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第671話 62日目 シモーナの旅路。1(エルヴィス伯爵領からの手紙。)

「さて、準備は出来たね。」

シモーナは王都に向かう荷馬車を見ながら最終確認をしていた。

「はい、奥様。

 王都に向けての荷駄リストの最終確認をお願いします。」

部下がリストを見せてくる。

「・・・うん、問題はないね。

 行ってくるよ?」

「おぅ、頑張ってこい!」

「「お母さん、いってらっしゃい!」」

シモーナは旦那と息子2人に見送られて

「さ!出立し」

「奥様!」

店の奥から別の部下が走ってくる。

「ん?どうしたさね?」

「今、店の裏に商隊が来ました。」

「ん?・・・変さね。今の時期は入荷も出荷も見合わせているはずだけど。

 どこから来たんだい?」

「アズパール王国のエルヴィス領からの商隊です。」

「・・・ふむ。

 皆、すまないけど少し休憩しておいてくれるかね?

 それとついでに荷駄の中の物の最終確認をもう一度して積み荷の固定も見ておいて。」

「「はい!わかりました。」」

部下が行動を開始する。

「で、荷物は届いているのかね?」

「はい。

 ですが、商隊の者が手紙を預かっている(・・・・・・・・・)と言っており、奥様に直に渡すようにとの厳命をされていると言っております。

 如何しましょう。」

いつもなら荷物と手紙両方を受け取って(・・・・・・・・)お終いのはず。

なのに今日に限っては直接渡せと言ってきている。

「とりあえず、その商隊に会ってみようかね。」

「はい、こちらになります。」

部下の先導でシモーナが店内を横切り裏手に行くのだった。

・・

店の応接室。

シモーナと旦那が難しい顔をさせていた。

「これは・・・この情報はマズい。」

「だな。

 だが、ヴィクター義兄さんもジーナも生きているという事がわかった事は朗報だ。」

「それはそうさね。

 だが、2人から来た経緯がかなり問題さね。

 ウィリプ連合国で奴隷とは・・・一体全体・・・というよりもブルーノだろうね。」

「1人ではないだろう。統治組や騎士組の多くが関与していると考えるべきだ。

 エルヴィス伯爵やキタミザト子爵の言葉通りに今はこの手紙もろとも焼却するしかない。」

「折角生きている証拠があるのに・・・」

シモーナが寂しそうな顔をさせる。

「そこは伯爵も子爵も謝りの文言があっただろう。

 人間種とは言え隣の2人の貴族は優しいのはわかった。

 今はその方々の下で働いている事に感謝をするべきだ。

 こういった手紙は時間を置くわけにはいかない。さっさと焼くぞ。」

「はぁ・・・わかったわ。」

シモーナは目の前の銀の深皿に手紙を置き、火を付ける。

手紙が燃える様子を旦那と2人で見つめるのだった。

・・

「で、だが。

 伯爵からの依頼をどうするかだな。」

旦那が灰をさらに細かく潰しながら言ってくる。

「そうさね・・・ウォルトウィスキーについては陛下の周りの者が良く行く店を知っているし、そこにアズパール王国製のワインも年間数十本入れているから何とか出来そうさね。

 だけど・・・」

「エルフの所の米だな。」

「どこか良い問屋は知っている?」

「そうだなぁ・・・穀物はうちでは扱っていないからなぁ。

 王都で調べるしかないだろう。」

「案件が案件なだけに採算度外視(・・・・・)でも・・・いやそれでは皆にバレるかね。

 薄利でもこの後の輸出量を多くして貰えたら問題はないだろうね。」

「初回の取引で薄利にするのはマズい。

 通常の粗利を乗せるべきだ。伯爵や子爵からも特に価格の要請が来ているわけでは無い。

 どちらかと言えば確実に入手をして欲しいとの意向のようだ。

 えーっと・・・子爵の方には具体的な上限金額が載っているな。

 ・・・金貨10枚が上限でもみ殻が付いた状態で200㎏以上か・・・」

「破格さね。なんでそんなに費用をかけられるのか・・・

 一体この『米』にどんな価値があるんだろうね。」

「わからんな。

 だが初回で200㎏を輸入する気概があるのだから。

 上手く転べば毎年定数を卸してくれるかもしれないな。」

「籾の状態なら向こうでも作付けする気かね。」

「わからん・・・だが初年度だけ買う事は普通はしないだろう。

 ふむ・・・5年だな。

 王都で交渉に臨む際に初回は200㎏、その後4年間も200㎏を買う事を条件に仕入れて来てくれ。」

「良いのかい?

 エルヴィス家(向こう)の意向も確認せずに。」

「この米の入手は同胞の生活が懸かっている。多少は無理はする物だ。

 それに隣が栽培するならうちでも栽培が出来るかもしれない。

 数年先を考えてうちでも輸出品目が増える可能性にかけるのも悪くはない。

 農地はまた開墾すればいいしな。新しい事はするべきだ。」

「わかった。

 じゃあ、それで行こうかね。

 済まないけどあたしはこれから伯爵と子爵に返答を書いてくるよ。

 商隊にはウォルトウィスキーを15本持たせてくれるかね。

 それで先に出発させておいてくれる?」

「お前は何本持って行くんだ?」

「5本さね。それをまずは陛下に行きつくようにするつもりさね。

 残りの4本は戻ってから飲ませて貰うわ。」

「それで良いだろう。

 伯爵からの返事が来たらそっちに回せば良いのか?」

「いつもの宿で。」

「あぁ、わかった。」

シモーナ達が動き出すのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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