第752話 とんでもないのが来た。(ウィリプ連合国の御者。)
アズパール王とカトランダ帝国皇帝の歓談が始まる少し前。
武雄達が居る監視部屋にて。
武雄達はエリカの支度が完了するのを待っていた。
「・・・ん?」
武雄がスコープを覗き込みながら不穏な声を上げる。
「どうしましたか所長?」
アーキンはアニータとミルコの服装を確認しながら言ってくる。
「・・・アーキンさん、見てください。」
「どうしましたか?」
アーキンが武雄と席を変わり、スコープを覗く。
「これはまた豪勢な馬車ですね。
どこのでしょうか?・・・街の組合長達はまだでしょうから・・・ウィリプ連合国ですかね。
あ、降りてきましたね。
これは・・・嫁さんとの歳の差があり過ぎでは?」
アーキンが言いながら確認している。
「アーキンさん、そこではないですよ。」
「ん?・・・ではどこでしょうか?」
「御者台。」
「御者?・・・ん?」
アーキンがマジマジと見ている。
「どう思いますか?」
武雄が窓越しに馬車を見ながら言ってくる。
「他人の空似・・・で片付けられないでしょうね。」
「やはりそうですか。
まぁ、普通に考えればこういったイベント事で不祥事があれば国の面子は潰れますかね。」
「ですね。
そして立食をしている最中は各部屋が手薄であるというのもまた事実です。
あ、馬車は行きましたね。」
「・・・さてと、アーキンさん。私が言った事を書き取ってください。
どうせ陛下が居る部屋に行きますからそこで指示を貰います。」
「はっ!
すぐに準備をします。」
アーキンがその辺の紙とペンを持って来る。
「何て書きましょうか。」
アーキンは各準備を終える。
「・・・では、箇条書きで良いので書いてください。」
武雄の口頭説明をアーキンは書き取っていくのだった。
・・
・
扉がノックされ武雄が許可を出すとアリス達がやって来る。
武雄は小銃改1もしまい終わり移動できる状態になっていた。
「タケオ様、用意整いました♪」
「はい、おかえりなさい。
エリカさん、お綺麗ですよ。」
「うぅ・・・何だか恥ずかしいのですけど。」
エリカが顔を赤らめて言う。
「はは、それが当たり前だったのに不思議ですね。
さて、行きましょうかね。
アーキンさん達は私に随行しなさい。
アリスお嬢様とヴィクターとジーナはスミス坊ちゃんとジェシーさんと一緒に居てください。
たぶん貴族達の控室に居る可能性が高いかと思います。」
「はい、ご主人様。
先ほどもジェシー殿にはお会いしましたのでどこにいるかは知っています。」
「わかりました。
ではこの部屋からは撤収しましょう。」
「タケオ様、制服で行かれるのですか?」
アリスが聞いて来る。
「はい。立食の時は正装に着替えますよ。
良いお披露目でしょう。
それにアーキンさん達も同じ制服を着ていますからね。」
「なるほど。
では私はジェシーお姉様達とお茶でもしています。」
「はい、お願いします。」
武雄達が移動を開始するのだった。
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王城に隣接する馬車停留所。
「ふぅ・・・とりあえずここまで来たか。」
ルイ・セイジョウがため息をつく。
「・・・この後は詰め所で待機だったか?
・・・暇だな。」
眼帯をした男性がセイジョウに言ってくる。
「表向きはね。
でもお仕事をしなくちゃいけないんだよね。」
「する必要が?
ここは国の中枢。そうそう忍び込めないだろう。」
「それをするのが俺の仕事。」
「危険極まりないな。
それに・・・なんだか他に精霊がいるな。」
「わかる?」
「あぁ。まだ監視はされていないがな。」
「精霊相手には魔眼は使えないだろう?」
「・・・使えない訳ではないが効果が薄いだけだな。」
「困ったね。
精霊達の気をそっちに向かわせてくれれば後はやるよ。」
「そうか。
まぁ今回も殺害厳禁で撤退ありなんだったな?」
「そ。忍び込めるなら忍び込む。
人と遭遇しても殺害はダメ。撤退が義務。」
「・・・この任務する必要あるのか?」
「さぁ?上の考えなんてわからないさ。
俺は言われた事をするのみ。
じゃあ、まずは皆を寝かせて貰えるかな?」
「それは御者の詰め所に行った時にする。
食べ物を取っている際にすれば対外的にも良いだろうからな。」
「そぉ。お願い。
じゃあ、詰め所にまずは行って様子見だね。
よろしく頼むよ。バロール。」
「ああ。任せろ。」
2人が詰め所に向かうのだった。
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王都内を馬車で移動中の4名は。
「クリフ殿下!ニール殿下!おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「殿下方!おめでとうございます!」
「誠におめでとうございます!」
「クラリッサ殿下!リネット殿下!おめでとうございます!」
「何と素晴らしいのでしょう!!王国に繁栄を!」
etc
右に手を振り、左に手を振り、また右に手を振り・・・
街の民達の歓迎に向かって笑顔と手を振るのを繰り返している。
「・・・やばい、顔が引きつりそうだ・・・」
「ニール、我慢だ。」
「わかっています兄上。
リネット・・・平気か?」
「・・・殿下、頬の筋肉が・・・限界です。」
「リネットお姉様!まだ半分ですよ!?」
「クラリッサさん・・・私には無理です・・・」
「何を弱気な事を!あ!下を向いてはいけません!」
「うぅ・・・これ拷問だぁ・・・」
「まだ・・・半分か・・・
ニール、大変だな。」
「兄上、どうやって休憩しますか?」
「そうだな・・・交代で休めるように考えないといけないな。」
「リネットお姉様!もう少しで殿下方が何か考えてくれます!
我慢です!」
「あぁ・・・殿下ぁ~・・・」
「待て!まだ考え付いていない!
もう少し我慢しろ!」
4人はもはや一心同体の苦行をしている気分でかなり弱気になっているのだった。
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