第746話 81日目 武雄とアリス。ヴィクターとジーナ。
武雄達は部屋に戻って今日1日の疲れを癒していた。
湯あみもさっさと終わらせ、チビッ子達も寝かせ、今は寝る前のリバーシ中。
「・・・今日も何事もなく終わりましたね。」
「そうですね。大きい事はなかったですね。
それにしてもなんだか異様に長く感じましたけどね。」
武雄とアリスはリバーシをしながら言っている。
「とりあえずこれで正式にタケオ様は貴族ですね。」
「ええ、貴族用のプレートが貰えましたしね。
あ、さっきヴィクターから書類を預かっていましたかね。」
武雄がリュックから取り出しその場で書類を読みだす。
「・・・タケオ様、余裕ですね。
ふふ、私が勝ちを貰いますよ。」
「さて、それはどうでしょうか。
ん?・・・爵位報酬??」
「タケオ様、どうしましたか?」
アリスが聞いてくる。
「いえ。貴族報酬とは別に爵位に応じて報酬が出るそうで・・・あぁ他の者には口外厳禁とありますね。」
「そうなのですね。
いくら増額なのですか?」
「男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵の順に爵位報酬という形で増額されるそうです。
今回は子爵なので金貨100枚増えているそうです。他の増加額は書いていないですね。
・・・他には、公爵は元王家、侯爵は不在という事が書かれていますね。」
「そうなのですね。
確か伯爵家は魔王国に面した3伯爵と第1皇子領の隣の1つと第2皇子領の隣の1つでしたかね。
子爵が第1皇子領の隣の2つと第2皇子領の隣の1つだったかと。
領地持ちで男爵は王都の壁と言われている方々と、今回の新人貴族ですね。」
アリスが言ってくる。
「爵位の明確な規定はあるのでしょうか?」
「私ではわかりませんね。
前にスミスが言っていましたが、領地が大きいから伯爵なのではないので・・・
任命する王都側で何かしらあるのではないでしょうか。
それに王都に対して良い事をすればその名が他の者達にも聞こえます。
噂が聞こえる者が低位だとは聞かないですね。」
「まぁ・・・上になりたいならなればそれでも良いのでしょうね。」
「そうですね。
タケオ様は伯爵や侯爵になりたいですか?」
「ん~・・・子爵でさえ言われ慣れないのですけどね・・・
まぁお給金が増えるというのは耳に心地良いですけど、その分責任や判断する機会も増えるという事です。
私は今の所は研究所を軌道に乗せる事に全力を傾ければ良いでしょう。
その結果上げられるのならそれはそれで受け入れますが、何も成果を出していないのに爵位の上下だけを気にする必要はないと思いますね。」
武雄が朗らかに言う。
「ですね。
タケオ様はそう言うと思っていました。」
アリスが嬉しそうに言う。
「後々、私を評価する人がどう思うかでしょうからまだ考えなくても良い事だと思いますよ。
と・・・あと数手で終わりですね。」
「あぁ!いつの間にか黒が少なくなっています!
むぅ・・・ここ・・・いや、こっちが勝ちに行けそうな気がします!」
武雄とアリスの寝る前の頭の運動をしていくのだった。
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ここはヴィクターとジーナの部屋。
就寝前のティータイム中。
「お父さま、さっきご主人様に渡していたのは事前に総監局から貰った書類ですよね?」
「そうだな。
あれには貴族報酬や収支報告の仕方等々が書かれていたな。」
「そこは見ましたけど。
子爵になると貴族報酬が違うのですね。」
「爵位により違いがあるのは当然だと思うな。
私だって伯爵だったから他の者とは違ったのだよ?」
「そうなのですか?」
「あぁ、そうか。ジーナには教えていなかったな。
魔王国では爵位によって王都への税率が変わっているのだよ。」
「税率ですか?」
「あぁ。だが一様に金銭や作物の税率というわけではないからなぁ。
隣のパーニは同じ伯爵だったから王都への税率も同じだしその辺は気にしなくて良いだろう。
まぁ爵位は対外的な格付けという意味もあるな。」
「そうなのですね。
さっきの内容だと伯爵様はご主人様と王都からの報酬が違うという事なのですね?」
「そうなるな。
それに伯爵様は領地運営をしているし、主は個人的に知識の対価を貰っている。
そこからの収入が双方にあるはずだから一概には多い少ないは言えないだろう。」
「そうでしたね。
ご主人様、また何か考えているのでしょうか?」
「さて・・・誰も見向きもしない事を事業化する才を持っていそうだからな。
まだまだ何か考え付くのだろう。」
「農作物、酒、料理、服、筆記具、玩具、武器、養殖に船・・・ご主人様の発想はどの領分でも通用しますね。」
「まったく・・・天才だな。
さらには部下に戦闘を担う王都守備隊、研究の補佐は同郷のスズネ殿と王家専属魔法師と呼ばれる一流。
人脈も陛下に王家、さっき会った王都の局長達と互角に渡り合え今後も話をしていくのだろう・・・
そこいらの貴族では太刀打ち出来ないであろう人員を揃えて人脈を構築しているな。」
「・・・でも一番その辺の凄さがわかっていないのがご主人様なのですけど。」
「・・・そうだな。
それが一番問題であり、雇われている私達が気楽でいられる原因なのだが、主らしいというかなんというか・・・」
ヴィクターとジーナが微妙な顔をさせる。
「でも威張っているご主人様も想像できないですね。」
「そうだな。
主はあのまま進んでいくのだろうな。
それに威張っている者がああも発想が出来るとは思えないな。」
「ご主人様は基本謙虚ですけど、言う事が極稀に辛辣な時がありますよね。」
「あれは言うべきタイミングで言っているからな。
特に交渉時の脅しの際は有効な手ではある。
毎回しないからこそ威力がある物だな。」
「そうなのですね。」
「毎回していると通用しないな。
まぁそれもわかっていてしているのだろうが。」
ヴィクターがため息をつく。
「お父さまが伯爵だった時に部下に欲しいですか?」
「扱い方がなぁ・・・今の上司なら付き従うのは楽だが、部下となると・・・
ん~・・・難しいな・・・」
「そういった意味では伯爵様は度量が大きいのですね。」
「数日しか一緒に居なかったがあの御仁は機転と判断力、主の意見を聞き分ける器、そして部下達からの忠誠。
伯爵に相応しい伯爵だろう。」
ヴィクターが頷く。
「・・・相対する者が可哀相ですね。」
「・・・格が違うだろうな。」
ヴィクターとジーナは自分達の代わりに領地運営をしている親族を思うのだった。
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