第692話 王都からの手紙。2(夕霧からのお願い。)
客間の扉がノックされエルヴィス爺さんが許可を出すとフレデリックとヴィクターと夕霧が入って来る。
「皆さま、戻りました。」
フレデリックがそう言いヴィクターは礼をする。
「「「おかえりなさい。」」」
「うむ、ご苦労。
で、なんで夕霧がおるのじゃ?」
「いえ、帰宅した際に屋敷前にお出でになりましたのでお連れしました。」
「ほぉ。夕霧、どうしたのじゃ?」
「ん、タケオに会いに来ました。」
「私ですか?」
「ん。
この間夜に来た際に卵の殻を綺麗にする仕事をする対価をどうするか聞かれたからその回答をしに来ました。」
「そうでしたね。
何か欲しい物が出来ましたか?」
「ん、私をここに置いてほしいです。」
「ここに?」
「ん、人間社会を勉強するのが今の目標。
シグレとハツユキに森は任せて私はこっちに専念する。」
「私は構いませんが・・・エルヴィスさん、どうでしょうか?」
「わしは屋敷内を体液でビショビショにしたり勝手に物を吸収したりしなければ・・・基本的にはこちらの指示に従ってくれるのならば問題ないと思うがの。
・・・アリス達はどうじゃ?」
「私は構いません。」
「僕も構いません。」
「フレデリックさんはどうですか?」
「私も主の条件であれば問題はないですが・・・扱いはどういたしましょうか?」
「そうですね・・・どうして夕霧はそう思ったのですか?」
「ここ数日アサギリ達を吸収してもいまいちわからなかったので。
何かをしながら人間社会を学べたらと思って・・・タケオの近くなら何かあるかなと。」
「ふむ・・・頼ってくれるのは嬉しいですが・・・」
武雄はそう言って軽く客間の中を見渡す。
「・・・夕霧、私のメイドになりますか。」
「メイド?」
「ええ、私の身の回りの世話をするお役目です。」
「ん~・・・具体的に何をするのですか?」
「そうですね・・・
私や皆さんにお茶を出したり、ミアとタマ、クゥとスーの世話をしたりですね。」
「私でも出来る?」
「たぶん出来ますよ。
そうしていれば屋敷内で人間も見れますし、ここで私達の会話も聞いていられます。」
「なるほど。
人間社会を見るには丁度良さそうです。」
「とりあえずそこからしてみますか?」
「ん、わかりました。」
夕霧が頷く。
「という訳です。エルヴィスさん、よろしいでしょうか?」
「構わぬよ。じゃが夕霧の部屋はどうするかの?」
「んー・・・ミア達と同じで良いでしょうか。
夕霧はベッドは必要ですか?」
「ベッド?・・・要らない。
休む必要もない。何も無いなら部屋の隅で人間の形を止めて動かないでいるのが一番。」
「・・・それはそれで怖いですが・・・
とりあえずフレデリックさん、余っているソファがあれば1脚頂けますか?」
「はい、畏まりました。
後程ミア様方のお部屋に運ばせて貰います。」
「ミア達も平気ですね。」
「大丈夫です、主。」
「きゅ。」
「ニャ。」
「チュン。」
チビッ子達が了承する。
「ヴィクター、ジーナ、夕霧は貴方達に任せます。
2人は私の資産管理を主にしてもらい研究所に部屋は作ります。
ですが、夕霧は基本的に屋敷内に居て貰いましょう。
ヴィクターはジーナと夕霧の面倒をみなさい。
夕霧はヴィクターの言うことをヴィクターが不在の場合はジーナにジーナが不在の場合はフレデリックさんの言うことを聞きなさい。」
「「「はい。」」」
ヴィクターとジーナそして夕霧が頷く。
「エルヴィスさん、夕霧はメイドではありますが、ベッドメイキングや食事の配膳等々、屋敷内の方々とは違いミア達の世話を主な仕事とさせたいと思います。」
「うむ、それで良いじゃろう。
扱いも違っていて構わぬが・・・お茶の配膳は教えておいた方が良いかもしれぬの。」
武雄の説明にエルヴィス爺さんが頷くのだった。
「夕霧の件は決まったの。」
「はい。主、皆さまで何を話されていたのですか?」
「うむ、王都からタケオに依頼が来ての。
少し話し合っていたのじゃ。
スミス、レイラからの手紙をフレデリックに渡してくれるかの?」
エルヴィス爺さんが先ほどの話を要約してフレデリック達に説明するのだった。
・・
・
「そうですか。
ウィリプ連合国で異種族を2名選定を・・・随分と王都は思いきった事をしましたね。
それに主達が話していた高い値の者に注意するというのもその通りかと思います。
買う事については王都からの正式な依頼ならば断れないでしょう。
タケオ様は貴族としての仕事をしてくればよろしいかと。
ですが、まだ本題には辿り着いていません。
タケオ様への報酬は何が欲しいのかというのが問い合わせ内容ですね。」
「はい。」
武雄が頷く。
「タケオ様、金貨ですか?」
スミスが聞いてくる。
「毎回金貨というのも・・・守銭奴と思われそうですよね。」
武雄が腕を組んで考える。
「では、人材が欲しい・・・タケオ様も奴隷を購入するとか?」
アリスが聞いてくる。
「ヴィクター達のような部下は欲しいですが・・・
行く前からわざわざ宣言をしてまで買う気はないですね。
良い人材が居れば買うかもしれませんが、今は買う気はないとしておきますか。」
「ん~・・・その考えは通りますか?
勝手に買って来たら何か言われそうです。」
スミスが言ってくる。
「ふふ、今回に限っては平気でしょうね。
王都からの頼まれ仕事ですから少しは大目に見てくれますよ。
ただ・・・王都の依頼は2名。それに対して3名買って来たら3名ごと王都に迎えられるかもしれませんね。」
「確かにの。
金貨300枚以内だったら言われるかもしれぬの。
じゃが自費で買うなら言われる事もないじゃろう。
まぁ、その辺はタケオが向こうで決めれば良いことじゃ。」
「はい。」
「ではタケオ様は何を報酬で貰いたいのですか?」
スミスが聞いてくる。
「そうですね・・・
あ、面白・・・良い事を思い付きましたよ♪」
「タケオ様、思いっきり面白いと言いましたね・・・
で?何を考え付いたのですか?」
アリスが呆れながら聞いてくる。
「今回の仕事を受ける条件と私への報酬はですね。」
武雄は楽しそうに言いそれを聞いた皆が「そんなこと認められるのかな?」と思うのだった。
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