第744話 武雄の考え。(人工湖と米について。)
第3皇子一家の執務室にて。
「タケオさん、意味は分からなくもないんだけど・・・
これは繋がりが複雑ね。」
レイラが黒板を見ながら言ってくる。
「そうですね。
私の中ではこの人工湖が最優先、その次が農業なんですけども。」
武雄が人工湖と農業を指しながら説明している。
「ん~・・・でもこっちの輸送船も関係性があるのよね?」
「そうですね。
紅魚の養殖が成功したら領内から出荷はする気ではいますから輸送船の話には行きつきますね。
まぁ、養殖だけでなく輸送船は全部の事に直結しますが、幌馬車よりも1日か2日は早く届けられる事を理想としていますから優先度は高いかもしれません。」
「タケオさん。
紅魚の養殖が成功するとうちの兄の方からの輸入量が減るの?」
「さて・・・どうでしょうか・・・」
アルマの質問に武雄が腕を組んで悩む。
「・・・タケオさん、そこは悩む物なの?
同じ紅魚なんでしょう?」
ジェシーが聞いてくる。
「んー・・・もう養殖事業が出来た前提で話をしていますけど・・・海で取れる紅魚と川で飼育した紅魚。
本当に味が同じなのかはわかりません。
端的に言えば川の紅魚は水に浸かっていますし、海の紅魚は海水に浸かっています。
さらに自由に泳いでいる海の紅魚といくらある程度大きくしても生け簀での飼育。
身の付き方が違ってしまう可能性もあります。」
「ん~・・・確かにそうかもしれない。
でも誰もやったことないからわからないわね。」
アルマが顎に手をついて考える。
「ええ。生態調査にどのくらいの期間が必要かもわかりません。
アルマ殿下、紅魚の産卵場所の特定は出来ていますか?」
「んー・・・海でも川でも湖でも報告があった気が・・・いや、生息地域の記載だったかも。
産卵に関しての詳しい文献は見たことがないかもしれないわ。」
「では、その辺の文献から探さないといけませんね。
エルヴィス伯爵と話をして専属を作れるか考えないといけないですかね。」
武雄が「んー」と悩む。
「まぁ、数年先ぐらいの話ですから今考えてもしょうがないでしょうね。
で、一番は今の所人工湖ですが。
荷捌きが出来るようにするだけなので問題はないでしょう。」
「いやいや。タケオさん、農業用水を作るのでしょう?
さすがに現状の水量を減らされるとうちも困るわよ。」
ジェシーが聞いてくる。
「そこは・・・山の方に川があるのでそこから合流させて水量を増やす計画を立てましたが・・・見に行ってから考えます。
ダメならまた別の事を考えれば良いかと。」
「あ、水源は考えているのね。」
「はい。水量を下げるなとエルヴィス伯爵からも言われています。
なので農業用水用の水源を探す事もしないといけないなぁとは考えていますけど。
これもまだまだ先ですね。」
武雄が朗らかに言う横でアリスが「タケオ様、具体的な行動計画建てましたよね?」と思いながら武雄を見るのだった。
「ふむ・・・とりあえずはエルヴィス家は人工湖を作る方針ということですね。」
ウィリアムが言ってくる。
「はい、ウィリアム殿下。
あとは・・・追々ですね。
で、エリカさん。何か聞きたそうにさっきからしていますけど、どうしましたか?」
「タケオさん、米という穀物は栽培出来たとしてどのくらいを見込んでいますか?
もしかしたらエルヴィス領で特産品になりますか?」
「・・・エリカさん、何を考えていますか?」
武雄が考えながら言ってくる。
「いえ・・・新しい穀物なので興味があります。
それにタケオさんの所の主食だと聞きました。
という事は何かしらお菓子が出来るのではないかと思っています。
それに主食であれば食べ方もいろいろありそうですし。」
「ふふ、エリカさん。
現状では作付け量は少量ですし、特産品になるかはわからないですね。
米の作付けが上手く出来ればたぶんエルヴィス領の自給率が改善されると考えています。」
「自給率とは何ですか?」
エリカが聞いてくる。
「簡単に言えば領内の小麦・ライ麦等の主力穀物の生産量でどのくらいの領民が生活できるかです。
エルヴィス領は現在85%程度と教えられています。
なので数年後に足らない5%から10%分の米を作り、自給率を高められたら良いのですけどね。」
「タケオさん、米は小麦の代わりになるの?」
「小麦は粉にした後にパンにするまでに加工する手間がありますけど、米は小麦と違って米そのものを使います。
水で炊くだけなので手間も少ないですしね。
まぁ小麦に変わる食材というよりも米を食べる日が月数回くらいに根付けば良いと思っています。
それに腹持ちも良いですし、加工の仕方によっては持ち歩いてお湯を入れるだけで良いという風にも出来ますので、使い勝手が良いのですよ。」
「え?お湯を入れるだけで良いの?
それは調理が楽ね。」
「事前加工は必要ですけどね。
小麦だと結構下準備に時間がかかりますからね。
まぁその辺は作ってみてから考えようかと。」
「んー・・・タケオさんの政策がどんどん進行中ね。
その米はうちにも卸して貰えるの?」
レイラが聞いてくる。
「作付けが上手く行って増産体制が出来たらですね。」
「んー・・・これも数年後かぁ。
エリカさん、もしかしたら米の作付けはうちでも取り入れるかもしれないわね?」
「はい。エルヴィス領での作付け結果を教えて貰うしかないですね。」
レイラの言葉にエリカが頷く。
と執事がやって来て「夕食の用意が出来ました」と告げ、この集まりが解散されるのだった。
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