第673話 シモーナの旅路。3(商談♪商談♪)
「はぁ~・・・新感覚ぅ~♪」
ヴァレーリが恍惚の表情を見せる。
「なるほどね。
シモーナさん、これは確かに売れると思わせる1品ね。
人間が作ったにしては十分なレベルよ。」
白トカゲがストレートをチビチビ飲みながら言ってくる。
ちなみにヴァレーリが全種類を回し飲み、タローマティがロック、シモーナがオレンジ割りを飲んでいる。
「そうですね。
あたしでも簡単に飲めるのは初めてです。」
「じゃあ、あとの4本と商隊の15本全部買う事にするわ。」
「本当ですか!?」
「ええ、これは売ってみせるわよ。
価格はいくらにする?」
「ちょ・・・ちょっと待ってください・・・
向こうの席を借ります!」
とシモーナが手紙と紙とペンを持って違う席で小売価格を考え始める。
「おば様、19本全部買うよ~。」
ヴァレーリがにこやかに言ってくる。
「あら?ダニエラちゃん、全部は売らないわよ。
私用に4本貰うからね。
15本は店頭に出すわよ。」
「じゃあそれ全部。」
「今日の4本と後日の11本で良い?」
「それで良い。
値段は言い値で結構。どうせ経費。」
とシモーナが戻って来る。
「はい、これが20本の売値です。」
「うん。どれどれ?
銅貨700枚?1本あたり銅貨35枚かぁ。」
「輸送料がかかるのよ。
でも頑張った金額だよ?」
「まぁ他国のだからしょうがないか。
毎月どのくらい入荷できそう?」
「ん~・・・まだ作り始めて3年なんだって。
これから増産体制を組むから3年後までは年間120本でお願いしたいって。
その後は年間600本は出荷できると書いてある。」
「最初の数年の所が少ないなぁ・・・まぁ向こうもまずは国内の流通を確保したいのかもね。
・・・シモーナさん、全部買うわ!」
「本当ですか!?」
「ええ。ただし、向こうからの仕入れを年間180本を確定させなさい。
金額は金貨7枚で良いです。」
「ん~・・・わかった、何とかします。」
シモーナが唸りながら頷く。
「おばさん、いくらで買えば良いの?」
ヴァレーリが聞いてくる。
「1本銅貨45枚でどうかしら?」
「・・・わかった。
タローマティ。」
「はいはい、お代は先に15本分払います。」
と即金で払う。
「毎度。
じゃあ今持ってきた4本は袋に入れるからね。
あとの11本は到着次第王城に入れるから。」
「それで結構です。」
タローマティが答えると白トカゲが割れないように養生をしながら瓶を袋に入れている。
「あ、そうだ、おばさん。
エルフの国か領地の『米』っていう穀物を扱っている所は知っている?」
「穀物かぁ、わからないわね。
ダニエラちゃんは知ってる?」
「・・・エルフの穀物?
国か領地かによって違うかも・・・その米って何ですか?」
「いや、先方が米っていう穀物を籾状態で200㎏を購入したいと言ってきていてね。」
「アズパール王国が?」
「正確には国境を面しているエルヴィス領の者が。」
「ふ~ん・・・200㎏探せば良いの?」
「ん~・・・隣で買ってくれるのならうちの領地でも作付けしてみようかと思うから250㎏は欲しいかなぁ。」
「・・・知らない。
でも陛下経由でどっちかに聞いてみる?
売れるのかを。」
「いやいやいや、陛下にそんなことをさせる訳には行かないでしょう?
あたしはまだ首を繋げておきたいしね!」
「別に聞くだけだし問題ないでしょうに・・・じゃあ、私がそれとなく皆に聞いてみる。
わかったらおば様に伝言しておくから。」
「ごめんなさいね。
侍女のお仕事もあるのに。
こっちも問屋を巡って探してみる事にするよ。」
「構わない。良い酒を持ってきたお礼。」
ヴァレーリがほろ酔い加減でシモーナに答える。
「それを言うなら良い酒を作り出したアズパール王国のエルヴィス領のワイナリーに感謝ね。」
「ん、そうしとく。
おば様、また来るね。
帰るよ、タローマティ。」
「はい。では失礼いたします。」
とちょっと足元がふらついているヴァレーリがタローマティを連れて店を出て行く。
・・
・
「あらあら、酔いが回っちゃって。
戻って仕事が出来るのかしらね?」
白いトカゲが苦笑する。
「おばさん、売れるかな?」
「売れるわよ、任せておきなさい。
先方とは連絡を密にしておいてね。
数年後にそれなりの量を入れられるようにしてくれるとやりやすいわ。」
「とりあえず数年間の輸入量を180本にして貰えるようにしないとね。」
「そうね。
月15本か10本かの違いは意外と大きいからね。」
「ん、おばさんの為にも頑張るよ。」
「で、この後は?」
「ん~・・・穀物問屋を探してみる。
でもとりあえずおばさんの所で休憩かな。
酒を抜かないと。」
「じゃあ私の酒に付き合いなさい。
あ、そうそうアズパール王国に売れるかわからないけど東部から面白い干物が来たわよ。」
「美味しいの?」
「綺麗な燻製なんだけどね~不味いんだわこれが。」
「それ売れないじゃん!」
「まぁまぁ、気付け薬と思って食べてみてよ。」
「うへぇ・・・」
シモーナの苦難が始まるのだった。
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ヴァレーリとタローマティが店を出て王城に向かって帰宅途中。
「・・・タローマティ。」
「はい、何ですか?ダニエラさん。」
「さっきのシモーナとか言ったか。
あの女の深層を見てこい。」
「・・・陛下、気になる事でも?」
「あぁ、酒の販売よりも米の方が必要なようだ。
それに何だかアズパール王国の売り込みに必死だ。何かある。探ってこい。」
「はっ!」
とタローマティが姿を消す。
「・・・ウォルトウィスキーを1本置いて行けよ。」
姿を消した自分の精霊に毒づくのだった。
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