第745話 王家と武雄。(トップ商談。)
夕食後、王家の控室になっている小広間にて、武雄とアリスとエリカと王家一家全員が揃っていた。
「今日はのんびりできるかと思ったのですけど。」
武雄がその場の面々を見ながらボソッと呟く。
「タケオさん、ごめんなさいね。
夕食の際にウィリアムが黒板の話をしてね。
『うちらも貰うんだ!』と旦那連中が引かなかったのよ。」
ローナが苦笑しながら言ってくる。
「明日は挙式ですし、その後にお渡ししようかと思っていたのですけど。」
「気を使って貰ってごめんなさいね。
でも、まぁ大変なのは2名だしね。」
セリーナがリネットとクラリッサを見る。
2名は机の端でうつらうつらし始めていた。
「あぁ・・・あのままだと机に頭をぶつけそうですね。」
「貴族達に挨拶をしに行ったからな。
疲れたんだろう。」
クリフが2人を見ながら言う。
「だな。タケオ、気にしないで黒板の話をしてくれ。」
ニールも言ってくる。
「クリフ殿下もニール殿下も疲れてないのですか?」
「ん?このぐらいなら疲れるうちには入らないな。
それよりも政策の会議とかに出席している方が疲れる。」
「まったくですね。」
クリフとニールが頷く。
「そうですか。
じゃあアリスお嬢様、手伝ってください。」
「はい、わかりました。」
武雄はリュックから大袋を取り出しいろいろ引っ張り出し始める。
そして黒板を組み立て始める。
・・
・
あっという間に完成し、ウィリアム達と同様に説明を終えた。
「うむ・・・タケオ、面白そうだな。」
アズパール王が将棋とリバーシを見ながら言ってくる。
アンとクリナはアズパール王用の黒板にいたずら書きを始めていた。
「とりあえず、ハワース商会への注文は黒板と玩具については5個単位、鉛筆については20本単位、チョークについては50本単位でお願いします。
1セット1週間が製作納期になります・・・ですが、先着順になると見込んでいます。」
「うむ・・・これはそうだな、オルコットやクラーク達に説明をしてから王都での発注数を決めないといけないな。
ちなみにウィリアムはもう決めたのか?」
「昨日の時点でチョークと鉛筆と消しゴムの注文をするように、レイラに言いましたが。」
「昨日の夜にもう伝令を出しましたよ。」
「早いな・・・」
ニールが言ってくる。
「お義父さまが頼むと、それだけで私達の手元に届くのが遅くなりそうでしたからね。さっさと頼みました。
それにテンプル伯爵、ボールド男爵、バッセル男爵、ゴドウィン伯爵からも、昨日もしくは今日の内にハワース商会に見積りと注文書をお願いする手紙が送られているはずです。」
レイラが言ってくる。
「・・・一気に注文をしたのね。
クリフ、うちはどうする?」
セリーナが聞いてくる。
「・・・んー・・・そうだなぁ。
皆で話したいが、クラリッサがあんな状態だし・・・これから妃会議もあるだろう?
なら、とりあえず屋敷内で使う分だけの1セットを頼もうか。」
「わかったわ。とりあえず1セットを注文しましょう。
送り先は・・・見積もり等々は王都で良いかしらね。
納品は屋敷にして貰おうかしら。」
「良いだろう。」
クリフが頷く。
「エイミー、うちはどうする?」
「・・・黒板は5セット、チョークと鉛筆と消しゴムは10セット頼みましょう。
その後は、チョークと鉛筆については毎月5セットずつ頼みましょう。」
ニールの質問にエイミーが目を細めて言ってくる。
「「え!?」」
その場の全員が固まる。
「・・・エイミー、大量に注文するな。」
「はい、お爺さま。
チョークと鉛筆と消しゴムは明らかに消耗品です。
うちの文官達で使うのなら、とりあえずはそのぐらいが必要かと思います。」
「ふむ・・・これは納期が延びそうだな。
それも含めて考えないといけないだろうな。
それに、チョークは送られて来る時の破損率が気になるな。」
アズパール王が言ってくる。
「そこは何とも。絶対に折れませんとは言えないですね。
さすがにあの道を振動なしで送って来るというのは不可能です。」
武雄が苦笑する。
「うむ。そこに文句は言えんし言うつもりはない。
何かしら対策をしてくれると助かるんだがな。
タケオ、振動がない幌馬車は作れると思うか?」
アズパール王が武雄に聞いてくる。
「全く振動がない物は作れないでしょう。
作れるとしたら振動をなるべく伝えないようにするだけ・・・伝えないようにするというよりも、振動を弱めるという考え方の方が良いかもしれませんね。
ですが、全く揺れない物は作れないと思いますね。」
武雄が考えながら言ってくる。
「そうか・・・何か上手い手があれば良いのだがな。」
アズパール王が悩むのを見ながら「ダンボールか気泡緩衝材かぁ」と武雄は考えるが、「これはまだ先かな?」と思うのだった。
「アン、クリナ、何を書いているの?」
ローナが黒板を見ながら言ってくる。
「王都に来て食べた物を書いています♪」
アンが満面の笑顔で答える。
「アン、それは違うよ。パスタはこうだよ~。」
アンが書いた物をクリナが訂正し始める。
「ええ~?
そっかなぁ~・・・こぉ?」
アンがクリナの横にまたパスタと思しき物を書く。
「・・・違うって・・・」
すぐにクリナが訂正する。
「あぁ・・・クリナお姉様が厳しい。」
アンがガックリとする。
「まぁ、アンには絵心がない事はわかったわね。」
セリーナが苦笑する。
「・・・ねぇ、クリフ、セリーナ。
私達もエイミーと同じでチョークは多く注文しようか?
アンが使いそうよ。」
「そうだなぁ・・・」
「そうかもね。
なら、うちはチョークと鉛筆は3セットにしましょうか。
パットは必要?」
「僕はいりません。」
「そう。なら、これで頼みましょう。」
セリーナが第1皇子一家の注文数を決めるのだった。
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