第734話 授与式後の昼食。(エルヴィス家の政策。と貴族の監視方法。)
「養殖って何?・・・聞いていないわよ・・・」
ジェシーが眉間に皺を寄せ半ば怒りながら呟く。
ウィリアム達は茫然としている。
エリカはため息交じりに武雄を見ていたりする。
「ん~・・・タケオ様、これはどうですかね。」
そんな周囲を余所にアリスが黒板に書いた「したい事リスト」の一番下2つの項目に線を引きながら言ってくる。
ちなみに武雄以外がメガネ着用です。
ちなみに武雄が書いた内容がこちら。
・魔王国に面する4貴族領での河川治水事業(100%)
・人工湖の造成と港の管理事業(周囲8km、深さ10m)(50%)
・人工湖での紅魚の養殖事業(10%)
・人工湖からの農業用水路の設置とその水源確保事業(30%)
・米の作付け試験事業(20%)
・卸し単価の高いキノコの栽培事業(60%)
・筆記具と玩具事業(90%)
・ウスターソース事業(90%)
スライム関係はごっそりと抜いて説明していた。
その辺はジェシーもわかっているようで何も言わない。
それよりも人工湖と養殖に驚いていた。
「ウスターソースと黒板等々に線を引きますか。
まぁ動き出したので実質終わっていると言われればそうですね。
スミス坊ちゃんはどうでしょうか?」
「んー・・・河川事業も王都に着いた際に話をしたのでいらないのではないですか?」
「なるほど、そうですね。」
武雄が線を引く。
「あ、もう時間です。私は研修に行ってきますのでこれでお暇を。
また後で来ますね。
失礼しました。」
と時計を見た武雄が皆の反応が止まっていることを良い事にさっさと退出していった。
「あぁ・・・タケオ様、場を放置していきました。
スミス、どうしましょうかね。」
「タケオ様の考えを僕たちが説明するのは厳しいです。」
「そうだよね。」
アリスとスミスが相談する横で。
「ウィリアム殿下、アルマ殿下、レイラ殿下、そろそろ戻ってきてください。」
エリカが3人に呼び掛ける。
「・・・そうね、いつまでも呆けてられないわね。」
「だね。」
「それにしても相変わらず有効性が高い政策ね。
この中だとキノコ事業が見劣りするけど・・・
キノコは秋冬物だから春夏時に売れそうだし、軌道に乗ると安定収入になるわよね。」
レイラが腕を組みながら考えて言う。
「紅魚の養殖・・・本当に出来るのかしら?」
ジェシーがマジマジと黒板を見ながら呟く。
「タケオ様的には数年かけて生態を調べないといけないような事を言っていましたからまだまだ先です。」
「僕的には卸売市場が4年後の開始と聞いて、紅魚の養殖も同じぐらいに成果が出るのかなと思いましたけど。」
「スミス、そんなに簡単じゃないと思うわ。
紅魚は海にも川にもいる不思議な魚なのよ。
生態を調べようにも範囲が広すぎるし、誰もした事ないんじゃない?」
アルマが考えながら言う。
「そうなのですか?
タケオ様が言うなら他の人より実現性は高いと思うのですけど。」
スミスが首を傾げながら言ってくる。
「何とも言えないわね。」
アルマが難しそうな顔をさせる。
「農業用水・・・米・・・」
エリカがボーっと見ながら呟く。
「ん?エリカさん、どうしました?」
ウィリアムがエリカに聞く。
「いえ・・米という物がわかりませんが、作付けをするとなるとどうなのかなぁと。」
「ふむ・・・
アリス、スミス、この米というのは何ですか?」
「「わかりません。」」
アリスとスミスが同時に答える。
「え?わからないの?」
レイラが聞いてくる。
「はい。タケオ様の居た所の主食なのだそうですけど。
カトランダ帝国で2㎏は入手済み。
今は魔王国に問い合わせ中なんです。」
「「「「魔王国!?」」」」
ウィリアム達が驚きながら言ってくる。
「はい。米を作っているのがエルフだそうで、魔王国の商店を通じて入手出来るのか確認しています。
で、入手出来たら栽培してみようという計画ですね。
人工湖関係についても米関係についてもまだまだ計画中なだけで何も決まっていませんし、何も確定していない本当にタケオ様がしたい事なんです。
なのでジェシーお姉様にも言いませんでしたし、私達だけの空想の楽しみなんですけどね。」
「・・・」
アリスとスミス以外が「これはタケオさんが戻らないと議論できないかなぁ」と思うのだった。
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王城の大広間。
先ほどの式典の座席は片付けられ今は机がロの字形にされていた。
武雄は自分に割り振られた席に着いて1日目の講義を受けている。
「以上、お渡しした資料の通り、このプレートに王都から毎年1月に年間給与が支払われます。
家としてのお引き出しや入金はこちらでされると便利かと思われます。
またプレートを紛失されますと再発行に時間と費用がかかりますので十分に注意をしてください。」
中堅の文官が説明をしている。
武雄は資料を眺めながら考えていた。
この世界の冒険者組合は各国とかなり深い付き合いをしているようだ。
渡されたブラックカード(材質は鉱石のような肌触り)は冒険者組合で金銭のやり取りを可能にしていた。
さらに各貴族は簡易的な12月末時点の収支報告を1月末までに王都に提出すれば良いとなっていた。
武雄は「冒険者組合は仕事の斡旋と肉や素材の売買と銀行システムみたいな事をしているのか」とも思うし、「各貴族からの収支報告と冒険者組合からの入出金報告を見比べるんだろうなぁ」とも思う。
そして「アズパール王国と冒険者組合がどんな契約をしているかは確認のしようがないが、家の口座が見られるなら個人の口座も見られると思うしかない。
そもそも冒険者の個人情報は渡さないと言われているが、貴族となると離脱不可項目がある。貴族は国家の物という理屈で行くなら・・・入出金記録は見れるだろう。
まぁ表立って「見ていますよ」とは言わないだろうし、認めないだろうが・・・
金の流れを見ればどんなことをしているかわかるという事なのだろう。
フレデリックさんがジーナ達に言ったのは金遣いの荒さを指摘してではなく「王都から刺された時の対応の為か」と納得するのだった。
「ここまでで何かご質問があれば挙手をお願いします。」
説明をしていた文官が聞いてくる。
「はい。」
武雄が手を挙げる。
「う・・・どうぞ。」
その場の全員が緊張する。
「このカードでの入出金の履歴を冒険者組合から貰うことは可能でしょうか。」
「可能ですね。
ですが、それをそのまま収支報告書として出されるのはダメです。
別書式でご提出願います。」
「過去にそういった事例がありましたか?」
「導入当初はあったようです。」
「そうですか。
ご回答ありがとうございました。」
武雄が頭を下げる。
「では、他になければ次の題目にいきます。」
研修は進んでくのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
本年もよろしくお願いします。
まぁ作者は相も変わらずマッタリと書いていきますけども。
お付き合いの程、お願いいたします。




