第702話 ジェシーと武雄の相談。5(王都での新貴族の役割。)
「とりあえず関の強化案も決まったの。
タケオ、また良い案があるなら言ってくれるかの?」
「はい、わかりました。」
エルヴィス爺さんが言うと武雄が頷く。
「はぁ、ほんとタケオさんが居てくれて助かるわ。
有効な手立てが湧いてくるんだもの。」
ジェシーがやれやれという感じを出しながら言ってくる。
アリスもスミスも「強化案が出来て良かった。」と思っている。
ボールドに至っては「スライムの有効活用かぁ」と思案していたりする。
「さてと、これで魔王国方面の戦関係の話は終わりじゃの。
次は王都の話をしてみるかの。」
「そうですね。
本当はこの話をするつもりだったんだけど。
魔王国からの防衛方法を考えちゃったわね。
さてと、今回うちもテンプル伯爵も王都勤めの貴族には騎士団長を推薦したのですけどね。」
「うむ。それは王都からの書面を見てわかったのだがの。
何かあるのかの?」
「歴代の王都勤めになった新貴族を調べると元居た領主に対して王都での情報や貴族会議で議論されている事を流す役割が与えられています。
私達もそれに倣ってやろうかと。次はわかりませんが、少なくともボールドの代ではして貰いたいですね。」
「フレデリック、そうなのか?」
「さて、私も初めて聞きました。
王都からそんな役割が与えられる物なのですね。」
「いや、お爺さま、フレデリック、その役割は正式にではなくてね。
今までを調べるとそうなっている形跡があるだけです。
貴族会議や文官から決定される前の事案情報を流し、地方に有利なようにする。
代わりに新貴族の王都での生活の足しに地方貴族は支援するといった感じですね。」
「ジェシー、それはどうやって調べたのじゃ?」
「それは秘密です。」
ジェシーがにこやかに言ってくる。
「まぁそうじゃろうの。
じゃが、わしにはそんなコネはないからのぉ。」
「お爺さまもされれば良いのに。」
「王都に興味はないしの。
納税さえしっかりとしておけば何も言われんし、わざわざ王都のイザコザに巻き込まれるつもりもなかったのじゃが・・・」
エルヴィス爺さんが武雄を見る。
「まぁ、私が渦中ですね。」
武雄が苦笑しながら答える。
「真っ只中じゃ。
王都にコネを作っておけばとは今なら思うがの・・・面倒そうじゃからの。」
エルヴィス爺さんは面倒臭そうに言う。
「じゃあ、タケオさんはどう?」
「どうとは?」
「いや、王都の情報を集めることについて。
タケオさんはどんなコネがあるの?」
「私のコネですか・・・
んー・・・王城内だととりあえず前回の旅で第1皇子一家に多大な貸しを作ってこれましたし、第2皇子一家はまぁまぁ、第3皇子一家はレイラさんがいますね。
あと確か警備局全体が私の事を感謝していると言っているので今度お菓子でも持って行こうかと。」
「例の襲撃の件でタケオが菓子を持って行くのかの?」
「はい。
感謝してくれている状況でさらにその相手からお菓子を毎回持って来られれば何かしら便宜は計ってくれる可能性はありますしね。
お金とかではないので賄賂とかは言われませんし・・・あくまで気持ちです。
『今回も警護をお願いします』と頭を下げに行けば兵士達も気分は良いでしょう。」
「ふむ、まぁタケオは好きにすれば良いの。」
「はい、好きにします。
で、あとは・・・アリスお嬢様、第2騎士団はどうします?」
「う・・・そこですか。」
「ここはどちらかと言えば私ではないですよね。」
武雄の問いにアリスが汗をかき始める。
「・・・今回、王都に行ったらタケオ様のお菓子を渡してきます・・・」
アリスが目線を下にしながら呟く。
「はい。
あとで料理長にその為のお菓子を作って貰いましょう。」
「私も一緒に行って頼みます。」
アリスと武雄が頷くのだった。
「という事はタケオさんは王家と警備局にコネがあるのね?」
「コネって程の事はないですけど・・・まぁ少なくとも王家の男性陣とは飲んだりしていますよ。
かなり砕けた感じで飲みましたね。
前にもエルヴィスさん達には言いましたが、ウィリアム殿下と飲もうとしたら先に陛下とクリフ殿下とニール殿下が待っていて『遅い!』とか言われる状況でしたが。」
「その席に同席するのは嫌じゃの。」
「・・・考えたくもないです。」
エルヴィス爺さんとボールドが嫌な顔をさせる。
「周りに誰も居ない状態で陛下と皇子達と飲むのは結構、面白いですけどね。
まぁこれからも王家と警備局辺りには良い顔をしておけば良いかなぁと。
あとするのなら同格組織の王都守備隊ぐらいでしょうね。」
「タケオさん・・・それってとんでもないコネなんだけどね。
ボールドはどうする?
タケオさん、貴族会議の知り合いは?」
「いませんね。
・・・強いて挙げればクラーク議長でしょうが、貴族会議全体のまとめ役ですから新貴族にかまける訳にもいかないでしょうね。」
「そうね・・・
まずは貴族会議でコネを作るしかないか。」
「うむ、そうじゃの。まずはどの勢力に入るかにもよるしの。
その辺はスタンリーの感覚に任せるしかないじゃろう。
しかし王都全体の情報を集めるなら武官出身よりも文官出身の方が良いのではないのかの?」
「お爺さま、ところがそうでもないんですよ。
武官出身の方が無知を装えて最初は声をかけられやすいという話です。
それに武官なら騎士団や王都守備隊出身の文官と話が合いそうですし。
どこがどこと繋がっているかなんてわかるわけないですからね。」
「それはそうじゃが・・・
まぁその辺は努力するしかないかの。
フレデリックはどう思うかの?」
「ボールド男爵様と都度情報のやり取りは必要でしょう。
エルヴィス家の情報源は今の所レイラお嬢様とタケオ様の王家ですからそこに貴族会議の話も合わせれば確度が高い情報と成りうると思います。」
「私達もそれが良いわ。
なので出来る限り王都のボールド家とエルヴィス家、そしてゴドウィン家は情報を共有したいですね。
それに魔王国の関絡みでも情報をやり取りしないといけないし。」
「そうじゃの。
スタンリー、すまんがわしらにも情報をくれるかの。
金銭的な支援はさせて貰おう。
じゃが、うちはあまり金銭的に余裕はなくての・・・」
「エルヴィス伯爵様、その辺はお気持ちで構いません。
私としても魔王国2領の状況がわかっている方が動きやすいとは思います。
こちらこそよろしくお願いいたします。」
ボールドが頭を下げるのだった。
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