第747話 82日目 挙式。
王城の大広間にて厳かに挙式が行われていた。
指輪の交換や宣誓書にもサインを終わり終盤に差し掛かっている。
アズパール王を前にクリフ、クラリッサ、ニール、リネットが跪いている。
「今ここに新しき妃を迎え王家のひいては王国の繁栄の一翼となる事を誓います。」
「今ここに新しき家族を迎え王家のひいては王国の増々の発展をここに誓います。」
「「王家の一員として国家の安寧と繁栄の礎を築かんと努力いたします。」」
リネットとクラリッサがクリフとニールと一緒に片膝立ちをアズパール王の前でしながら宣誓する。
「うむ。
クリフ、クラリッサ、ニール、リネット。
まずは良き夫、良き妻、良き親になるよう互いに努力しあう事を望む。
そして10年後、20年後・・・多くの年月が経ってこの国の誰に聞いても『多くの人々を幸せにさせた』と言われる施政者になる事を祈っている。」
「「「「はっ!」」」」
4人は深々と頭を下げる。
「さて、1つ話をしよう。
今から約1000年前、当時のカトランダ帝国皇帝の弟君に国の東側を任せる事にした話だ。
当時、この地は各種族が入り乱れ乱戦をしていた。
特に人間種と魔物との戦いが頻発していたであろう時代。
この地に入った初代アズパール帝国皇帝はこの地の民を愛しみ、開墾を奨励し、魔物を遠ざけ、遠ざけた地をさらに開墾をしていく政策を取った。
度重なる戦い。蹂躙される村や街・・・度重なる苦難に打ちひしがれていた民は初めてに近い平和を喜び、初代アズパール帝国皇帝を讃え、慕ってくれた。
そして国中から人が集まり発展を始める。
王家があっての民が居るのではない。民が認めてくれて、支えてくれるから我々は王家で居られるのだ。
我らが王家と言う名に特別な価値があると勘違いしてしまえば、それはいつか自らの首を刎ねる事になってしまうだろう。
間違えてはいけない。民達が居て、手助けしてくれる兵士や文官や貴族が居て、その者達に支えられているからこそ、我らは王家で居られるのだ。
常に民の幸福を願い、余暇で自身の人生を楽しむ、そういう道を歩んで貰いたいと願っている。
・・・以上だ。」
アズパール王が談話を終える。
「臣下代表、挨拶。」
議事進行者が言うとオルコットが前に出て最敬礼をする。
「アズパール王国に属する文官並びに武官を代表し、陛下並びに王家の方々に奏上いたします。
第1皇子夫妻、第2皇子夫妻の挙式がつつがなく執り行われた事、新年より慶事が続き誠に慶ばしく思います。
陛下の理想を実現すべく、古くからある慣例に囚われず、新しき風を入れる事を恐れず、新たな発見を歓びと考え我らは業務を遂行する所存にございます。」
オルコットが言い終わるとクラークがオルコットの横に並び最敬礼をする。
「アズパール王に認められし貴族39家を代表し、陛下並びに王家の方々に奏上いたします。
昨日の新しき新貴族の誕生に続き、ご子息方の挙式がつつがなく執り行われた事、誠に慶ばしく思います。
我らはあらゆる災難からアズパール王国領土を堅持し、より多くの国民を幸福に導くよう努力し、国家繁栄の礎を築いていく所存にございます。」
「うむ。
アズパール王国はまだまだ発展途上だ。
苦難の時もあるだろう。だが我らには前途洋々たる未来がある。
昨日よりも今日、今日よりも明日が良き日になるのだと我は信じている。
全ての者達よ、常に前を見よ。そこにきっと未来が待っている。
本日は誠に喜ばしい日だ。」
アズパール王に全員が最敬礼をし。
「「「アズパール王に忠誠を!アズパール王国に繁栄を!」」」
と唱和する。
「陛下並びに王家の方々が退出されます。」
アズパール王を先頭に王家の者達がゆっくりとした歩調で退出する。
・・
・
「以上を持って挙式を終わります。
この後、夕食時に大広間にて立食の会が催されます。
それまで各自はごゆるりとお過ごしください。」
議事進行をしている者が予定を言ってくる。
「ん~・・・おわりましたね。」
「ええ、二人とも綺麗でしたね♪」
武雄が感想を言う横でアリスが楽しそうに言ってくる。
「ジェシーさん、式の流れはどこもあの感じなのですか?」
武雄がジェシーに聞いてくるの。
「ん?あぁ、そうね。タケオさんはわからないわよね。
どこもそうよ。
入場して、宣誓して、指輪を交換しあって、家長が挨拶をして、さらにもう一度宣誓して、家長が祝辞を述べて終わりね。
タケオさん、段取りわかった?」
ジェシーが苦笑しながら言ってくる。
「まぁ、だいたいは・・・宣誓が2回なんですか。」
「そうよ。さらにこの後の立食が大変なのよ。
私達は組合長や局長達程度だけど王家だとさらに他国からの使者や貴族の夫妻が来るからね。
それにこの後通りで街の民にお披露目でしょうね。」
「外に行かせている間に会場準備と。
段取りが滞りなく行っているのですね」
武雄が頷く。
「はぁ・・・お披露目は大切な事なんですけど、警備が大変なんですよね。」
武雄の後ろからマイヤーがため息交じりに言ってくる。
「おや?マイヤーさんと王都守備隊総長殿?」
「はい。所長、お疲れ様です。」
「キタミザト卿、お疲れ様です。
この後お時間はありますか?」
「お二方とも忙しいでしょうに・・・
私の予定は・・・」
武雄がアリス達を見るが首を振っている。
「ないですね。」
「ではすみませんが二研殿、お付き合い願います。」
王都守備隊総長が頭を下げる。
「はい、わかりました。
ではアリスお嬢様、スミス坊ちゃん、ジェシーさん、また後で。」
「はい。わかりました。
いってらっしゃいませ。」
「「いってらっしゃい。」」
武雄はアリス達に見送られて移動するのだった。
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