第768話 研修2回目。1(街道整備。)
ここは王城内の小会議室。
研究所所長の武雄とアルダーソン、領地持ち領主であるバビントンの研修会場。
「・・・なんですかこれ?」
武雄が朝食を終え、アーキン達にアリスの護衛をお願いしてからヴィクターと小会議室に到着したのだが、中に入るなり居る人員を見て思わず呟く。
陛下、皇子3人、パットとアン、エイミーとクリナ。
オルコット宰相に人事局長、専売局長、軍務局長に総監局長、外交局長に財政局長、王都守備隊総長と隊長2名。
マイヤーとアンダーセン、バビントンとアルダーソンとその執事達2名が居た。
「キタミザト殿、まもなくです。
席にお着きください。」
オルコットが武雄に着席を促し、武雄は名前が書かれた席に移動する。
机は長机がロの字形に配置され、扉側の机は講師席、左はバビントン、右がアルダーソン。武雄は講師席の対面。
新貴族の後ろに執事が座っている。
武雄の場合は、武雄の席の後ろにマイヤーとアンダーセンとヴィクターが座る形になる。
王家一行は小会議室の奥に用意されていた。
「マイヤーさん、これはどういう事でしょうか。」
「私にもわかりません。」
マイヤーが言ってくるが、「また陛下の悪巧みでは?」と表情が物語っていた。
「はぁ、とりあえず開始までのんびりですね。」
・・
・
オルコットが講師となり、研修の冊子に書かれている要点を説明していた。
「以上が、事前会議の概要と変更点になります。
何かご質問はありますか?
もしくは現状での確認事項でも構いません。」
「んー・・・キタミザト殿。」
アルダーソンが悩んでいたが武雄に話しかける。
「はい。」
「キタミザト殿はまずは盾の研究でしたね。」
「ええ、その予定です。
アルダーソン殿は?」
武雄が聞き返す
「私は陛下より『初級魔法の消費魔力を低減させる指輪』作りをと。」
「そうですか・・・
オルコット宰相、研究所が作り出した物の販売価格の3割を専売局に、開発をした研究所に1割の納付でしたね。」
「はい。
キタミザト殿、盾はどのように販売する気ですか?」
「エルヴィス家では毎年100ずつ・・・4年をかけて盾の入れ替えをしています。
盾は1m×1.5mで価格は100個で金貨110枚程度らしいです。
ですので、予算を変更する必要が無いよう同価格での販売を目指したいですね。
そして上手く製品化すればアルダーソン殿に依頼して、西側でも作って貰う事になるかと思います。」
「なるほど。
アルダーソン殿はどう考えておいででしょう。」
「今の所、初級魔法なら1割減を目指した指輪を目指します。
価格は銀貨5枚でしょうか。
私の方も上手く製品化すれば、王国の東側はキタミザト殿に依頼する事になります。」
アルダーソンが言ってくる。
「そうですか・・・では、お互いに切磋琢磨して頂きましょう。
研究所の運営開始は4月となっています。
ですので・・・そうですね、5月末までにアルダーソン殿とキタミザト殿は、盾と指輪以外にも研究をしたい物のリストを王都守備隊に提出してください。
そこで研究内容を確認いたします。」
「「わかりました。」」
武雄とアルダーソンが頷く。
「バビントン殿は領地運営について何かありますか。」
「優先順位の付け方が今悩みですね。」
「ほぉ、どういった事でしょうか。」
オルコットが聞いて来る。
「今の領地の課題は街区整理、農業の種類と推進、工業の推進、主要街道の整備です。
そこに兵士や騎士団についても何とかしないといけません。
どれもが重要でどう優先順位を付けるのか。
そこを悩んでいます。」
「ふむ・・・では、明日説明しようと思っていましたが、今その話題が出るなら今しましょう。
ではお三方。王都からの国内街道整備事業命令をこれから説明いたします。
おい、地図と各資料をこちらに。」
「はっ!」
オルコットが指図すると文官が武雄達の前に机を置き、地図や資料の配布をするのだった。
・・
・
「「「・・・」」」
武雄達3人は一通りの説明を聞いて各々地図を見ていた。
「・・・つまりはウィリアム殿下領までの街道を王都からとニール殿下領から新規に整備し、ウィリアム殿下領からエルヴィス領、ゴドウィン領、テンプル領までは新規整備及び既存街道の拡張を行う。
王都からニール殿下領とクリフ殿下領を経由したアシュトン領、エルヴィス領に行く街道は拡張工事。
アシュトン領からバビントン領を経由してニール殿下領に行く街道は新規整備とするのですね。」
バビントンが難しい顔をさせて言ってくる。
「ウィリプ連合国へは現状の関2つの内、カトランダ帝国側の関の・・・廃棄ですか?」
アルダーソンが難しい顔をさせる。
「アルダーソン殿、廃棄ではありません。縮小です。
主要街道としては海側の関を拡大し、街道も太くして通行量を増やす算段です。
対して、カトランダ帝国側の関は堅牢とし、街道も細くして通行量を減らし、予備としての通行手段として生かします。」
オルコットが言う。
「ん~・・・」
アルダーソンが唸りながら悩む。
武雄は何も言わずに聞いているし、マイヤーとアンダーセンも何も言わずに思案している。
「バビントン殿、アルダーソン殿、これは王都で決めた事です。
貴族会議でも採決が図られますが、陛下も殿下方も了承している事項になります。」
「つまりはほぼ確定事項なのですね?」
バビントンが言う。
「はい。
ほぼ確定事項です。
これについては今さら変更は出来ません。ご了承ください。」
「「・・・わかりました。」」
バビントンとアルダーソンが頷く。
「キタミザト殿はどうでしょうか。」
「王国東側の整備はウィリアム殿下が参られますので、仰られた考えで私は良いとは思います。
ですが、エルヴィス領とテンプル領からウィリアム殿下領までの街道整備は新規ですから・・・貴族負担がどうなるのかは些か心配ではあります。
主家がそこまで予算を見ているのか・・・少しわかりかねます。」
「街道整備は国策事業ですので、7割は王都負担となる予定です。
これは貴族会議通過後に各領地に通達されますが、同時に費用負担についての第1回の指示が出ますので、その際に向こうの貴族と文官にて議論して貰う事になるでしょう。」
「そうですか・・・わかりました。」
武雄は頷きながら「こりゃ、こっちにも話が来るな」と思うのだった。
「さて、街道の話は以上です。
バビントン殿、再考して頂いて優先順位を確定してください。」
「はい・・・」
「さて、では次は軍事関係の話をしましょうか。」
オルコットが議論を進めるのだった。
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