第677話 シモーナからの手紙。とシモーナの旅路。5(情報を集めよう。)
客間にフレデリックとヴィクターとジーナがやってくる。
「主、お呼びとの事ですが。」
「うむ、すまぬの。
ジーナの叔母より手紙が来たのでのとりあえず呼んで貰った。」
「叔母様からですか?」
「うむ。
今日来たという事は向こうに着いたらすぐに返事を書いたのだろうかの?」
「そうですね。
そしてこちらに送り出してから動き出しているので今後の予定が書かれているのでしょう。」
「うむ、では中を見るかの。」
エルヴィス爺さんが中身を確認するのだった。
・・
・
「ふむ・・・要約するとウォルトウィスキーは魔王国の王都に順調に行きそうじゃの。
そしてタケオの探している米は初回は200㎏、その後4年間も200㎏を買う事を条件に仕入れて来るとの事じゃ。」
エルヴィス爺さんが武雄に手紙を渡す。
「ちなみにウォルトウィスキーは今後3年間は年間120本でその後は年間600本の輸出可能と書いておいたのじゃが上手く行くかのぉ。」
「え・・・それは少なくないですか?
今後3年間は年間3000本の製造なのでその内の120本を国外に出すというのは確かに少ないと言えないかもしれませんが。
・・・今後3年間は製造本数の1割、300本を4年後からは800本くらいを輸出用に用意しておいた方が良いのではないでしょうか。」
「実際にそこまでいらないと言われると困るじゃろ?」
「その時は王家の方々や他領などに贈答用にと思っているので心配はしていませんが。
それよりも早急にローさんと話し合って領地外用のウォルトウィスキーの数を決めないといけないかもしれませんね。
向こうがこちら側で用意出来るよりも要求してきたら大変です。
ある程度は確保したいですね。」
「ふむ・・・
タケオ、とりあえずタケオの言う通り1割を領地外に出せるように調整してくれるかの?
タケオの話ならどちらに転んでも売れそうではあるからの。」
「わかりました。
このあと話しに行ってきます。」
武雄が頷くのだった。
「うむ。
それと手紙をヴィクター達にも見せてくれるかの?」
「わかりました。
ヴィクター、ジーナ、手紙です。」
武雄が2人に手紙を渡す。
「はい。」
ヴィクターが中身を確かめジーナに渡し、ジーナも中身を見て武雄に手紙を戻す。
武雄はそのままフレデリックに渡す。
「・・・そうですか。
特にヴィクター達には言及はないですが、主とタケオ様の指示通りにしたとありますからこちらの事情も分かっているのでしょう。
ちなみにタケオ様、先方の米を5年間にわたり200kg購入すると言う提案はどう致しますか?」
「10年間でも構いませんけどね。」
武雄が即答する。
「ふむ・・・タケオ、うちの領内で作るのではなかったのかの?」
「ええ。ですが入手先が確保できるのであればそれに越した事はありません。
輸入と言っても高々200㎏ですし、喫茶店で出すとしても数日分でしょう。作付けするしないに関わらず何とでもなります。
それに籾の状態で毎年200㎏入るのであれば、私の料理として100㎏使わせて貰って残りの100㎏を作付けに回せるのなら私が料理を楽しみながらも適した農法を数年で見出せそうです。
適した土地、栽培方法、肥料や種蒔きの時期等々試行錯誤をしないといけませんからね。
毎年購入出来るのなら思う存分試験が出来ます。」
「まぁ・・・そうとも言えるかの。
では回答としてはウォルトウィスキーについてはいくつ納入するかは交渉結果次第の報告待ちでわしらの上限は300本じゃの。
米については最長10年で購入する用意があるとしておこうかの。」
「「はい。」」
フレデリックと武雄が頷くのだった。
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「はぁ・・・米なんて売ってないさね・・・」
シモーナが商隊の面々と一仕事終えてお茶をしていたのだが、ついつい弱気になる。
「奥様、探している物がないのですか?」
商隊の1人が声をかけてくる。
「そうなのよ・・・
米の存在はわかったのだけどね。」
「米というのはあるのはわかっているのに売っていないと。」
「そ。話を聞くとエルフの国か領地に行けば食べさせてくれるんだけど・・・
誰も買ってこないそうなのよ。」
「買わない?売らないではなくてですか?」
「商人が行っても買い付けをせずに戻ってくるっていう話さね。」
「話をしていた者はどちらかに行った事があるので?」
「行った者の又聞きの又聞き。」
「不確か過ぎます。
ですが、その話が本当だとして考えられるのは米という穀物が美味しくない。
もしくは国内か領内以外では売っていない穀物という事でしょうか。」
「それでも商人が誰も買ってこないなんてあるのかね?」
「さて・・・後は生産量が少ないという事でしょうか。
奥様、買い付けは出来るでしょうか?」
「不味かろうがなんだろうが、客先から200㎏の購入を願われているさね。
これを金貨10枚・・・1㎏当たり銅貨50枚・・・どんな穀物何だろうね。」
「その金で小麦を買った方が良いと思うのは・・・私は政治には向かないのでしょうね。」
「あたしも向かないさね。
だが今回は買えなくても購入の経路は目星を付けないといけないだろうね。」
「今後の取引も見込まないといけないですね。
と、奥様、明日はどうしますか?」
「明日からは新年の会合さね。
まぁその場での情報の交換があるだろうし・・・こっちとしても隣の伯爵と子爵は情報だけでも買ってくれそうなのがわかるからね。
少しでも情報を集めて来ようかね。」
「そうですね。
奥様が約束されたウォルトウィスキーでしたか?
少しでも多く納入して貰う為には情報を送って私共が有益だと教えないといけないですね。」
「まったくだね・・・
はぁ・・・まぁこれも商売さね。
将来楽になる為には今が頑張り時なんだろうね。
商店同士はあたしが話するが・・・頼むよ?」
「わかっております。
下には下の付き合いがありますから。」
「・・・羽目を外し過ぎないようにね。
あんたは珍しくうちの一族で酒が飲めるからね。」
「そういう付き合いもあるという事です。」
「否定はしないさね・・・そっちは頼むよ。」
「はい。わかっております。」
シモーナ達も動くのだった。
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