第695話 69日目 ジェシー到着。
エルヴィス伯爵邸の玄関に2台の馬車が停まり、先の馬車から男性が降りてさらに女性が降りてきた。
「着いたわね。」
「ジェシー様、お疲れ様です。」
「・・・スタンリー・・・いや、ボールド男爵。
なんで貴方も馬車の横なのよ。
貴方はこっち。」
馬車の扉の前に引っ張る。
「いや・・・癖でして。」
「ちゃんと王都に着くまでに直してね。
さて今日はここで1泊ね。
車中泊も良いけどやっぱりベッドよね。」
ジェシーが伸びをしながら言う。
「ようこそお越しくださいました、ゴドウィン辺境伯爵夫人様。
爵位授与おめでとうございます、スタンリー・ボールド男爵様。」
「ええ。フレデリックも元気そうね。」
「は・・・はい・・・ありがとうございます。」
ゴドウィン辺境伯爵夫人は、笑顔で返し、ボールドは今までと違った対応がされて若干戸惑いながら返事をする。
フレデリックは、笑顔で頷き、扉を開ける。
玄関で出迎えたのはスミスだった。
「ようこそお越しくださいました、ゴドウィン辺境伯爵夫人様。
この度は爵位授与おめでとうございます、スタンリー・ボールド男爵様。」
「エルヴィス家次期当主殿、お出迎えありがとうございます。
この度我が屋敷の者が爵位授与と相成りました。
王都への道すがらにて貴家にはご迷惑となると思いましたが、貴族になる者に挨拶をさせるべく寄らせて頂きました。」
と軽くスカートの両端を持ち挨拶をする。
「エルヴィス家次期当主殿、お出迎えありがとうございます。
この度は男爵位を授与される事になりました。スタンリー・ボールドです。
以後、お見知りおきをお願いいたします。」
「はい。こちらこそ未だ成人になっていない身、ボールド様にはご指導を頂きたく思います。
さて、祖父は客間でお待ちです。」
と、ここまで定型文。
「ジェシーお姉様、おかえりなさい。」
「ただいまスミス。
また少し背が伸びたかしら?はぁ成長は早いわね。」
とスミスの成長を喜ぶ。
「お爺さま達は客間で待っています。」
「わかったわ。
ボールド男爵行きますよ。」
「はい、ジェシー様。」
フレデリックが客間の扉をノックし、中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開ける。
「失礼します。ゴドウィン辺境伯爵夫人様、ボールド男爵様がお越しになりました。」
「うむ、通せ。」
ジェシーが入室する。
室内にいたのは、エルヴィス伯爵とアリス。
優雅にお茶を楽しんでいた。
「失礼します。お爺さま、ただいま戻りました。」
「ジェシーおかえり。」
「アリスも元気そうね。」
「はい、お姉様もお変わりなく。」
「エルヴィス伯爵様、失礼いたします。」
「うむ。ボールド男爵、爵位が授与されて良かったの。
さ、長旅だったじゃろう。
今はお茶を楽しもうかの。」
「「はい。」」
ジェシーとボールドが席に座るとメイドがお茶を入れ配膳する。
「はぁ、それにしても馬車2台とはの。
そんなに連れて行くのかの?」
「ええ、お爺さま。
ボールドは王都勤めです。
家族は後に行かせますが、行って拝命早々屋敷が与えられるそうです。
ですので最低でもそこの屋敷を管理する数人を連れて来ています。」
「ふむ・・・ジェシー、ボールド男爵が」
「伯爵様、今までと同じ名前で構いません。
少なくとも他者の目がない時はそちらでお願いいたします。」
ボールドが頭を下げる。
「そうか・・・わかった。
スタンリーを男爵にさせた経緯はタケオが帰ってから聞いて良いかの。
ゴドウィン家の戦略やらもあるじゃろう。」
「はい、わかりました。
私達としても王家と親密な関係であるエルヴィス家とキタミザト家と相談をしたいと思っております。」
「うむ。
それにしてもジェシーが王都に行くとはの。
うちからはスミスを行かせるがの。
ジェシー、上手く行くと思うかの?」
「さて・・・そのための新貴族で王都勤めです。
その辺はうちの旦那とテンプル伯爵も知っています。」
「そうか。
うちはタケオが新貴族じゃがの。
何も言っていないが・・・まぁタケオはタケオでするからの。」
「はい。
その辺もタケオさんが戻ってからにします。
で、そのタケオさんはどこに行っているのですか?」
「あ~・・・タケオ様は街で所用が・・・」
アリスが苦笑する。
「ん?何よ勿体ぶって。」
「いや・・・新しいソースの初売りをするので今街に行っています。」
「新貴族が何をしているのよ・・・
はぁ・・・まぁタケオさんならしょうがないか。行動力こそタケオさんの異名の発端だからね。」
「「「異名?」」」
エルヴィス家の面々が不思議そうな顔をさせる。
「ええ。
確か今回の爵位授与式でタケオさん二つ名が貰えるそうですね。」
「・・・知らんのじゃが?」
「あれ?・・・レイラから私宛に書いてありましたが・・・
んー・・・もしかしたら意図して書いていないかもしれませんね。」
「先に聞いてしまって良いのでしょうか?
意図して教えて貰わないのは王家辺りからの意向でしょうし。」
アリスが悩む。
「別に良いんじゃない?
本当に隠すなら他言しないはずだしね。
知られてもマズくないけど知らないなら知らないで面白そうと思っているだけでしょう。」
「タケオ様、また遊ばれるのですね。」
「遊びと言えば・・・アリス、貴女王都で何やったのよ?」
「ん?・・・ジェシーお姉様、どうしましたか?」
「うちに問い合わせがあったのだけど。
『エルヴィス家の気を和らげて貰えないか』とか何とか。
丁度、前にタケオさんとアリスが王都に行っている時でね。」
「ん?ジェシー、その辺はフレッドに伝えたと思ったがの?」
「ええ、聞き及んでいますが・・・アリス達の言葉で聞きたいですね。
私は又聞きの又聞きですよ?」
「ではタケオ様が戻るまでその話ですか?」
「ええ、ぜひお願い!」
ジェシーが嬉しそうに頷くのだった。
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