第726話 79日目 情報網の整備案2。
「タケオ様、王都とエルヴィス邸まででよろしいのですか?」
アリスが地図を見ながら聞いてくる。
「アリスお嬢様が言っているのはアズパール王国の西側ですね。」
「はい。」
「・・・したとしても意味があるのかどうか・・・
確かにスライム探索というとこを考えれば必要でしょうが。
私が夕霧達を保護していることが露見しませんかね。」
「それはジーナちゃんとのやり取りで明らかになってしまいませんか?」
「ふむ・・・・現状でスライムの保護に動いているのはエルヴィス家。さらに賛同し自分の陣営でもしたいのがゴドウィン家。
エルヴィス家に至ってはスライム達の本当の有益性がわかってるので保護強化はする手はずになっている。
・・・なら一手先を行くにはアズパール王国全土のエルダームーンスライムとエルダースライムを一気にエルヴィス邸の北の森に集めてしまうのが一番か・・・」
「主、多くを集めるという点は問題はないのでしょうか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「夕霧がそもそも情報の共有をさせる為にエルダームーンスライムを集めたがっています。
集めるという事に関しては問題ないでしょう。
だが・・・個体数が増えると軋轢が生じるのは社会の宿命・・・スライムは情報の共有という1個の共有意思の元に動けるなら人間社会より強固な意志の元に集えるとは言えますが・・・」
「・・・夕霧ちゃん達みたいに人間に協力的なら良いのですけどね。」
アリスが武雄の言葉に複雑な表情をさせながら言ってくる。
「彩雲、どう思いますか?」
「私達は最弱です。
攻撃を受けたら身の破滅なのはわかっています。
なので今回のキタミザト殿、伯爵様からの提案はスライムの安住の地を手にしたという観点からとても賛同しやすかったのは確かです。
多くの仲間が賛同すると思います。」
「ふむ・・・
彩雲、上空から見ていてエルダームーンスライムは発見できますか?」
「難しいかと。」
「そうですか・・・
最終的には誰かを送り込まないといけないのか・・・
夕霧達を危険にさらさせるわけにはいきませんね。」
「そうですね。
折角、エルヴィス領で仲良くなれる魔物が出来たのに失いたくないですよね。」
武雄とアリスが悩む。
「ご主人様、アリス様。
夕霧殿達が会いに行かずとも自ずからエルヴィス領に来たい者は来ればいいとすればよろしいのではないですか?」
ジーナが言ってくる。
「それも1つですが・・・
さてどうしたものか・・・彩雲、エルダームーンスライムはスライムを吸収しますね?」
「はっ!
私もシグレのアサギリを吸収し、内容を理解してから会いました。」
「ふむ・・・」
「タケオ様、どうしますか?」
アリスが聞いてくる。
「なら・・・アズパール王国西側のエルダームーンスライム達で夕霧の下に集いたい者は王都の城門横の森に集合して貰いましょう。
ただし、私達に危害を加えない事、夕霧達の言う事を聞く事が条件です。
万が一、反故にした場合は・・・居た森のスライム達は殲滅、駆除される事もあり得るとするべきでしょう。」
「キタミザト殿、出来ますか?」
彩雲が聞いてくる。
「正直他領ですから出来ないでしょう。
ですが、人間を攻撃するなら・・・いや違いますね。
私の部下であり家族も同然の夕霧達に手を出すならそうなってもおかしくないという事を念頭に決断して貰いたいです。
人間は家族を攻撃されると時に苛烈に動きます。
それを見誤る者を夕霧に会わせる必要はないです。」
「そうですね。」
アリスも頷く。
「彩雲、すみませんね。
同族への攻撃方針を言われるのは辛いでしょう。」
「いえ。
エルヴィス領に居るスライム達は人間と争う気はなくユウギリを頂点に集まろうとしています。
その流れを邪魔するのであれば駆除されても致し方ないでしょう。」
彩雲が頷く。
「夕霧のような事を言いますね。」
「情報の共有は出来ていますので。」
「そうですか。
彩雲、万が一の際は夕霧を最優先で保護します。
西のスライムは切りますからね?」
「はっ!それでよろしいかと!」
「彩雲は今の状態でスライムを作り出し、先の10体とは別にアズパール王国西側に向けスライムを放ちなさい。
朝、もう一度生ゴミを持ってきますからエルヴィス邸までの栄養はそこで得る事。
わかりましたか?」
「はっ!」
彩雲が頷くのだった。
「そう言えば・・・彩雲殿、エルダームーンスライムの擬態時の形はどのように決めているのですか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「100年以上生きたスライムがエルダースライムになりますが・・・
エルダースライムになり、動物の死骸を吸収したのちに擬態が出来るようになります。」
「動物の死骸なのですか?生きたまま捕食は?」
更にヴィクターが聞いてくる。武雄達は聞き入っている。
「はい。
生きた状態では私達がやられてしまう可能性が高いので、安全をみて死骸を吸収するのですが、9割以上の原型を1体のエルダースライムが吸収しないと成れません。
そして吸収してからいく月かした満月の際に不意に擬態出来るようになります。」
「その際に元の動物の感情や知識は残っているのですか?」
「?・・・感情?・・・死骸に感情はありませんが?
それに私達は感情というのがいまいちわかりません。
知識については飛ぶ、歩く、話すは出来ます。
最初は難しいですが、し始めるとわかり始めます。」
彩雲が首を傾げて言ってくる。
「タケオ様、夕霧ちゃん達は。」
「人間の死体を吸収したという事でしょう。
ですが、今の村人や領内の人間を襲ったわけではありません。
夕霧達を責める事など筋違いです。
それに・・・あの幼さで亡くなった・・・それも1体で1人を吸収する時間があったのです。
埋葬する事も出来ず、警戒心が強いスライムが近寄れる環境・・・村単位で何かしらあり、放置されたのでしょうね。
そんな世の中にするわけにはいきません。
今はそう誓う事しか私は出来ませんね。」
「はい・・・そうですね。
そんな惨状を作る訳にはいきません。」
アリスと武雄が気持ちを新たにするのだった。
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