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第646話 ステノ技研の中途採用説明会。3(説明会終了とその後のマッタリ時間。)

「んん~・・・終わったの。」

エルヴィス爺さんが会議室で伸びをしていた。

会議室にはエルヴィス家の面々と文官達、そして武雄と鈴音が居た。

ステノ技研と選ばれた工房は別室で面談をしているし、あとの工房も違う別室で新工房設立に向け話し合いが行われている。

「はぁ・・・疲れましたね。」

武雄がほのぼのとお茶を飲んでいる。

「・・・タケオ様、波乱がなくて良かったですね。」

アリスもお茶を飲みながら言ってくる。武雄も「ですね~」とほのぼのだ。

「タケオ様、皆が思っている事をズバリと言っておいででしたね。

 まさかあそこまでしっかりと言うとは思いもしませんでした。」

フレデリックが苦笑してくる。

「えーっと・・・フレデリック。

 タケオ様が言ったのは端的に言えば『基準を作って魔王国に面した貴族領に納める』でしたよね?」

スミスが聞いてくる。

「はい、そうです。

 しかしタケオ様は言葉の裏に『基準に満たなかったら売れない』と言い放ったのです。

 さらに『これから作る物(・・・・・・・)が基準になる』と言っていたのです。」

「あれ?タケオ様は今ある物の平均値を調べる事も言っていましたよね?

 あれが基準なのではないのですか?」

「いいえ。

 タケオ様は『第一、第二研究所が基準を作る』と言った上で『今ならその基準作りに参加できます』と宣言していたのです。

 その流れで鍛冶屋組合長は工房の一新を決めておいででした。

 決め手となったのは『このままではこの国で商売がし辛くなる』という危機感からでしょうが、同時に自分たちが基準を作り出せば大いに繁栄するという道も残されているからです。

 たぶん新工房は早々に立ち上がりこの国の防具の収集が図られます。

 現状では評価基準が定かではないので、長さ・重さ・用途別で収集し、研究所の試験小隊と一緒に評価基準を考え、そして集計した物をタケオ様経由で王都に提案をして貰う運びになるでしょう。」

「はぁ・・・なるほど。」

スミスは少し呆気に取られながらフレデリックの説明を聞いている。

「まぁ、それはもう少し先でしょうかね。」

武雄がその説明を聞きながら苦笑している。


「うむ。

 実はのタケオ、基準もそうじゃが・・・そもそもこの国では工房の統合を進める事は困難だったのじゃ。

 事前に言わなくて済まなかったの。」

「そうなのですか?」

武雄は首を傾げる。

「うむ。

 タケオが思うがままに説明をさせたいという考えから余計な事前情報は渡したくなかったのじゃ。」

「構いませんよ。」

「そうか、すまぬの。

 でじゃが、ここ100年ほどは我が領地も国も安定しているのでの小規模な工房が乱立し、そして多くが廃業しているのじゃ。

 統合をしようとは誰一人として思わんかった・・・いや違うかの。

 施政者達(・・・・)は発注先の数を少なくする為に統合させる気はあったはずじゃが、さきの鍛冶屋組合長の言葉ではないが『自由に物が作れないのは嫌』という根強い反発にあって頓挫しておる。

 そもそも我が国は魔物の住み家を切り開く事が建国の精神じゃ。

 つまりは兵士がいつも最前線にいるという事になり、工房も定住ではなく兵士達と一緒に移動するという考えが基本になっている。

 まぁ今となっては随分と時代錯誤ではあるがの。

 各工房はその精神を重んじ、統合はしないでいつでも動けるようにするという考えがあるのじゃが・・・

 果たして今の工房達は我らが動いたらついて来るのかは甚だ疑問じゃの。」

「タケオ様、早く言うと『誰かの下に付きたくない』という考えを隠す為の方便だと思われます。」

「なるほど。」

「ふむ。

 言葉を飾らねばそうなるの。どちらにしても何だかんだ言って『統合はしない』という方針に固まっていたのが、今回の1件で動くの。

 タケオ、上手くいったの。」

「そうですね。

 今の話を聞いてどちらの意見(・・・・・・)もわかるので上手くいって良かったです。

 それに何だかんだと拒否されるなら最終手段に打って出ようかと思っていましたけど。

 使わなくて良かったです。」

「「それは何かの(ですか?)」」

エルヴィス爺さんとフレデリックが同時に聞いてくる。

「簡単ですよ。

 『私は別にこの街の工房で作りなさいとは言われていません』と言うだけです。」

「「・・・」」

エルヴィス爺さんとフレデリックが「そりゃないわぁ」という顔をさせる。

「タケオ様、それは言わなくて正解でしたね。

 あまりにも鍛冶屋組合に喧嘩を売り過ぎです。」

アリスが呆れながら言い、スミスもコクコク頷く。

「ええ、だから使わなくて良かったなぁと思っています。

 まぁ実際はもう少し言葉尻は変えますよ?

 ですけど本質は一緒ですし、それにこれは脅し文句でもありますが、脅すだけで言っているわけではありません。」

「「え!?」」

アリス達が固まる。

「近くにやる気満々の貴族が来ますからね・・・そっちに頼むという事も考えられるのですよ。」

「あぁ・・・レイラお姉様ならさっさと街の区画を替えそうです。」

「ふむ・・・

 うちの領内だけの話でなく他の領地も含めればそういう話になってもおかしくはないの。

 はぁ・・・鍛冶屋組合長が頷いてくれて良かったの。

 危うく街の振興策が1個他領に行ってしまう所じゃった・・・」

「はい、危うかったですね。」

エルヴィス爺さんとフレデリックがため息をつきながら穏便に(?)事が進んだことを安堵する。

「さてと、屋敷に戻ろうかの。

 アリス達はどうするのかの?」

「そうですね~・・・

 タケオ様、どうしますか?」

「私はハワース商会によってから試験小隊の訓練場の石撒きをして戻ります。

 鈴音はどうしますか?」

「私は工房に戻ります。

 拳銃の図面がもうすぐ出来そうですので。」

「そうですか。んー・・・私は帰ってスーちゃん達とお茶でもしますかね。

 スミスはどうします?」

「僕はもう一度家具屋に行ってこようかと。

 もう一度見て考えようかと思います。」

「じゃあスミス坊ちゃん、私と一緒にハワース商会に行きますか。

 あそこは家具職人達がいますからスミス坊ちゃんの好みの家具があるかもしれません。」

「そうですね。

 お爺さま、では僕はハワース商会に行ってから帰宅します。」

「うむ、スミス達は気を付けて行ってくるのじゃぞ。」

「「はい。」」

武雄達はお茶会を終了するのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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