第657話 王都に手紙が届く。6(食後のマッタリ時間。エリカに現状を教えとこう。)
王家の皇子妃一同+エリカが食後のお茶会をしていた。
王家の男性陣はバーに飲みに行っている。
「はぁ・・・やっぱりタケオさんのレシピが伝わってから王城の料理の質がグンと上がったわ。」
レイラがホクホク顔をさせる。
「そうね、タケオさんに感謝ね。」
アルマも満足そうだ。
「あの・・・アルマお姉様、レイラお姉様。
さっきの交渉の後でそんなのんびりできるのですか?」
クラリッサが恐々と聞いてくる。
「交渉はある意味で仕事だしね。
後々に感情を持ち込んではいけないわよ。
どんなに罵声をお互いに浴びせていても次の時には笑顔で挨拶をするぐらい切り替えは大事よ。」
アルマがクスクス笑う。
「ですよね~。
前日まで言い争っていた相手が次の日は味方をしてくれる事なんてざらにありますしね。」
レイラものほほんとしている。
クラリッサは「王都はどんな所なのよ!?」と驚いていた。
「あ、そうだ。
リネット、エイミー、後々で良いんだけど。
魚醤とさつま揚げの流通価格を話合いをしましょう。
統一価格にするかとか販売量はどうするかも決めないといけないしね。」
「「わかりました。」」
アルマの提案にリネットもエイミーも頷く。
「さてと・・・私はタケオさんからの手紙でも読みますかね。」
レイラが武雄からの手紙を広げる。
「何よレイラ、自分の部屋で見れば良いじゃない?」
ローナが呆れる。
「一人で読むと考え込んでしまうので、こういう手紙は他の人が居る場所で読むことにしているんです。」
とレイラは楽しそうに手紙を広げる。
「あぁ、レイラが楽しそうにしているわ。
あ、そうだエリカさん。」
「はい、なんでしょうか。」
「うん、ウィリアムからの求婚があっても受けなくて良いから。」
「「!?」」
アルマの唐突な宣言にその場のレイラ以外の時が止まる。
「えーっと・・・何がどうなったのですか?」
エリカが汗をかきながら言ってくる。
「ウィリアムはね、一目ぼれが激しいんだけどね。
あれは一種の病気ね。で、今は丁度落ち着いて来たから話をしてきたわ。
とりあえず、さっきエリカさんが湯あみに行っている間に話をしてね。ウィリアムからは求婚しない事にさせたから。
あとはエリカさんがウィリアムを気に入ればすればいいし、他の人が気になるならそれも良いわ。
エリカさんのしたいようにして構わないわよ。
私達第3皇子一家は貴女を妃としてではなく、相談役としての力を期待する事にしたから。」
「つまりは?」
「今まで通り、私達の領地の為に全力を尽くしてくださいという事です。
それにエリカさんには私達が動けない分いろいろ動いて欲しいですしね。
その際にいろんな人達にも会うでしょう。
その中から選べば良いんじゃないかとも思っています。
私達では出来なかった出会いもあるでしょうからね。」
レイラが補足する。
「結果としてエリカさんがウィリアムの事が好きになったのなら私達2人がまず考慮します。
なのでウィリアムから直接求婚されても今は無視をして結構よ。
その際は私達に報告をしてください。然るべき対応をしますから。
この件については、あくまでエリカさんが主体であると考えてください。」
「わ・・・わかりました。」
エリカがぎこちなく頷くのだった。
「アルマ、レイラ、何でいきなり言ったの?
執務室とかで言えば良いのに。」
ローナが聞いてくる。
「いいえ、この場で言うのが一番なのです。
皆さんの前で言っておけばウィリアムが私達の目を掻い潜って、万が一の行動をとるのを抑えられますからね。」
アルマが伏し目がちでお茶をすする。
「なるほどね。
公言しておけばウィリアムが何と言おうとも2人が主導権を握れるのね。」
「ローナお姉様、セリーナお姉様からもチクッと小言を言っておいてください。」
レイラが礼をする。
「「わかったわ、任せて。」」
ローナとセリーナが若干やる気の顔を見せるのだった。
唐突なアルマの宣言もすぐにのんびりとお茶会が再開される。
「ん~・・・」
武雄の手紙を読んでいるレイラが腕を組んで悩んでいる。
「レイラ、どうしたの?」
セリーナが聞いてくる。
「タケオさんとアリスに『何か面白い事はないか』聞いたんですけど・・・」
「うんうん、で?」
「タケオさんから童話本のあらすじが来たんです。」
「・・・また突拍子もない物が来たわね。」
セリーナもどう受け答えすれば良いのか悩む。
「童話ですか?」
エイミーが聞いてくる。
「ええ、何個か書いてあるんですけど。
内容が・・・」
「童話なのに難しいの?
タケオさんならその辺は間違えないと思うんだけど。」
セリーナが首を傾げる。
「逆ですね。
簡単でわかりやすいんです。」
「良いことじゃない。
何が問題なの?」
「どこまで話を大きくするか・・・ですね。
タケオさんはあらすじだけなので数枚ですけど、本として出すならある程度盛らないといけないし・・・かといって盛りすぎてタケオさんの世界観は崩したくないし・・・」
「レイラ、やる気ね。」
「アリスの続編の売り上げが良いんですよね~♪
違うジャンルの本も出しても良いかなぁとも思うんですよ。」
「あのレイラ殿下。
童話はどんな物があるのですか?」
エリカがレイラに聞いてくる。
「この国の童話は騎士物がほとんどかなぁ?
カトランダ帝国はどうなのかな?」
「そうですね・・・伝記物が多いですかね。
戦いよりも街の発展に尽力したとか飢饉の時に対処して民を救ったとかだったかと。」
「お国柄が出るのね。
アズパール王国は本来魔物と戦う事が義務付けられている節があるからね。
そういった意味では騎士物が多くなるのは当たり前なのかもね。」
ローナが考えながら言ってくる。
「でもアンやクリナ、私達が好き好むのはやはりアリス様のような戦記物です。」
エイミーが言ってくる。
「んー・・・そうだよね~・・・
タケオさんが書いてきたのはどちらかと言えば『他者に優しくしてコツコツと仕事に励めば幸せになる』もしくは『現状に満足し努力を疎かにすると他者に抜かされる』という感じなんですよね。」
「私達大人達から見ればそういう題材も必要だとはわかるけどね・・・
売れるかどうかはちょっとわからないわね。」
セリーナが考えながら言う。
「そうなんですよね。
題材や内容が良いだけで売れるわけではないですから・・・売れる本を書くにはこの題材は難しいかもしれないんですよね。」
「んー・・・いきなり出しても難しいという事なら何かしら切っ掛けが必要かもしれないわね。」
ローナも考えながら言う。
「でも少しずつ浸透させるというのも必要なのではないでしょうか?」
リネットが意見を言う。
「私もその題材は売れる売れないよりもまずは少しずつでも目に触れるようにしていく事が重要かと思います。」
クラリッサも肯定的な意見を出す。
「ふむ・・・もう少し内容を精査しようかなぁ。
大まかな流れさえ違わなければ登場する者達を替えても良さそうだし・・・」
レイラが「んー・・・」と悩むのだった。
・・
・
「あ、そうそう。アリスからも報告が来ていたんですよ。」
レイラは童話の話を止めて話題を変え始める。
「ん?・・・レイラ、何かアリスに頼んだの?」
「ほら、王都に居る時に保健で。」
「・・・えーっと・・・体温かな?」
「はい。
その話をタケオさんから聞き出したそうです。」
「本日一番の内容ね!
それと皆の保健の実施した感想も聞かないとね!」
ローナ達が久方ぶりに保健の話で盛り上がるのだった。
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