第685話 王都守備隊からの提案。(異種族を雇用したい。)
「「・・・」」
広間に集まっている幹部連中が難しい顔をさせながらアズパール王の説明を聞いていた。
「という訳でその役目をタケオに任せたいという事なんだがな・・・
皆、どう思う?」
「んー・・・確かに前に話をした人間種以外の雇用問題を一歩前進める方法ではあります。
ですが、アズパール王国は奴隷制度を取っていません。
それをウィリプ連合国から入手するとは・・・果たしてどう思われるのか。
確かに実績を作らないといけないのもわかりますから・・・キタミザト殿に買って貰い我ら側の関で奴隷契約を解除すれば体面は平気かもしれませんが・・・」
オルコットの考えに他の文官も頷く。
王都守備隊からの提案とは武雄の部下であるヴィクターとジーナのように教養があり、武力もある奴隷を買い25年契約で雇うというシンプルだが根幹を揺るがしかねない提案だった。
そして購入実績がある武雄に特務としてウィリプ連合国に行って貰い、まずは4名の異種族を選定と購入をして王都守備隊で5年から10年面倒を見て異種族の雇用においての問題点を洗い出そうという考えもあった。
そして王都守備隊管轄にしたのは最高峰の部隊で厳格に訓練を行うと共に警備兵や兵士では万が一、離反や武力蜂起をした際に後れを取ってしまう恐れがある為、即応できる武力を保持しているからだった。
「ん~・・・確かに最初に配属させて様子を見るには王都守備隊や我ら騎士団が万が一に際して有効でしょう。
配属先としては真っ当ではありますが・・・果たしてアズパール王国の為に尽くしてくれるのかがわかりかねます。」
第1騎士団長が意見を言う。
「それに購入資金についてですが、あのキタミザト卿ですら2人を手に入れる為に金貨240枚を払ったと報告書にありました。
普通に買いに行けば金貨260から300枚はかかる可能性があり、王都守備隊総長が仰る4名だと金貨520から600枚を見込まないといけません。
先程のエルヴィス伯爵領とゴドウィン伯爵領の関の臨時予算を組んだばかりです。
財政面をみると現状ではその額の支出は難しいと考えます。」
財政局長から意見が出る。
「ん~・・・だがなぁ・・・今後を考えればこの人事が刷新される時に入れたいのもあるんだよなぁ・・・
最大に頑張ったとしてどのくらいの捻出が可能だ?」
「最大で・・・1名分で金貨100枚でしょうか。」
「流石にタケオでも金貨100枚では元領主級1名ですら難しいだろう。」
「陛下、私の局の予算から金貨100枚を割り当てください。」
人事局長が立ち上がり発言する。
「良いのか?
人事局もギリギリなのだろう?」
「まぁ・・・ですが、先の会議で意見を言わせて頂きましたが、まずは武官で採用されない事には評価も出来ません。
陛下達や王都守備隊がやる気になっているなら早い内にするべきです。
それにこの案件はどの局よりもまずは人事局が支援するべきだと思っています。
私達は今までも、そしてこれからも人員の評価をするのです。
初めての雇用なのです。ケチって能力が足りていない者を採用しても意味がありません。
しっかりとした能力を持っている者を採用し、評価する。
それを元に今後の採用基準を作るのです。
今うちの部署が困っていても数年後、数十年後の人材の拡充が出来る事を考えれば安い物です。」
「なら、うちの局も支援しましょう。
条件としてはのちのち良い異種族を回してくれることで。」
そう言って苦笑しながらもう一人立ち上がる。
「総監局長か。」
「はぁ・・・2部局では何ともならんでしょう・・・
陛下、財政局と人事局、総監局・・・あと総務局と軍務局ですか?
5局で計金貨300枚を用意します。」
さらに3人立ち内1人が説明する。
「・・・なら財政局長、皆と打ち合わせをして2名分を用意してくれ。」
「はい。」
「あとはキタミザト殿が引き受けるかですね。」
「ん~・・・研究所とは関係ないからなぁ・・・」
オルコットの指摘にアズパール王が斜め上を見ながら思案する。
「皆の言う通り誰もしていない分、我々では高くつくかと。
ここは実績のあるキタミザト殿にお願いしたい所です。」
オルコットが微妙な顔をさせて言う。
「妖精のミアの感覚とタケオの決断力があってあの2人の採用だからな・・・今回はして貰うしかないだろう。
購入する際の条件としては見た目が人間に限定するとかだな。」
「そうですね・・・
受け入れ側の心情的に同じ外見の方が反発は少ないでしょう。
で、陛下、キタミザト殿への報酬はどうしますか?
研究所とは関係のない仕事になってしまいますが。」
「・・・金で解決するか?」
「またですか?・・・まぁキタミザト殿が欲しがるものがわからない時点で金銭しか手段はないというのはわかりますが、そう毎回同じような報酬では・・・キタミザト殿が欲しがる物がわかれば良いのですが。」
「ふむ・・・ウィリアム、レイラ経由でそれとなく聞いてくれるか?
出来ればタケオが来るまでに揃えられる物が理想だが。」
「わかりました。
レイラにそれとなく聞かせます。」
ウィリアムが頷くのだった。
「さてと、この案件はとりあえず決まったな。
それとこれから立食の懇談会だったか。
オルコット、いつからだ?」
「9時課の鐘から開始です。
では皆さん、この場は終わりです。」
「うむ。
皆、今年も精一杯乗り切るぞ!」
「「「はっ!」」」
アズパール王国の1年が始まるのだった。
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