第769話 妃会議1日目。研修2回目。2(軍事計画。)
ここは王城内の中会議室。
第1皇子妃3名、第2皇子妃1名、第3皇子妃2名とエリカが居た。
3日3晩行われる妃会議の初日だ。
「で?リネット、クラリッサ。
貴女達の政治理念を言いなさい。」
セリーナが場を仕切っていた。
今は政治について皆の意見を言っている最中のようだ。
「う・・・ですから。
物の流通や商売は民に任せ私達は兵士の育成を熱心にすることが貴族の正しい姿だと・・・」
「クラリッサ、それは政治手法であって理念ではないわ。
私達が聞きたいのは『国とは王家とはなんなのか』なのよ。」
「んん~・・・」
クラリッサが悩む。
「国の最低限の責務は『国民をあらゆる外敵から守る事』。
王家は『その先頭に立って、守る手立てを考える事』です。」
「なるほどね。
リネットは武官ね。考えが似ているわ。」
「そうね。ニールの妻はこうでないといけないのかもね。」
ローナとセリーナは苦笑する。
「え?どういうことでしょうか?」
「良いのよ、気にしないで。」
「そうね、これは私達の独り言よ。
それにしてもリネットの考えは軍事優先国家になり得る考えね。」
「そうでしょうか。
ですが、私は間違いではないと思っています。」
リネットが若干拗ねながら言ってくる。
「ええ、間違いじゃないわ。
私達の各々の考えはどれもが間違いではないのよ。」
「え?・・・ですが。」
「この妃会議の目的は意思を統一するのではなく、多様な考えを知る事を目的としているのよ。
この議論に結論はないわ。
本音を語り本音で反論し、お互いがお互いの考えをぶつけ納得するまでする。
私達は他者の意見を否定をするし、擁護もする。
覚悟しなさい。全ての本音を聞くまで終わらないからね?」
「・・・」
ローナが目つきを鋭くする。
「クラリッサ、自分の理念はわかったの?」
「う・・・もう少し時間をください・・・」
「わかったわ。
じゃあその間にアルマとレイラ、行くわよ。」
「ええ、望むところです。」
「はぁ・・・これ疲れるんだよね~・・・」
妃会議は白熱し始めるのだった。
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ここは王城内の小会議室。
新領主と新研究所所長の研修会場。
研究所の試験小隊増設計画と、今後の軍事行動計画が発表されていた。
「なっ・・・」
バビントンが口を開けて説明を聞き終えていた。
「4年と3小隊・・・」
アルダーソンが腕を組んで考える。
「・・・」
武雄は何も言わない。
「これが今後5年の軍事行動計画になります。
これは、外交局と王都守備隊からの情報を元にした王城内の幹部達が出した結論であり、幹部の認識になります。
また、今はこの予定で進みますが、万が一、ウィリプ連合国からの戦争が今後4年以内、つまりは準備期間より前の場合は防衛戦のみ行い侵攻戦には移行しません。」
「こ・・・この内容は他の領主達には連絡されるのでしょうか?」
バビントンがオルコットに聞く。
「・・・しません。
この内容はギリギリまで、ここに参加をしている者以外の貴族は知りません。
ですが、勘の良い方は命令を総合的に見て気が付くでしょう。その時は、問い合わせがあっても侵攻計画は隠します。
また王城内では各部署が行動計画に沿って細分化された仕事を行う為、全体像は幹部のみ知り得ます。」
オルコットが言う。
「・・・ふむ・・・」
武雄が資料の裏に殴り書きしながら思案している。
「キタミザト殿、何かありますか?」
「あるにはありますが、聞いても良いのか・・・
オルコット宰相、言えないことなら答えないでください。」
「わかりました。」
「まず研究所の理念は『負けない為の研究』。
これは良いですか?」
「そのとおりですね。」
「やる事は武具の開発と戦術と検討。
戦術については一研が王国西側を検討し、二研が王国東側を検討する。」
「はい。」
「そして武具の開発は兵士の生存確率を高める為ですね。」
「はい。キタミザト殿が考えた通りで問題ありません。」
「・・・そうですか。
では、武具の改良と開発については、私達研究所で検討します。
戦術についても同様に防衛を基本に考えましょう。
まぁ、アルダーソン殿は5年後に向けての戦術起案が待っていそうですが・・・」
「キタミザト殿、そこは今は考えない事にしたいのですけど。」
武雄の言葉にアルダーソンが苦笑する。
「それは追々でしょうかね。
で、お聞きしたいのは戦略についてです。
兵士や物資の移動については、先の街道整備計画で効率を高めるという事と、ウィリプ連合国の関を1つとする事で、想定戦場を限定する意味合いがあるのはわかります。」
「はい。
キタミザト殿、何を聞きたいのですか?」
「戦略は情報も加味されて初めて動けます。
これは情報収集を指すとみられる事もありますが、こちらから意図的に出す情報も指します。
オルコット宰相、どんな情報を発信する気でいるのですか?」
「ふむ・・・陛下。」
オルコットがアズパール王に聞く。
「そうだな・・・構わぬだろう。
それにタケオの考えも聞いておきたい。」
「はい。
では、外交局長。」
「はっ!
何通りか実施するのですが、ここでは1つを説明します。
あまり私達外交局の手札を見せたくはありません。
キタミザト殿、それでよろしいでしょうか?」
「はい。1つでもわかっていれば私達も手を打てるかと思います。」
「そうですか。
では、1つご説明いたします。」
外交局長が説明をするのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
書き始めて2年が経ちました。
まさかこんなに続くとは・・・
今の王都での話が終わってウィリプ連合国に行く際はある程度絞れればなぁとは思うのですが・・・
去年もそう言っていた気がします。
これからもよろしくお願いします。




