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第736話 人事局で追加の会議。2(寄宿舎関係。)

「キタミザト殿、報告書についてはもうしばらくお待ちください。」

オルコットが武雄に言う。

「はい、わかりました。」

「さて、他にありますか?」

「いえ、私の方からは特には。」

「そうですか。

 では来ていただいた用件なのですが、2つあります。

 1つは寄宿舎の事、もう1つは陛下から第二研究所への特務についてです。」

「はい。

 寄宿舎で私という事でしたらエルヴィス家のお付きでしょうか?」

「はい。

 陛下から言われておりますでしょうか?」

「はい。

 一応、ジーナがエルヴィス家のスミスのお付きとして、寄宿舎に入る事も可能とは言われています。

 その件は戻った際にエルヴィス伯爵と話をしています。」

「・・・どうでしたか?」

人事局長が聞いてくる。

「本人の意向も確認し、認められるのでしたらまずは1年間お付きの仕事をしつつ、人間社会を見てみようということになりました。」

「1年間ですか?」

「はい。

 ジーナが継続して通うかは現状では未定です

 それにお付きが3年間通い続け(・・・・・・・)ないといけない(・・・・・・・)とは言われていません。

 なら、毎年変えても差し支えはないと思っています。

 1年毎ならエルヴィス家のスミスがいる間に、私の部下(・・・・)が人間社会の勉強に来れるという考えもあります。」

「ぶ・・・部下ですか?

 あ、確か・・・3名でしたね。」

人事局長が考えながら言ってくる。

武雄はその顔を見ながら「・・・もっと候補はいるんだけど」と思うが口にはしない。

「なので、とりあえずジーナを1年間お付きの仕事をさせつつ人間社会を見学するのは確定していますが、来年以降はわかりません。

 エルヴィス家で新たにお付きの人間を探して入れ替えるのか、私の他の部下と入れ替えるのか、ジーナが継続するのかは、様子を見てみないと(・・・・・・・・・)何とも言えないかと。」

「・・・」

全員が黙り考える。

この面子で「何の様子を?」とか無意味な質問はしない。

寄宿舎でのジーナに対するイジメだと解りきっている。

「ジーナ殿がお付きになられる件は、何も問題はありません。

 寄宿舎に文官が常駐していますので、そちらで手続きをして頂ければ問題なく終わる手はずになっています。

 また現在、寄宿舎内では部屋割りを見直しています。」

人事局長が言ってくる。

「部屋割りですか?

 確か、貴族とそのお付きは一般とは別棟だと伺っていますが、貴族側をですか?」

武雄はエイミーから聞いているが素知らぬ振りをする。

「いえ、一般の方です。

 ちょっと面倒なのがいますので、一纏めにしました。」

「・・・ジーナに何かあった場合は防衛行動時のみ戦闘をさせますが、それはそもそも『エルヴィス家(・・・・・・)に対し喧嘩を売る』という事を意味しています。

 私個人に対してであれば我慢しますが、エルヴィス家やスミス坊ちゃんが舐められる訳にはいきません。

 腕や足、あばら骨の1、2本ぐらいは覚悟してください。」

「貴族の子息のお付に手を出してそれで済むなら安い物でしょう。

 下手すれば、親御さんも含めた制裁をされてもおかしくはありません。」

総監局長がため息をつく。

「キタミザト殿、ジーナ殿にどんな教育をされる予定ですか?」

第1騎士団団長が聞いてくる。

「エルヴィス家に戻ってからにはなりますが、寄宿舎に行くまでに、騎士団から剣の稽古を受け基本的な戦い方を学び、実戦感覚はアリスお嬢様と模擬戦を行い、学力についてはスミス坊ちゃんが教える事になっています。

 あと、警護者として携帯するのはショートソードのような殺傷能力が高い武器ではなく、携帯が便利な警邏棒を予定しています。

 これについては今試作中です。」

「そうですか・・・そちらの準備もしているのですね。」

王都守備隊総長が呟く。

「ジーナはとりあえず執事としての初級教育は実施済みです。

 そして、警護者としての訓練を行い相手の命を取らない(・・・・・・・・・)程度の剣技を身に付かせようかと思っています。」

「それはどういった物でしょうか?」

軍務局長が聞いてくる。

「今の所、私の頭の中では相手がナイフや剣を持っていた際に手首を攻撃(・・・・・)出来るようにすれば、相手の戦闘行動を最小限の怪我で押し留められるのではと考えています。」

「キタミザト殿、それは相当上位の・・・もしくは達人の領域ですよ。

 うちの守備隊で何人が出来るか・・・」

王都守備隊総長が難しい顔をさせる。

「正確には、手首から腕の骨を折るぐらいの気持ちでいかないといけないかと思っています。

 さすがに相手の顔や背中、腹といった部位は危険でしょう。

 ならば手か腕でなんとか留めないと、こちらが過剰防衛と取られかねません。

 人事局長、ケアを使える者は常駐していますか?」

武雄も難しい顔をさせながら言ってくる。

「教員で数名ですね。常駐も必ず1名はしていますので問題はありません。

 ですが・・・そうですね。手首か腕で済ませていただければ、事態が大事にならずに済みそうですね。」

人事局長が言ってくる。

「クラーク議長、スミス坊ちゃんとジーナの部屋はどうなるのでしょうか。」

「前に見に来ていただいた際にお見せした部屋をジーナ殿用にし、隣をエルヴィス殿にする予定です。」

「お付きが王家と主家の間で良いのでしょうか?」

「そこは・・・まぁ、今までのお付きは入る貴族の子弟と同性だったのですが、今回は異性なので、エイミー殿下とエルヴィス殿の間にするという事にしましょう。」

「無理やりですね。」

クラークの説明に武雄がため息をつく。

「ですが、貴族の方の部屋割りは一般の生徒には知られない物ですし、そもそも貴族とそのお付きの部屋がある階に来られません。

 ですので問題はないでしょう。

 あとは、問題児達の監視体制の強化をするだけです。

 それと、今年から入学人数が少し増える見込みなのです。」

「何人が何人になるのですか?」

「今までは大体30名でしたが、今年から40名になる見込みです。

 今後は学院に入れる人数を増やして行こうと考えています。」

「何故でしょうか?」

「学院の卒業生の中に地方勤務を希望する者が最近増えて来まして、王都での採用数の確保という名目と、同世代で地方と王都に知り合いがいるというのは、意外と良い結果になっているようなのです。

 なので、横のつながりを確保する為でもあります。」

人事局長と武雄が話しているのを周りも頷きながら聞いている。

「そうなのですね。

 確か学院に入るには学力と貴族1家と騎士1名の推薦状が必要と聞いていますが、その規則はそのままなのですか?」

「はい、それはそのままです。

 30名を40名にしたからと言って基準を下げてはいません。

 キタミザト殿、何かありますか?」

「いえ・・・例えば本人の資質も良く、貴族1家と騎士1名の推薦状も用意出来るかもしれないが、親御さんが授業料が払えなくて入学を諦めるような者が居たら勿体ないなぁと思いまして。」

「ふむ・・・確かにそういった者はいるかもしれません。

 キタミザト殿、その件は今後、貴族会議と人事局で話し合ってみます。」

人事局長が真面目な顔つきで答える。

「はい、すみません。

 ふと思っただけなので、あまり気になされなくても構いませんが。」

「いえいえ。

 そういったふと思う事は重要なのです。

 意外と核心部分を突いていることがありますので。」

総監局長が苦笑する。

「そうですか。

 ですので、4月からはジーナを入れさせて頂ければと思っています。」

「皆さま、4月からよろしくお願いいたします。」

武雄とジーナが頭を下げるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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