第753話 国王と皇帝の会談。2(親子の対面。)
「失礼いたします。
第二研究所所長殿とそのご一行がお見えです。」
小広間に執事が入って来る。
「そうか。
顧問、よろしいでしょうか?」
「ん?・・・第二研究所か、構わぬ。
一行も入れてやれ。」
「はい。」
と執事が一旦下がる。
「皆さま、ご歓談中に失礼いたします。」
武雄が入ってきて一礼をする。
「総長。
すみませんがこちらを。」
アーキンが代筆をした手紙を武雄は王都守備隊総長に渡す。
「・・・そうですか。
これは少し後で話し合いましょう。
で、二研殿。どうしてこちらに?」
「はい。カトランダ帝国からの御使者が参られたとお聞きし、私の知り合いにカトランダ帝国出身の者が居ましたのでお茶でも出せたらと思ったのですが。
もう出されていましたか。」
「ん?キタミザト卿、どういう事だ?」
アズパール王がカトランダ帝国皇帝達に見えないように顔を武雄に向け楽しそうに聞いて来る。
武雄はその顔を見ながら。
「いえ、アズパール王国にもカトランダ帝国にもお茶はあるでしょうが、お出しする作法が違ったら困るだろうと思ったのです。」
「あぁ、なるほどな。
うん、その通りだ。私達はアズパール王国のやり方でお出ししてしまったな。
総長、これは由々しき事だな。」
「はい、顧問。
総司令殿、顧問殿、誠こちらの気が回らず申し訳ない。
二研殿、その者は連れて来ていますか?」
「はい。
入りなさい。」
武雄の言葉に扉が開きエリカが堂々とした歩調で入って来る。
その後ろからアーキン達が入室し、扉付近に立つ。
「え・・・」
「なっ!」
総司令とカトランダ帝国皇帝が絶句する。
その場の帝都護衛軍全員が固まる。
「ほぉ、綺麗な女性だな。
キタミザト卿、この方は?」
アズパール王がカトランダ帝国皇帝達に見えないように顔を武雄に向け、ものすごく楽しそうに聞いて来る。
「はい。
この方はエリカ・キロス殿と言います。
私がこの剣を新調しようとカトランダ帝国に行った際の帰りにカトランダ帝国東町で知り合った女性です。
ご両親の教育の賜物でしょう。所作が綺麗でして、教養もあり政策もわかる才女です。
アズパール王国に移住されるとの事で仕事を探されていたので、一緒に王都まで来た間柄でございます。
魔王国に面している3伯爵領の後ろにある小さい領地ではありますが新進気鋭の貴族の相談役の仕事が空いているのを王都で見つけまして、そこに応募され、この度めでたく採用となりました。
今は王都でいろいろ政策等々を詰めておいででしたが約1年後に異動をされる運びになっております。
キロス殿ならば、御使者にお茶を出す作法も熟知していると思いお連れしました。」
「ほぉ、そうか。
キロス殿、構わないか?」
アズパール王が朗らかに聞いて来る。
「はい!
御使者様、私めはまだまだ若輩の身ではありますが、何卒、よろしくお願いします。」
エリカが深々と頭を下げる。
「い・・いえ、そ・・・そうですか。
我が帝国からこちらに。そうですか。大変なご苦労があったのでしょう。
顧問、よろしいでしょうか?」
「うむ。構いません。
エリカ・キロス殿、緊張されるかもしれませんがゆっくりとされるがよろしいでしょう。」
「はい!・・・では。」
エリカ涙目になりながらお茶の用意を始めるのだった。
「アラン殿。
こちらの方は?」
「あ、そうでしたね。
キタミザト卿、こちらに。」
「はい。」
武雄がアズパール王の横に来る。
「カリスト殿、こちらは今年から新設した王立研究所 第二研究所 所長のキタミザト子爵です。」
「キタミザト卿、こちらはカトランダ帝国 帝都護衛軍 カリスト顧問です。」
「お初にお目にかかります。
この度、子爵位を頂戴し、第二研究所の所長に就任しました。
タケオ・エルヴィス・キタミザトと申します。」
「帝都護衛軍の顧問をさせて貰っています。カリストと言います。
こちらこそよろしくお願いします。
そしてこちらが帝都護衛軍総司令をしているアルヘンタ侯爵です。」
「キタミザト卿、お初にお目にかかります。
紹介の通り、カトランダ帝国 帝都護衛軍 総司令を拝命しているアルヘンタと申します。」
「はい。
アルヘンタ侯爵様、よろしくお願いします。」
武雄とカトランダ帝国皇帝と総司令が挨拶をする。
「お待たせして申し訳ございませんでした。
お茶でございます。」
エリカがカトランダ帝国皇帝の横に来て出されていた物を下げ新しい物に替える。
そして総司令の分も同様に取り替える。
エリカはそのまま扉付近まで行き立っている。
「・・・頂きます。」
カトランダ帝国皇帝がゆっくりと飲み始める。
そして飲み終えてカップを置こうとした時にカトランダ帝国皇帝の目に涙が出ていた。
「・・・いや、すみません。
美味しいです。先ほどのお茶も美味しかったですが、エリカ・キロス殿のお茶もなかなか美味しゅうございます。」
「あ・・・ありがとうございます。」
エリカは頭を下げていた。
「この歳になると涙もろくてなりませんな。
アラン殿、失礼をしてしまい申し訳ありません。」
「カリスト殿、構いません。
一杯のお茶で感動が出来るのです。これは素晴らしい事でしょう。」
「はい。
これは独り言になってしまいますが、少しよろしいですかな?」
「ええ、どうぞ。」
アズパール王がにこやかに言うのだった。
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