」
「はい。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「では伯爵。
タケオに伝えたい事は言い終わりましたか?」
夕霧が彩雲の横に立って聞いて来る。
「うむ。
タマ達の事も言ったし、こちらの今の現状も言った。
先ほどの魔王国についてはその通りじゃし、昨日試験した手紙の運搬も試してみようかの。
彩雲、良いかの?」
「はっ!」
彩雲が頷く。
「では、すぐに桶を1つ用意して参りましょう。」
とフレデリックが退出していく。
「さて・・・で、この一緒に来た干物なのじゃがの・・・」
エルヴィス爺さんがジーっと机の上の干物を見ている。
「伯爵、それは何なのでしょうか?」
彩雲が聞いて来る。
「いや・・・魚の干物なのじゃ。」
「魚の干物は珍しい?」
夕霧が聞いて来る。
「魚の干物自体は珍しくはないのだがの・・・
知らない魚なのじゃ。」
「知らない魚?」
「うむ、アズパール王国では獲れぬ魚じゃの。
えーっと・・・堅魚とかいうらしいの?その名の通り固くてそして味がマズいらしい。
じゃが、口に含んでいると微かな味がするという事じゃな。」
「??・・・良くわからないですが、人間が食べて良いのでしょうか?」
「わからんの・・・何でも売り文句は魔王国一固い干物という事らしいの。」
「では1つ。」
夕霧がパキッと小さく折って体内に入れる。
「・・・伯爵、毒はないです。
人間が食べても問題ないでしょう。」
「そ・・・そうかの。
他はどうじゃ?」
「固くて溶け辛いですね。栄養も余り・・・んー・・・これなら残飯の方が良いですね。」
「ふむふむ。
ではこれは保留じゃの。」
エルヴィス爺さんが干物をしまうのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




