第762話 立食会。4(エイミーの応援団。)
アルダーソンやボールドと軽く話をし終わったエイミー達なのだが・・・
「ふぅ、ならその執事候補をどうやって決めるのよ。」
「「ん~・・・」」
クリナとアンが考える。
「はぁ・・・ジーナと同じ素養なら相当な逸材じゃない。
それにそもそもジーナは獣人なのだから、同じ素養というなら獣人を雇うしかないわよ。」
エイミーがボソッと呟く。
「それです!」
アンが閃く。
「ん?何を閃いたの?」
「エイミーお姉様の言う通り獣人を雇えば良いのです!」
「あぁなるほど、その手があった。」
アンの閃きにクリナも頷く。
「無理に決まっているでしょう・・・」
エイミーが頭痛を堪えるようにして言う。
「何故ですか?タケオさんは部下に取り立てています。」
「それはタケオさんだからとしか言えないわよ。
それに王都でも何とか数名取り立てられるようにする下準備の真っ最中。
ましてや私達王家が手を出すにはリスクが高過ぎよ。」
「ん~・・・タケオさんは出来るのに王家だと出来ないのですか?」
「下地が整っていないから無理ね。
出来るのは最低でも数年後よ。」
エイミーがきっぱりと言う。
「むぅ・・・アン、これは難しいわね。」
「そうですね。エイミーお姉様が頷かなければお母様達も頷きません。
やはりこれは領内をくまなく探して人間種でジーナに匹敵する人材を確保するしかないですね。」
「だからそれが難しいんだって・・・
ジーナは破格なのよ?」
「エイミー殿下、私は別にそこまででは・・・」
聞き耳を立てているジーナがボソッと呟く。
「元貴族令嬢で素養もあり物覚えも良い。
タケオさんの無茶な要求にも応えそうだし、アリス様と一緒に戦闘を経験出来る運動量もある。」
「いえ・・・ご主人様は私に無茶を言いませんが・・・」
ジーナの呟きには誰も反応してくれない。
「それにタケオさんが満を持してジーナを送り込むならそれなりに訓練されます。
あのタケオさんが生半可な事をするわけないでしょう?
それに名目は護衛。ならアリス様も何かしら関与してから送り出してくる。
そんな逸材を簡単に私達の領内で見つけられるわけないでしょう?」
「「ん~・・・」」
クリナとアンが「さてどうしたものかぁ」と考えるのだった。
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会場内の違う場所で大人たちが武雄達の居る所を見ていた。
「ほぉ、あれがエルヴィス家のスミスか。
美男子だな。うちのグレースにもってこいだ。」
「叔父上、何を言っておいでですか?」
「ん?何か問題があるのか?
それにしてもグレースを連れてくればよかった。
ニールの所のエイミーが居るのにうちのが居ないのはちと不平等だな。」
「うちのエイミーはしょうがないでしょう。
子供達で一まとめにしたのですから。」
「来る者のリストは叔父上も見ているではないですか?
なんでグレースを連れて来ないのですか?」
アズパール王の弟のアズパール大公とクリフ、ニール、ウィリアムが酒を片手に談笑していた。
「・・・おっさん達の酒盛に付き合いたくないだと・・・
来れば来ただけで収穫はあるだろうに。
リストは見たがなぁ・・・スミスの事を言えないだろう。」
「叔父上、あそこに居るスミスだけでなく、アルダーソン男爵、ボールド男爵の子息が共に同学年で入学されます。」
クリフが説明する。
「ふむ。
そちらはどういった感じなのだ?」
「お二方とも騎士団出身です。
息子さんは長男ですからほぼ間違いなく世継ぎでしょう。」
「アルダーソン男爵はニール殿下領の横の領地内で研究所の所長をされますし、ボールド男爵は貴族会議に入ります。」
「ふむふむ。
問題がなければ安定した貴族になり得るな。」
ニールとウィリアムも説明し、アズパール大公も頷く。
「同世代で当主一番乗りはスミスで間違いないですが。」
「うむ、あそこは現当主の息子は亡くなっていたな。
すぐに孫を当主に据えるだろう。そして武名が轟く鮮紅が居る。
またとないグレースの抑止力だな。」
アズパール大公の言葉に3兄弟は「抑止力ねぇ」と目を細める。
「それに・・・同じ席に居てもスミスとエイミーは話していないな。
これはうちにも機会があるだろう。」
「エイミー・・・大丈夫か?」
ニールが若干不安そうにエイミーを見るのだった。
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会場内の違うもう一方の場所で大人たちが武雄達の居る所を見ていた。
「あちゃ。エイミー、ダメね。」
「緊張しまくっているしね。アンとクリナは置いといて、スミスと話せば良いのに。」
ローナとセリーナがエイミーを見ながら言ってくる。
「いや・・・あの状況で何を話せと?
流石にエイミーさんでも難しいのではないですか?」
クラリッサが言ってくる。
「あぁ、エイミー殿下。いつもの調子で話せば良いのに・・・」
リネットはハラハラしながら見ている。
「んー・・・レイラ、スミスは話し下手なの?」
「あの感じでしょうかね。
超が付く奥手ですね。
なのでアリスもエイミーちゃんに『動いてください』と頼んだそうです。」
アルマの質問にレイラが答える。
「そうかぁ。前途多難ね。」
ローナがレイラに言ってくる。
「ん~・・・うちのスミスにウィリアムの一目ぼれ病が少しでもあればなぁ・・・」
「いや、あれは大変だから感染させないようにしないとね。
それにしてもここで動けないなら・・・次はどうするべきかしら。」
「「次何しようか?」」
妃達は楽しそうに歓談するのだった。
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アズパール王が王都守備隊総長やクラークと話をしていた。
「ふむ、エイミーはダメだな。」
「陛下、それは言ってはいけないでしょう。
あのように緊張されては満足に話も出来ないでしょう。」
「まったくですね。
いきなりあのような場を設けても話せる物ではないでしょう。」
「・・・どうなるかな。」
「さて。若い者同士で語り合えたら良いのですけどね。」
「あれでは進展はなさそうですね。
これは寄宿舎での生活で仲を深められたら良いのでしょうけど。
さて。どうなるかは私達ではわからないでしょう。
当事者達で何とかして貰うしかないですよ。」
「そうだなぁ。」
大人たちがエイミーの行動に興味津々なのだった。
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