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第678話 武雄と酒屋の今後の話。

武雄はローの酒屋に入って行った。

「おじさん、こんにちは。」

「キタミザト様、いらっしゃいませ。

 すみませんね。年末な物で店内が賑わっています、ほほほ」

店の中は買い物客がいろいろ見て回っていた。

「いえいえ、商売はこうでなきゃいけません。」

「キタミザト様、ご用の向きは何でしょうか。」

「ウォルトウィスキーについてです。」

「ふむ・・・

 奥で話しましょうか。」

とローが真面目な顔つきで武雄を店の奥に連れて行くのだった。

・・

席に着くとローがお茶を出してくる。

「ありがとうございます。」

「いえいえ。それで年末なのにウォルトウィスキーの話とは何でしょうか。」

「そうですね・・・おじさんにとっては難しい判断が1個と将来の展望の話が1つありますが・・・

 どちらから聞きますか?」

「・・・難しい方からで。」

「そうですか。

 ではウォルトウィスキーについてですが、初回の3年間は年間3000本の生産量の15%(・・・)の450本を、4年後からは12000本の15%の1800本を領外用に向けて販売をさせて頂きたいと思っています。

 まぁもう少し厳しく言っても良いでしょうが・・・おじさんにはこれで十分でしょう。」

「・・・初回から領外に売るのですか?

 キタミザト様、どんな展開を考えておいでで?」

「今、隣の魔王国のエルフ領で生産されていると言われている米という穀物の入手が出来るのか掛け合っています。」

「魔王国のエルフですか。

 それと米という穀物ですか・・・」

「ええ。その穀物を領内で栽培し、ゆくゆくは新種の酒(・・・・)を作ってみたいと思っています。」

「!?」

ローが驚愕の顔をさせる。

「それでも最初の数年もしくは十数年は失敗するでしょうが、これが出来ればまた一風変わったお酒が出回るでしょう。

 私達としてはまずは確実に米の入手がしたいのです。その為には魔王国でエルヴィス家(・・・・・・)の名声を高めたいのです。」

「その一端がウォルトウィスキーだと?」

「ウスターソースもおいおい使いますけどね。

 要はエルヴィス家は新しい食材を(・・・・・・)作り出す能力がある(・・・・・・・・・)と思わせたいのです。

 そして米を確実に入手し、この地で栽培を行いたいと思っています。」

「・・・キタミザト様、伯爵様はその考えを知っていますか?」

「ええ。もうどこに新しい(・・・・・・)村を作るか(・・・・・)を検討し始めていますよ。

 入手を待ってから検討しても意味がないと言って、素案を新年の局長会議にかけると息まいています。」

「ん~・・・」

ローが腕を組んで悩みだす。

「ただし、この新種の酒は製造法が確立されていません。

 なので次の日に出来るかもしれないし、おじさんの代ではなく次の息子さんの代で出来上がって来るかもしれません。

 はっきり言ってしまえばこれは将来に向けた投資になります。

 ウォルトウィスキーやウスターソースと言った売れるのが(・・・・・)わかっている(・・・・・・)のとは違い、美味しく作れるのかも売れるのかもわからない賭けの分野になります。」

「・・・ですが、キタミザト様は・・・少なくとも作れると考えておいでなのですよね?

 ウォルトウィスキーのように。」

「あれは既存の施設の流用ですからね。出来て当たり前なんですよ。

 むしろウォルトウィスキーは味がどうなっているかの方が問題でしたね。

 ・・・ついでに言うと私が考えている新種の酒の熟成期間は1年です。」

「それは短いですね!?

 熟成が1年で美味しい酒が?」

「まずは酒を作り出す方法を確立させ、その後に味を決めていくのが望ましいと考えています。

 まぁ新種の酒を造るには大量の米が必要だとは思いますけどね。」

「米をまず大量に作らないといけない。

 そのためには今のウォルトウィスキーを使ってでも入手すべきと?」

「施政者側の意見としては領内の特産品は数があればあるだけ良いです。

 需要についてはわかりませんが・・・ウォルトウィスキーもいつかの段階で頭打ちになるでしょう。

 上手く広まった時の最大需要はどのくらいを見込んでいますか?」

「・・・ウォルトさんに言わないでください。

 私は国内の需要は最大で年間60000本と見込んでいます。」

「国外はどう思いますか?」

「ん~・・・10000本いけば良い方かと。」

「4年後から12000本ですが、おじさんはどのくらいを作らせたいと思いますか?」

「・・・48000本です。

 国内が40000本、国外に8000本を見込んでいます。

 キタミザト様はどう思われますか?」

「個人購入、酒場、女性が接客してくれるような歓楽街にも卸す事を考えるなら。

 領内で20000本、周辺3伯爵領で50000本、他の国内で20000本、他国に6000本・・・倍はいけるのではないですか?」

「いや・・・キタミザト様、流石にその数値は・・・

 私の48000本も良い方向に相当見込んだ数値です。

 今の段階でさらに倍は危険でしょう。」

「ふむ・・・注文状況を見ながらしても良いかもしれません。

 それに需要が多いからと急造して品質を落とされてもいけませんね。」

「はい。

 その辺の品質については息子達にちゃんと教えています。

 そしてウォルトさんとも話し合っています。

 決して粗悪品を出すような真似はしません。」

「信頼はコツコツとしか積み重ねていけませんが、不評は一気に広がります。

 品質が悪くなったと広まったらなかなか拭えないと思いますからね。」

「はい。」

「と、おじさん、450本は領外用に用意出来ますか?」

「・・・何とか揃えてみせます。」

ローは頷く。

「はい、お願いしますね。」

武雄はにこやかに頷くのだった。




ここまで読んで下さりありがとうございます。

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