第749話 待機中。(勉強方法なんて人それぞれ。)
ここは王城の城壁と玄関が一望できる3階の部屋。
当初は1階に用意されていたが武雄が「スコープがあるのでもっと見つかり辛い場所にして良いですよ」と言ったので他の部屋に変えて観察していた。
「んー・・・アリス殿、そこは厳しいです。」
「ふふん。タケオ様に負けていますが、エリカさん相手なら何とか勝てそうです。」
アリスとエリカはまだリバーシに興じている。
現在は4勝2敗でアリス先行です。
「お父さま、これは・・・あれ?・・・」
「ふむ。ジーナ、その先は言ってはダメですね。」
「そうですか・・・」
「何!?え?何?ジーナちゃん何があるの?」
アリスがジーナを見るが。
「いえ・・・何でもありません。
あ、アーキン殿達のお茶を変えないと。」
ジーナがそそくさとその場から逃げる。
「むぅ・・・何か見落としが・・・・」
「・・・ここですか・・・」
エリカが駒を置いて挟まれた駒を自分の色に変えていくのだった。
「所長~・・・勉強は嫌いです。」
「頭が痛いです~・・・」
アニータとミルコは武雄に先ほどまでの勉強の愚痴を言っていた。
「そうですか、知らない知識は大変ですね。
でもですね、アニータ、ミルコ。今頑張らないと後々皆さんのお役には立てませんよ。
なので、少しずつでも構いませんから、良く話を聞いて自分なりに解釈をしていきなさい。
もし解釈があらぬ方向に行ったのなら他の人達が訂正してくれますからね。
訂正されたら意固地にならずにちゃんと自分の考えを修正するのですよ?」
「うぅ・・・勉強って辛いんです。
楽しくする方法はないですか?」
「ですです。」
アニータとミルコは何か楽な方法はないか聞いてくる。
「ないですね~。
勉強が好きになる方法は多種多様です。
私の場合は楽しみを生み出して嫌になる心を抑えていましたね。」
「楽しみを生み出す?」
ミルコが聞いてくる。
「ええ。
習っている時に何か1つ面白い事を見つけると割と楽しかったですね。
例えば・・・地理とかなら果物の生産分布を文字や表だけでなく実際に絵に起こして見たり、規則だったら頭の中で擬似想定物語を作ってみてワザと規則違反をさせてみたり・・・
まぁそれは私のやり方なので自分のやり方を見つけるまでは苦労をするかもしれませんね。
この勉強方法が良いというのは試す価値はありますが、それが本人に対して有効かという
ことではありません。
なのでいろんな方法を見聞きして試して、自分に合った物を探すしかないですね。」
「ん~・・・とりあえず所長が言った面白い事を見つけてみます。」
「僕もです。」
アニータとミルコが納得できないような表情をしながら言ってくる。
「所長、例えば規則違反とはどんな事をさせるのですか?」
ブルックが聞いてくる。
「そうですね・・・例えば・・・就業規則なんてのはどうでしょうか。
・・・ジーナ、就業規則で仕事で知り得た内容を他言しないという項目があるのでしたね?」
「はい、ご主人様。
知り得た内容を故意に流し、主家に対し不利益をもたらしてはならないとあります。」
「では・・・想定で文官が他国に対して、そうですね・・・面倒ですから私の研究内容を流出させたとしましょう。
ここで問題になる規則は何でしょうか?
アニータ。」
「ええええ・・・んー・・・
就業規則の1文の違反だけど・・・えーっと・・・他だと守秘義務規定ですか?
確か・・・秘密の漏洩を禁止する項目だったはずです。」
「では、情報漏洩事態を防ぐ為に私達が必要な物はなんでしょうか。
ミルコ。」
「・・・情報を言う言わないは規定で縛っているから・・・
あ!建物内の研究内容の資料の閲覧記録の管理ですか?」
「そうですね。
という感じで想定をしていきます。
まぁこういった『なぜその規則があるのか』という想定物語を作って覚えるのも一つの手です。
もちろんそんな事をしなくても文をそのまま覚えるのが一番簡単ではありますけどね。
私はなかなか覚えられなかったのでそういった余計な付け足しをしていくしかなかったのですけど。
アニータもミルコも自分なりの勉強方法を見つけていきなさい。」
「「は~い。」」
「ちなみに所長、所長なら情報漏洩をさせない方法はありますか?」
「そうですね・・・閲覧を必ずうちの試験小隊の1人と一緒にさせます。毎回違う人でね。
それだけで抑止力としてはあるでしょう。
情報を漏洩させないと本気で思うなら見た後で資料は全部焼却廃棄し、頭の中だけで管理すれば良いのですよ。
ですが、人は忘れる生き物ですからね。
後世に残したい、他者に見せたいと思うなら資料を見るのに何か暗号を必要とするとか・・・
ですが、どんな方法を取っても完全に防止は出来ないでしょうからね。
なら見づらくさせるとかの方法しかないですよ。」
「所長でも無理ですか。」
「無理ですね。
だからこそいち早く製品化して契約等で縛ってしまうのが一番です。
そうすれば類似品は出辛くなるでしょう。」
「そこに行きつくのですね。」
「ええ。どうせ見られるのなら堂々と先んじて公表し、有無を言われる前に既成事実化させ、利益を貰う。
それしかありませんよ。」
武雄が苦笑するのだった。
と、城門に豪勢な馬車が数台到着するのが見えるのだった。
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