第751話 国王と皇帝の会談。1(つばぜり合い?)
アズパール王国王城の門に馬車数台が止まる。
中から数人が出て来る。
「カリスト殿、着きました。」
「総司令、私に殿は必要ないのではないかな?」
「いえいえ、帝都護衛軍の顧問ですので殿付けですよ。」
「そうか。それにしても久しぶりの旅は良いな。
他国というのはまた良い物だ。
ここも数十年ぶりか。」
「・・・あの時は私も一緒でしたね。
ここの城はいつ見ても良いですね。」
カトランダ皇帝と総司令が城を見上げる。
「あぁ、流石はアズパール王国だ。
綺麗にしている。街並みも丁寧に作られ、街に活気がある。
良い国家だ。」
「我らもそうであると思いますが?」
「当たり前だ。だが違う国には違う国の考え方があり、習慣がある。
それを・・・あいつらはどうして認められんのだろうな。」
「・・・今言っても意味はないでしょう。」
「まぁ・・・そうだな。
今は旅を満喫せねばならんだろう。」
一行は王城の玄関を目指すのだった。
・・
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王城の玄関に統一された制服を身に着けた一団が待っていて1人が近寄って来る。
「帝都護衛軍総司令殿とお見受けします。
王都守備隊総長のベレスフォードです。
お待ちしておりました。」
「ご丁寧にありがとうございます。王都守備隊総長殿。
帝都護衛軍にて総司令をさせて頂いているアルヘンタと言います。
この度はアズパール王家の挙式をなされたとの事。
皇帝陛下の書状をお持ちいたしました。」
「はっ!ご足労頂きありがとうございます。
書状については後の立食会の際にアズパール王国国王陛下にお渡し頂きますようお願いいたします。
立食会まで我らがお相手させて頂きます。
最古にして最強と言われる帝都護衛軍のお話をお聞かせください。」
「いえ、私共も名高い王都守備隊のお話を聞き見聞を広めたく思っております。
本日はよろしくお願いします。」
「はっ!
では、控室にご案内いたします。」
帝都護衛軍一行は王都守備隊と共に控室に向かうのだった。
・・
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「皆、お連れしたぞ。」
「「「お待ちしておりました。」」」
帝都護衛軍が連れて来られた扉を開けると中に居た者達が頭を下げ待っていた。
その中でアズパール王とウィリアムは頭を下げず一番奥の席で立って出迎えていた。
「さ、帝都護衛軍総司令殿。奥で我らの顧問もお待ちです。
あと席は自由となっております。
立食会までごゆるりとお過ごしください。」
「はい、わかりました。
皆の者、お言葉に甘えよう。」
「「はっ!」」
部下達はそう言うが奥に一緒に向かう。
「・・・いや、お前達・・・ゆっくりしておけ。」
「・・・では私と2名がお傍に付きます。」
と後ろに居た者が言う。
「わかった、それで良い。
王都守備隊総長殿、我が部下が申し訳ありません。」
「いえ、私が貴国に行った際も同じ苦労があるかと思われます。」
「お心ありがたく。
では、顧問殿にご面会をお願いいたします。」
「はい。こちらになります。」
・・
・
総司令とカトランダ帝国皇帝は連れて行かれた先の席に居た人物を見て顔には出さないが驚く。
昔より歳は取っていたがアズパール王が待っているのを認識する。
「帝都護衛軍 総司令殿。
ご紹介いたします。こちらが王都守備隊アラン顧問になります。」
「顧問。
カトランダ帝国 帝都護衛軍 総司令殿をお連れ致しました。」
「うむ。
・・・はじめまして。私は王都守備隊で顧問をしているアランと申します。
こちらは副顧問をしている息子のウィリアムと言います。
よろしくお願いします。」
「はっ!
はじめまして。カトランダ帝国 帝都護衛軍 総司令を拝命しているアルヘンタと申します。
こちらが我ら帝都護衛軍の顧問をしているカリスト殿になります。」
「「「よろしくおねがいします。」」」
アズパール王とウィリアム。カトランダ帝国皇帝が挨拶をするのだった。
・・
・
王都守備隊総長と帝都護衛軍総司令は歓談をしている。
その横でアズパール王とカトランダ帝国皇帝も歓談をしていた。
「この街に来るのはもう数十年ぶりになりますな。」
「そうですか。帝都護衛軍が来られたのは第1皇子・・・今の陛下の挙式でしたね。
あの時から比べて街並みは少しは綺麗になったと思うのですが。」
「いえ、今も昔もこの街もこの城も綺麗でいらっしゃる。
流石はアズパール王国王都ですな。
我が帝都にお越しになった事はありましたかな?」
「はい。僭越ながら私も数十年前の今の皇帝陛下の挙式の際に同行させて頂きました。
我らとは違う趣があったかと・・・厳格という言葉が似あう街並みに流石、帝国だと感じ入った覚えがあります。」
「そうですか。
いやぁ、他国の者からそう言って頂けると守ってきたかいがありますな。」
「私共もです。
城は国の顔、いろいろな趣があって良い物です。」
「まったくですな。
私はウィリプ連合国に行った事がないのですが、アラン殿はありますかな?」
「いえ。お恥ずかしながら私も行った事はないです。
ですが、あそこは数国が集まり1つの国家を形成していると聞き及んでおります。」
「はい。
私もそう聞き及んでいます。
先ほどのアラン殿の言葉通りならその国ごとに城や街並みが変わっていると捉えるべきなのでしょうかね?」
「そうですね。
私の退官間際に職権を利用して見に行きたい物ではありますね。」
「はは、職権を利用ですか。」
「ええ、個人でいくと費用が馬鹿にならなそうですからね。
なら国費が使えるうちに行きたいとは思います。
カリスト殿はどうお考えで。」
「ふむ・・・そうですな。国費というのは良い考えですね。
私も高齢ですからな。5年以内に見に行きたくは思いますね。」
「そうですか。
ふむ・・・なら私もカリスト殿のご連絡を待って一緒にウィリプ連合国に行ってみましょうかね。」
「ほぉ、一緒にですか。」
「ええ。
ですが我が方から同じ経路を行っても面白くはないでしょう。
ウィリプ連合国にはカトランダ帝国側に1本、我らアズパール王国に向け2本ありますが、私は海側の城を見て行きどこかで落ち合いましょうか。
その時に山側の城の話をお聞きさせて頂きたい。」
「なるほど、それは面白いですな。
では私から伝令を差し向けますのでそれでわかるでしょう。
それに・・・うんうん。私は山側の城を見て行きましょう。
正直な話、海側の城も見てみたいとは思いますが、そこまで足を延ばすのも時間的に猶予がないでしょうしね。
旅の資金も持ちそうにないですからな。」
「確かに。私も5年をかけて資金を集めましょう。そのぐらいあれば何とかカリスト殿と合流する費用が見繕えるでしょう。
伝令を寄こしてくれるのであれば伝令と同数でお待ちしておきます。」
「では伝令は・・帝都護衛軍の者を行かせましょう。
確実にお伝えしなくてはいけませんのでな。」
「それにしてもお金が沸いてくるのであれば良いのですけどね。」
「全くですな
皇帝陛下も悩んでおいでです。」
「私達の陛下もそうです。
資金繰りが大変だと言って文官達と頭を絞っているようです。」
「お互いに運営は大変ですな。」
「ええ。全くです。」
アズパール王とカトランダ帝国皇帝が苦笑している。
と控室の扉がノックされるのだった。
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