第760話 立食会。2(何やってるの。)
武雄達は立食会に戻って来ていた。
「タケオ様、お仕事どうでしたか?」
アリスがすぐに近寄って来て聞いて来る。
「ええ、簡単な話合いをしましたよ。
これと言って話す内容でもないですけど・・・」
武雄が苦笑しながら言ってくる。
「そうでしたか。」
アリスが笑顔を向けて言ってくるのだが、武雄はアリスが居たであろう場所が気になる。
ちなみにジェシーはいつの間にか他の貴族達とテンプルと共に話しているし、レイラはウィリアムとアルマと一緒にこちらも街の者と話している。
「「「「・・・」」」」
子供達は黙々とお菓子を食べているのだ。
「で、あれは?」
武雄が目線でアリスに聞いて来る。
「悪だくみの一環なのですが・・・。」
アリスはそう言いながら「タケオ様、助けて?」と目で語りかけて来る。
「状況が掴めませんが・・・エイミー殿下にクリナ殿下、アン殿下にスミス坊ちゃん?
共通するのは未成年ですか。どうしてこうなっているのですか?」
武雄が考えながらアリスに聞く。
「殿下方は挨拶で動き回っているので、子供達は一纏まりにされたのですけど。
何も会話がなくて・・・」
「・・・天気の話でもすれば良いのに。」
「いや、タケオ様、どう切り出すのですか?」
アリスが聞いて来る。
「普通に、『今日はいい天気ですね。エルヴィス領はうんぬんかんぬん』と。」
「わぁ・・・ワザとらしいです。」
「切っ掛けなんてそんな物でしょう?」
「タケオ様、お願いします。
場を何とかしてください。」
「はぁ・・・まぁ・・・」
武雄が子供達の居る机に向かうのだった。
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エイミーはかなり混乱の極みに居た。
「さっきからこの机では会話がない?何を話せと?お菓子の味もわからないし!
これってどう周りから見られているの?お爺さまとか全然こないし!
スミスはすまし顔でお茶なんか飲んで!こっちに気をかけないの!?
・・・いや、ここでは私が一番年上か!?年下の男の子に何を期待しているの私は!?
・・・でも貴族の長男なら少しぐらい!・・・」
エンドレスで混乱中。
「何をしかめっ面してるのですか?エイミー殿下。」
武雄が机の横に来て話しかけて来る。
「あ、タケオ様、お仕事は終わったのですか?」
スミスが反応する。
「ええ。スミス坊ちゃん達はどうしてここに?」
「子供はここだそうで、大人しくしています。」
スミスが答える。
その言葉を聞きながら「大人しすぎでしょう!?」とエイミーがツッコミを心の中で入れる。
「そうでしたか。お菓子ばかり食べてはいけませんよ?
ジーナ。」
「はい、ご主人様。」
「適当に摘まめる物を持ってきてください。
アン殿下とクリナ殿下がお菓子しか食べていなそうです。」
「畏まりました。」
ジーナがその場を離れる。
「タケオさん、ちゃんとサラダも食べています!」
アンが抗議してくる。
「おや?お口の周りが・・・」
「はっ!?」
アンがすぐにナプキンで口を拭く。
「どのくらい食べましたか?」
「ス・・・スイーツは粗方食べました。クリナお姉様、あとは何でしょうか?」
「・・・お肉とスープでしょうか。
タケオさん、夜会の料理は美味しいですね。」
「クリナ殿下、美味しい物を食べられましたか?」
「はい♪毎日の料理もタケオさんのおかげで美味しく頂いています。」
「それは良かった。
お2人とも今日の料理に満足されていますか?」
「「はい♪」」
クリナとアンが頷く。
「ご主人様、お持ちしました。」
ジーナが5人分を持って来てエイミー殿下達の前に置き、古い皿をさっさと回収していく。
「おぉ、ジーナが見事に執事をしている。」
アンはジーナの手際の良さに感心して呟く。
「ふふ。うちのジーナは頑張り屋さんですからね。
父親のヴィクターと一緒にエルヴィス邸で学んで覚えてくれました。」
「良いなぁ・・・ジーナ、知り合いはいないの?
私にもジーナと同等の執事が欲しいです!」
「知り合いも何も・・・ははは。」
ジーナが苦笑する。
「こら、アン。我が儘を言ってはダメです。」
「そうですね・・・」
クリナの言葉にアンがシュンとする。
「なのでタケオさんにお願いして出向して貰いましょう。」
「おぉ!クリナお姉様賢いです!」
「いやいや。クリナ、アン、出向もダメですから。」
エイミーが真顔で言ってくる。
「えぇぇぇ・・・ジーナのような執事が欲しいです。」
「それは・・・これから育成していくしかないでしょう?
貴女達なら寄宿舎までに時間はあるし、これから募集をかければ良いじゃない。
何も他家の執事に出向して貰う事はないわ。」
「そんなぁ。
じゃあ・・・クリナお姉様、すぐに募集をかけないといけないですね。」
「そうですね。
ジーナに見劣りしない執事を作って同行させないと皆に示しがつかないわね。」
「・・・いや。クリナ、アン、示すも何もジーナは現状では1年しか寄宿舎に来ないし、貴女達とはそもそも被らないわよ。」
「絶対伝説化します!」
「そうそう。」
クリナの言葉にアンが頷く。
「何を根拠に言っているのよ・・・」
「だって今年はグレースお姉様が寄宿舎に入るのでしょう?
何もないわけないじゃないですか。」
「そこは・・・否定出来ないわ。」
エイミーがガックリとする。
「なのでグレースお姉様の執事とジーナの対決があるはずです!」
アンが物騒な事を言ってくる。
「・・・で、なんで貴女達の執事の話になるの?」
「だって・・・グレースお姉様の執事は負けると思いますから。
次に入る私達は王家の威信を復活させないといけないのです!」
アンが本気で言ってくる。
「・・・負けるって・・・何で争っているのよ・・・
それにいくらグレースでも貴族の執事に勝負を仕掛けるとは思わないわよ。」
「「・・・」」
クリナとアンが考えるが。
「絶対仕掛けますね。」
「うん、そうね。」
アンが宣言しクリナが頷く。
「・・・なんでそうなるのよ?」
「だって・・・スミスはアリス様の弟ですから。
誰だって興味はあるでしょう?」
「なら一番の権力を持っているグレースお姉様がやる気になるはずです。
『アリス様の力の片りんを見せろー』とか言い出すのは目に見えています。」
「なのでグレースお姉様の無理難題をスミスに代わりジーナがすると予想します。
そしてグレースお姉様の執事対ジーナの争いが頻発し、皆の伝説となるのです。」
アンとクリナが姉妹のように息ぴったりに説明する。
「・・・ないわよ。それはしちゃダメでしょう。
それにジーナが居る1年は私が居ます。
そんな事させないわよ。」
エイミーが頭痛を堪えるポーズをしながら言ってくるのだった。
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