第759話 立食会の裏で。3(報告。)
侵入者を穏便に帰し少し経つ。
武雄達は椅子に座り待機していた。
アニータとミルコはもう寝ています。
ヴィクターとジーナが机に向かい先ほどの経緯の報告書を書いている。
と宝物庫の扉が開き中から数人が出て来る。
「総長、どうでしょうか?」
椅子に座っていた武雄が立ち上がり話しかける。
「キタミザト殿、あれで十分でしょう。
外交局長、いかがでしたか?」
「まずはキタミザト殿、お疲れ様でした。
先ほどの内容で問題ないでしょう。
また先の彼が言った事も精査させて頂きます。」
「こちらとしては事前に概要は話し合っていましたが、少し多めに情報を渡してしまいましたか?」
武雄が聞いて来る。
「いえ、あの程度で済んで良かったです。
それにしてもエルフが金貨200枚から300枚ですか。
エルフはキタミザト卿の配下に2名いましたね。
おや?寝ていますか。将来が楽しみな豪傑ぶりです。
無料で・・・給金はありましたか。その程度で配下にしているのはキタミザト卿の運の賜物でしょう。」
外交局長がアニータとミルコを見て微笑む。
「部下を売る気はないですけどね。
・・・局長、予想以上に奴隷売買は面倒そうですね。」
「売られても困ります。
私達外交局の中でも奴隷の売買を実際に見た事があるのは現地に行った事がある数名でしょう。
その者の話と潜入している武官からの報告を元に奴隷という商売を想像し、対応策を練っているだけですが・・・結構大変そうです。
キタミザト殿、エルフは買いますか?」
「・・・農夫は欲しいですね。
エルヴィス伯爵とも話しているのですが、こう・・・現状の打開策が欲しいと。
エルヴィス領は立地に恵まれていませんので他種族でも何でも知恵が欲しいという所です。
それに私の考えでは執事と同様に25年契約で解除しますが・・・農業は25年で成果が出るのでしょうかね・・・契約後も住んで頂ける方を見つけられるのか、果たして根付いてくれるのか・・・」
「・・・エルヴィス伯爵領で打開策が見いだせれば全土に波及出来るかもしれませんね。」
「そうですね・・・成果を出したいですね。
穀物を他領から買わないぐらいにはしたいというのがエルヴィス伯爵の望みなんですけどね。
・・・まずは仕事のついでにエルフを探してみます。」
「はい。外交局もキタミザト殿が戻って来た際には協力をしましょう。
総長、キタミザト殿が渡した短剣は?」
「王家専属魔法師から貰った探査宝石付きなので手はず通り王都守備隊第一情報分隊が後を追っているでしょう。
少なくとも国境を越えるまでは追いかける手はずになっています。
彼らが越境後は半分を戻し、半分を潜入させ追いかけさせます。
ですが、あまり近づかないようにするので成果は乏しいかもしれませんが。」
「そうですか・・・とりあえず、報告を待ちましょう。
では、陛下の書斎の方は別の者が居ますからそちらに任せるとして。
キタミザト殿、一緒に立食会に行きますか。」
「もう彼らは来ないでしょうかね?」
「その時はその時でしょうけども・・・私としては来ないと思いますがね。
それにキタミザト殿は今回の立食の主賓の一角です。
あまり長時間抜けるのもいけないでしょう。」
「それもそうですね。」
武雄が席を立つ。
「アーキンさん達は交代が・・・あ、来ましたか。
では、お勤めご苦労様でした。
戻ってゆっくりとしてください。」
「はい、わかりました。」
アーキンが頷く。
「ヴィクターとジーナは部屋に戻ってくれて構いませんが、どうしますか?」
「いえ、私達は主の執事ですので立食会の会場の端に居ようかと思います。」
「そうですか。
疲れているなら戻っても構いませんよ?」
「何もなかったので疲れはしていません。問題ないです。
それと簡易な報告書が出来ました。」
ヴィクターがジーナが書いた物と一緒に武雄に渡す。
「わかりました。では一緒に行きましょう。
・・・こちらは総長に、こちらは局長にお渡ししておきます。」
武雄が中身を軽く見てからジーナが書いた物を総長に、ヴィクターが書いたのを外交局長に渡す。
「「頂戴します。」」
2人は中身を見てから懐にしまう。
武雄達は交代の警備兵と引継ぎをしてその場を後にするのだった。
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セイジョウとバロールが街道を走っている。
「あぁ!おっちゃんに嘘つかれた!
何で追手が居るのさ!?」
「いや、あの御仁は門を通る方法を教授したに過ぎず、追手がかからないとは言っていない。
敵国の城に侵入したのだ。追手は至極当然。」
「おぅ・・バロール、真っ当な指摘ありがとう!
そう言えばお前の方はどうだったの?」
「言いつけ通りに向こうの精霊2体と相対していましたが?」
「・・・相対した?・・・気を引けと言ったと思ったけど・・・」
「向こうがいきなり攻撃してきたので対応したまでです。」
「そう・・・まぁその様子なら負けなかったんだね?」
「ふん。所詮我らは精霊。
同格の者が相手なら負けない戦いは造作もない。」
「いや、お前神だろう?それで同格って何さ。」
「相手も神でしたが?」
「良く生きていたね。」
「私が本気になれば負けないのは当たり前!
それに向こうもこちらを本気で殺す気はなかったようですね。
なので軽く運動をしておりましたよ。
それにしても貴方はもっと私を勉強して欲しい物ですね。」
「関連文献ないじゃん!それに良くわからん!」
「・・・そうでしたか?
おっと、それにしても付かず離れず・・・上手い事で。
どこまで引き連れますか?」
「越境したら撒こう。それまでは堂々と街道を行く。」
「了解。」
侵入者と追手の無休憩のかけっこが始まるのだった。
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