第652話 王都に手紙が届く。1(学院の卒業試験とは。)
武雄は夕霧達との打ち合わせを終え、書斎に戻って仮眠し、朝食後にエルヴィス爺さんへの報告も終えて、今はのんびりと書斎でエルヴィス邸にある本を読んでいた。
「ん~・・・
・・・あれ?もうすぐ昼ですか。
はぁ、読書をしていると早いですね。」
武雄は軽く伸びをして体のコリをほぐす。
「チチチッ・・・」
少し開いている窓からスーがやって来る。
「ん?スーですか。
おかえり。」
「チュン。」
「ふむ、その様子だと何事も無かったのですね?」
「チュン。」
スーが頷く。
「報告は後で皆さんと一緒に聞きます。
お疲れ様。」
「チュン。」
とスーが武雄の書斎の毛布の上に移動しコテッと横になる。
武雄はそんなスーを見ながら「今日も何事もなさそうですね」と思い読書を続けるのだった。
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王家の皇子妃一同+エリカが昼後のお茶会をしていた。
「はぁ・・・暇ね。」
ローナが呟く。
「まぁ、領地から離れているし、やる事はないし。
クリフ達は連日の会議みたいだけど・・・
年末にそれほど多くの決め事があったかしらね?」
セリーナが茶菓子片手に呟く。
「何でも対ウィリプ連合国とカトランダ帝国で揉めているみたいですよ?」
アルマがのほほんと言ってくる。
「・・・タケオさん達からの報告かぁ。
エリカさん、どう思う?」
セリーナがエリカに聞いてくる。
「出身国と移住国で争うのは気持ち的に微妙です。」
エリカが微妙な顔をさせる。
「そうよね。
まぁ私達もお義父さまもやる気はないはずなんだけどね。
今後、どういう対策をするかは決めないといけないのは確かか。
でもそんなに揉める事なの?」
ローナが腕を組む。
「正確には後ろ盾になる王家が第2皇子一家のみになるので各国境に面している貴族とのやり取りが揉めているのです。」
レイラが補足してくる。
「・・・うちかぁ。」
ローナがガックリとする。
「そうかぁ、ニールはウィリプ連合国に面している貴族としかしていないものね。
そこにうちとしていた貴族を組み込むんだからそれなりに軋轢はありそうね。」
セリーナが苦笑する。
「ウィリアムの報告だとやり方が・・・報告書の記載方法等が違うそうなのです。」
「それは・・・そうね。
性格の違いでしょう。」
「ええ。なのでその辺の調整を今しているようです。」
「・・・まぁ、やりながらお互いに良いとこ取りをして貰うしかないかなぁ。」
「そうね。」
ローナとセリーナが苦笑するのだった。
と、扉がノックされ、メイド達がお茶を持ってきて皆の前のお茶を交換していく。
配膳を済ませたメイドの一人がレイラに近づく。
「レイラ殿下。」
「はい、何です?」
「エルヴィス家より手紙が届いております。」
とレイラに分厚い手紙を渡す。
「ありがとう。」
「はい、では。」
メイドが退出していった。
「・・・手紙?・・・何で何通もあるの?」
ローナがレイラが分厚い包みを解いているのを見ながら温かいお茶を飲む。
「ん~・・・これはローナお姉様達宛ですね。
これは・・・あれ?エイミーちゃん宛?」
とレイラがメガネをかけながら仕分けしている。
「エイミー?
・・・あ、タケオさん宛に送ったレシピの回答かしらね?」
「それよりうちにも来ているの?
エルヴィス家に何か頼ん・・・ちょっと待って、それ全部がタケオさんからなの?」
ローナとセリーナが首を傾げる。
「全部ではないですけどほとんどはタケオさんですね。」
レイラが仕分けを終える。
「リネットお姉様、エイミーちゃんは?」
レイラがリネットに手紙を渡しながら聞くとリネットがビクッと体を硬直させる。
「・・・レイラ殿下に『お姉様』呼びされるのに慣れません・・・」
「いやいや、年齢順でするという慣例ですよ?
クラリッサなんてもう慣れています。」
「いえ・・・レイラお姉様、慣れているようにしているだけで・・・
私も恐々しているんですけど・・・」
クラリッサがボソッと抵抗する。
「はぁ・・・2人とも慣れてね。
で、リネット、エイミーは今日は学院?」
「はい。
今日は午前中で終わりのはずなんですけど・・・
確か『試験だから早く寝る』と昨日は言っていました。
なのでもうすぐ戻って来ると思うのですが。」
「学院の試験かぁ・・・
確かクラリッサは前に受けた事あったのだったわよね?」
「は・・・はい。
ですが、学院の卒業試験ですのでエイミーでん・・・さんの今の試験がどういった内容かは知りません。」
「ちなみにどんな事をやったの?」
「えーっと・・・
地方の地名や特色の穴埋め、国の歴史の穴埋め、経済関係の論文、軍事についての考察論文・・・でしたでしょうか。」
「簡単そうね。」
セリーナが言う。
「簡単・・・んー・・・あれは簡単なんですかね・・・」
クラリッサが首を捻る。
「どうしたの?」
ローナが聞いてくる。
「自分の住んでいる地域の事なら問題なく言えるのですが、他領や国全体の出題だったので難しかったです。」
「そうかぁ。
でもエイミーちゃんなら難なく出来そうね。」
レイラが頷く。
「王立学院で学ぶのであれば基礎から教えられますし、私達みたいに独学ではないでしょうからたぶん。」
「その中でも上位に食い込んだのだから、クラリッサは優秀よね。」
ローナが言ってくる。
「まぁ・・・優秀なのでしょうか?」
クラリッサが首を捻る。
「そういうことよ。
学院に居なくてもしっかりと勉強をすれば上位に行けるという良い模範だわ。
まぁ学院からしたら堪った物ではないでしょうけど。」
アルマが苦笑するのだった。
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