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第686話 魔王国の新年会。1(選定方法を通達しようとファロンへの規制。)

魔王国の広間では円卓に幹部と同盟国の王が座り、新年の昼食懇談会が開催され和気藹々として・・・いなかった。

その場のヴァレーリとタローマティそして王軍幹部以外が難しい顔をさせていた。

ちなみに領主はヴァレーリが前に言っていた人に変身する獣人、獣人、エルフ、メタルゴーレム、グリフォン、ドワーフ、エルダーリッチが居る。

「・・・陛下。」

重々しい空気の中、一人の幹部が声を上げる。

「なんだ?」

「先ほどの宣言は・・・その本当ですか?」

「我が皆に嘘を言うか?

 ほれ、書類にちゃんとサインをしたぞ。」

ヴァレーリが書類を机を滑らてその幹部の前に放る。

「・・・確かに正式な書類です。

 しかし我らに何の相談もなく・・・」

「別に言う必要はないだろう。

 先王もしなかった。我がする謂れはない。」

ヴァレーリがぴしゃりと言い放つ。

「では、この書類の通り・・・

 今年の1月から9月末まで魔王国に貢献した度合いを観察し、王軍幹部もしくは領主から推薦された者の中で上位3名を選出したのちに10月と11月の2回王軍幹部と各領主が投票し最多得票数の者を次期国王とするのですか?」

「ああ。何か不満があるのか?」

「・・・いえ。」

「陛下、これは組織的に決められやしませんか?」

「それの何が悪い?

 組織的に決められるならその者は政略が他の者より得意という事だ。

 今後の魔王国の運営も上手くしてくれると思うな。

 それに・・・それが嫌ならお前がなれば良いだろう。」

「・・・わかりました。」

「陛下、貢献した度合いとはどういう基準なのでしょうか?」

「ふむ、簡単だ。『誰もが認める成果』を出せばいい。

 我が国に仇なす者を倒す武力を示す。

 軍勢を率いて国内の平定をさせる統率力を示す。

 領内の経済力を上げ納税額を増加させる政治力を示す。

 他者を押し退け自身の評判を上げる知略を示す。

 やり方はいくらでもあるだろう。

 何も基準は用意しない・・・成りたい者が自らの実績を声高々に報告し、皆を納得させろ。

 そうすればおのずとその者に王としての風格が出るという物だ。」

「わかりました。」

「ふむ、次期王の選定方法は以上だ。

 何か意見がないなら次に行くぞ。

 ファロン、立て。」

「はっ!」

ブルーノが席を立つ。

「ファロン、皆に会うのは初めてだろう。

 名乗れ。」

「はっ!

 ブルーノ・アルリーゴ・ファロンと申します。

 先代ヴィクター・ヴィヴィアン・ファロンが行方不明になり代わりに当主になりました。

 以後お見知りおきをお願いします。」

ブルーノが礼をする。

他の幹部達は頷くだけだ。

「うむ。

 皆、ファロンは子爵位を与えている。領地はヴィクターの時のままだ。

 教育してやれ。」

「「はっ!」」

「ファロン、座っていいぞ。」

ヴァレーリに言われてブルーノは席に着く。


「あとは・・・まぁ、とりあえず昼食だな。

 それと面白い物を見つけたぞ。」

ヴァレーリが楽しそうに言う。

「マトモですか?」

誰かが聞き返す。

「新種の酒を見つけた。

 なんでも隣のアズパール王国で作った物という事だ。

 とりあえず食事と一緒に嗜むのも良いという説明書きもあってな。

 皆にも飲んでもらおうと用意した。」

「ほぉ、人間がですか。

 どれどれ。」

立派な髭を生やしているドワーフが目を煌かせながら飲む。

「ほぉ・・・味が薄いですな!

 水のように飲めますぞ。」

「いやいや、ボナ殿、貴方はどんな酒も水のように飲んでいますよ。

 もっと味わって飲んでも良いのでは?」

エルフがドワーフに苦言を言う。

「かぁー!ブリーニ殿はわかっていないな!酒というのは一気に大量に飲む物だ!

 この醍醐味がわからんか!」

「わかりませんね。

 私は貴方のようには飲めませんので味わって飲みますよ。」

エルフは呆れながら言う。

「ボナ殿は酒が強いですからね。

 私なんかはほとんど飲めませんよ。」

少し歳が行っている風貌の男性がそう答える。

「カスト殿は酔いが回りやすいのでしたね。

 私達も感覚が鈍くなるのでお付き合いで嗜むぐらいしかしませんけど。

 そう言えばカスト殿は昨日は泊ったので?」

「パーニ殿、今日の朝に到着しましたよ。

 私は元の姿ならすぐに飛んで来れますからね。」

獣人の男の問いかけに男性が答える。

「・・・この酒は美味いな。」

フードを被った男がそう呟く。

「ベッリ殿、死者でも味がわかるのか?」

ドワーフが聞いてくる。

「ボナ殿、いつも言っているでしょう。

 別に死者だからと言って感覚がなくなっているわけでは無いと。

 そんな事を言ったら陛下も死者ですよ?」

「まったくだな。

 我も括りの中では死者に分類されるのだろう。

 ボナ、我も味覚もあるし痛覚もあるぞ。」

「陛下、それは失礼しました。

 それにしてもこの酒は良いですな。

 うちでも購入してみましょうか。陛下、どうやって買えば良いのでしょうか。」

「・・・年間180本程度しか入手できないらしいぞ。」

「「え?」」

その場の何人かが固まる。

「さて・・・更に売ってくれと言った所で売ってくれるのか・・・

 そう言えば店主の話では今年から出回ったと言っていたな。

 ならこれから様子を見ながら順次生産してくのだろう・・・

 という訳で・・・ファロン。」

「はっ!」

「今後・・・そうだな今後10年間はアズパール王国エルヴィス領に対しての侵攻を禁止する。」

「は・・・え?」

ブルーノが真顔で固まる。

「この酒欲しさに侵攻するのも手ではあるがな。

 まずは生産がしっかりとしない内は向こうの政情を不安にさせても良い結果にはならん。

 10年経てば生産が安定するだろう。その後に侵攻するなり、それまでに買い付け量を多くするなり次の王が決めれば良い。

 皆わかったな!」

「「はっ!」」

ブルーノ以外の皆が頷く。

「へ・・・陛下、その先ほどの次期王になる為の『皆が認める成果』というのですが・・・

 私は侵攻という手段が取れないのでしょうか?」

「ん?・・・確かにそうだな。それ以外で成果を出してみせよ。

 それにまだお前は領主に成りたてだ。領内が落ち着くまで侵攻が出来るわけではないだろう?

 何を気にするのだ?まさか・・・お前は侵攻する気だったのか?準備期間もあるし、我には何も言ってきていないが?」

「いえ!陛下の裁可を頂く前に侵攻などしません!

 陛下の仰る通り領内の平定に今尽力しています!」

「そうだろう、そうだろう。

 今は領内を上手くやりくりして万が一、向こうから攻め込んできたら返り討ちにする事を考えればよい。」

ヴァレーリがうんうん頷く。

「陛下、うちが侵攻の手段を取ったとしてファロン殿の支援は受けれないのでしょうか?」

「パーニは侵攻がしたいのか?」

「全然。ですが手段の一つとしては常に持っておきたいというのはあります。

 万が一、選定期間中に向こうから慣例の戦争を言ってきた際に支援が受けれないのはなかなか厳しい物かと。」

「ふむ・・・慣例の戦争ならファロンも対処出来るだろうが・・・あまり勇んでも良い結果は出来ないだろう。

 先の話ではないが、今後10年の間はパーニ、お前がアズパール王国との戦争の指揮権を持っておけ。

 いきなりファロンに総大将をさせる訳にもいかんだろう。

 ファロンはパーニを見ながら総大将の役割を見て学べばいい。

 わかったな2人とも。」

「はっ!」

「はい・・・畏まりました。」

パーニは真面目な顔で答え、ブルーノは苦々しく頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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