第750話 とんでもないのが来た。(カトランダ帝国の使者。)
「・・・はぁ・・・前から2番目が父上です・・・」
エリカが小銃改1のスコープを覗き終わりガックリとさせる。
「極大のが来ましたね。
という事は先頭が帝都護衛軍の指揮官ですか。」
「ええ。
先頭は帝都護衛軍総司令、セルソ・アルヘンタ侯爵です。
帝国には対外方面軍として第1から第3軍まであります。
その実働隊とは格、実力が違うのが帝都護衛軍です。
アズパール王国では王都守備隊でしょう。
帝都の警護で皇帝直属の兵、その気になれば全軍相手でも立ち回る最強兵団となっています。
今回来ているのは・・・近衛中隊の隊章・・・なんて物が・・・」
エリカはため息交じりに言ってくる。
その間にアーキンとブルックがスコープで確認する。
「という事は・・・あの全員がエリカさんをわかりますか?」
「・・・全員顔見知りです。
そして私が隠れていないのを知っている人達です。
中隊長が居ましたから・・・中隊本体が来ていますかね。」
「中隊ですか?」
見終えたブルックが聞いてくる。
「総司令の次が父上ですが・・・その周りが中隊長と小隊長2名と近衛第2小隊?
なにこれ・・・第1小隊長がいないとなるとどこかの街で中隊が待機?
何を考えているの?本気で怖いわ・・・」
エリカが再びスコープを覗きながら確認するも顔を強張らせながら言ってくる。
「・・・アーキンさん。
手紙を書きます。すぐに陛下に届けてください。」
「はっ!」
武雄が紙に報告を書き始めるのだった。
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陛下の書斎にて。
「どうだ?凛々しくなったか?」
アズパール王が王都守備隊の制服を着てウィリアム達に見せていた。
「いや、お義父さま。またするのですか?」
アルマがため息交じりに言う。
「うむ。楽しそうだからな!
ウィリアム、どうだ?」
「格好は他の隊員と変わりませんよ。
それにしてもクリフ兄上が聞いたら怒りますよ?」
「だな!
だが、向こうから皇族がくるのだ。
我が対応するしかないでろう!」
「いや・・・国のトップがいきなり行っても・・・
まぁ今頃エリカさんが見ているから誰が来ているかわかっていそうですけど。
で、ウィリアムも出るの?」
レイラが聞いて来る。
「んー・・・そうしようかな。
準備は間に合うのかな?」
「ふふ、ウィリアムの分も用意してあるぞ!」
「準備万端ね・・・」
アルマがため息をつく。
と書斎の扉がノックされ、いつも通りの手順で許可を出すとアーキンが入って来る。
「陛下、殿下方失礼いたします。
所長よりの報告書になります。」
「うむ、来たか。」
アズパール王がアーキンから手紙を受け取りメガネをかけて中身を見る。
・・
・
「・・・ふむ、これは・・・」
アズパール王が悩む。
「良いだろう。
タケオに伝えろ。『許可する。タイミングは任せる』とな。
我とウィリアムも出る。場所は王城内の第2小広間。
第一と第二近衛、第二魔法、第二情報が居るとな。」
「はっ!すぐにお伝えします。」
アーキンが退出していった。
「伝令。」
「失礼いたします。」
アズパール王が扉の向こうから警備兵を招き入れる。
「総長に伝えよ。
3-2にて対応するとな。」
「はっ!すぐに。」
伝令も退出していく。
「父上、タケオさんから何と?」
「エリカの父親だそうだ。
さらには使者は目録通り帝都護衛軍総司令。
周りを固めるのは近衛中隊第2小隊だそうだ。」
「そうですか。
で、タケオさんは何をすると言ったのですか?」
「エリカを連れて来るとな。」
「・・・大丈夫ですか?」
アルマが言ってくる。
「ふむ。
今日来ている面々はエリカが隠れていないのを知っているそうだ。
なので、タケオは『今生で最後になるのでしょうから会わせましょう』とな。」
「そうですか・・・これで動いてしまうかもしれませんよ?」
レイラが聞いて来る。
「構わん。
それに偶然会ってしまって勘繰られるぐらいなら正々堂々と会わせた方が良い。
このぐらいの事で揺らぐと思うならそもそもエリカが越境した時点で処理している。
我が手元に置いたのだ。責任は我が取れば良い。
・・・それにエリカは親の死に目には会えんだろう。なら一言二言伝えさせるのが人情だと我は思う。」
「父上がそう考えるなら僕達は従います。
僕達も親に会わせたいとは思います。
歓談は出来ないでしょうが・・・タケオさんが段取りを?」
「ああ、上手くするだろう。
あとは流れに任せれば良い。」
アズパール王が頷く。
「じゃあ、僕も着替えますか。
アルマとレイラはどうする?」
「んー・・・どうしようかな?
レイラ、どうする?」
「ウィリアムは戻って来たら正装しないといけないだろうし・・・私達の執務室に戻ろうかな?」
「そうね、そうしましょう。
ではお義父さま、ウィリアム。私達はこれで。」
アルマとレイラが席を立って退出していくのだった。
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武雄達が居る監視部屋にて。
アーキンの報告を受け武雄が計画を皆に説明していた。
「なっ!?」
エリカが固まっている。
「タケオ様、陛下は許可をしたのですね?」
「ええ。さっきアーキンさんが伝えてくれました。
なら行動しましょう。
ですが、エリカさんはあくまでカトランダ帝国から来た高位の女性という立場を変えず。
皇帝陛下の子ではありません。
なので言葉には注意してください。」
「うぅ・・・配慮は嬉しいのですけど・・・大丈夫なのですか?」
エリカが聞いて来る。
「陛下が良いというなら従うまでです。
それに王都守備隊ならエリカさんの出自はわかっているでしょう。
ブルックさん。」
「総長と第二情報分隊長に報告した際に言っていますので問題はないかと。
それに陛下が良いというなら我ら王都守備隊は絶対です。」
ブルックが言ってくる。
「ふふ。
なら平気ですよ。
さてと・・・アリスお嬢様、ブルックさん、ジーナ。」
「「「はい。」」」
「エリカさんを華美にならない程度に着付けていらっしゃい。」
「はっ?」
「「「はい♪」」」
「場所はここに集合で・・・レイラさんに許可は貰いましょうかね。
さてどこにいるか・・・」
「先ほどは陛下の書斎にいました。」
アーキンが言ってくる。
「・・・ならブルックさんは陛下の書斎に寄ってレイラさんに確認と衣装を借りれるように依頼を。
アリスお嬢様とジーナは第3皇子一家の執務室に向かって待っていましょう。」
「「「わかりました!」」」
3人が動き出す。
「え?・・・私はこのままでも」
「はい、行きましょう。」
エリカがアリスに引っ張られて扉に向かう。
ジーナが先導し、扉を開け出て行ってしまう。
「では、私も早急に動きます。」
ブルックも出て行く。
その場には男性陣とアニータとミルコが残る。
「所長はどうしますか?」
「折角なので制服にでも着替えますかね。」
「あれで出るのですか?」
「ええ、制服ですし。
立食時は正装ですかね。」
「所長も大変ですね。」
「良いお披露目です。そう言えば総長から道すがら言われましたが、襟章は許可が下りたそうです。
なので王都守備隊と第一研究所と第二研究所は同じ襟章となりました。」
「そうですか。」
アーキンがホッとさせる。
「では着替えて待っている間、到着される他の方々のご尊顔でも確認しますかね。」
武雄がリュックを漁り始めるのだった。
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