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第645話 ステノ技研の中途採用説明会。2(武雄の考え。)

休憩が終わり、エルヴィス家とステノ技研の面々が会議室に戻って来る。

会議室に居た面々が起立して出迎えるのだった。


30名が居た室内は8名程度まで少なくなっていた。

武雄はその場を見て「意外と残ったなぁ」と思うのだった。

鍛冶屋組合長や他も出席者も先ほどの席に座っている。


「さて、後半の説明を始めたいと思います。

 さて、人数も絞られました(・・・・・・・・・)ので席替えをしましょうか。」

経済局の文官がそう言うと扉が開き、総監部の執事達が会議室の席をロの字型に変更させる。

「ふむ・・・わしらはどこに行けば良いのかの?」

エルヴィス爺さんが席を見て考える。

「ではエルヴィス伯爵様方は奥の窓側でお願いします。

 ステノ技研の方はこちらで、キタミザト様とフレデリック様、そして私と総監部の方々はドア側にしましょう。

 そして鍛冶屋組合の方々はステノ技研の方々の正面でお願いします。」

とかなり変則的な配置を指示すると執事達の内2名がすぐに座り紙に何かを書き始める。

他の面々も座りだす。

「「「??」」」

鍛冶屋組合の面々が武雄の席の割り当てを不思議に思いながらも指示の通りに席に座る。

と残りの執事が皆にお茶を配膳し出す。

・・

少しすると鍛冶屋組合の面々以外には先ほどの執事が書いていた紙が配られる。

「さて。

 今度こそ説明会の後半を始めましょうか。

 これからは・・・キタミザト様、お願いします。」

「はい、わかりました。」

経済局の文官がそう促すと武雄が席を立つ。

「ドルー・キャロル鍛冶屋組合長、確認をしますが、ここに残っている面々は統合されても構わない(・・・・・・・・・・)という考えで残っていると考えてよろしいのですか?」

「は・・・はい!

 先ほどの休憩の際に出席していた皆と話し合いました。

 ステノ技研の話を聞いてこれなら統合をされても良いと思う面々が残っています。

 それと私の事はキャロルで構いません。」

「わかりました。

 ブラッドリーさん、一旦退出し、直接話したい工房を皆で決めてきてください。

 その間に私の方の話をしておきます。」

「畏まりました。

 ボイド、ベインズ、一旦外に出よう。

 バキトとサリタはこの場に残ってキタミザト様の話を聞いておいてくれ。」

「「はい。」」

「では皆さま、一旦退出します。」

「うむ。」

エルヴィス爺さんが代表して頷くとブラッドリー達が退出して行った。


「では、選考をしている間に私の方の話をしましょう。

 まずもうご存知でしょうが私は来年早々に研究所を開設する運びになっています。

 事業内容としては武具の開発、改良、戦術の考察、工業製品の開発になっています。」

「はい。」

「私はステノ技研には武具の開発、改良と工業製品の開発の試作品の製造を委託する事を決めています。」

「はい。

 そのための人員の募集が今回の説明会だと認識しています。」

「そうですね。

 ですが、この説明会には私の方の事情も加味されています。」

「はぁ。」

「極端に言ってしまうとですね。

 ステノ技研で選ばれなかった工房(・・・・・・・・・)を1つにまとめ研究所が考え出した武具の生産を行う工房を作って頂きたいのです。」

「え!?・・・それは他の街中の工房に振られるのではないのでしょうか?」

キャロル組合長や工房の面々が驚く。

「・・・キャロル組合長。

 本当にそれが最善だと思いますか?」

「え?」

「私が今考えている武具の第1弾は盾になります。

 現状の盾よりも高性能、高品質な物を現状の価格で普及させなければなりません。

 高性能、高品質な物・・・言葉では簡単でしょう。

 ですが、実際は高性能、高品質をするならば絶対に原価が上がる(・・・・・・・・・)のです。

 原価上昇分をどこで抑えるのを見込むのか。

 そこは簡単に言えば仕入原材料の単価(・・・・・・・・)を下げる事から始めないといけません。

 そして次に作業の効率化、各輸送費用の低減・・・

 そしてエルヴィス家の盾は年間100個程度の更新がありますが、複数の工房で均一な品質の盾が出来るのでしょうか。

 私は1つもしくは2つくらいの少数の工房が研究所で発案された盾を生産するべきだと思います。

 生産する工房を少なくし、集中購買をさせることで原価を安くし、同一の商品を同じ職人が作り続ける事で、作業の効率化と品質の維持が出来るのではないかと思っています。」

「それは・・・確かにそのとおりですが・・・」

「高品質だから高価格帯だという考えは確かにあります。

 例えば、先の盾の話をするならば現状の盾に比べて2倍の強度、半分の重さを実現させることが出来たならもしかしたら倍の価格で買い取られるかもしれません。

 ですが、盾を購入しているのは基本的に貴族達です。

 年間予算や購入数は既に決まっている為、おいそれと変更はかけられません。

 それに年間100個の買い替えをしているのですから、個数を削減する方法もいただけません。

 であるならば、販売価格は据え置きでしか購入をして貰えません。

 ですが、差し迫る脅威に対し王都からは新種の盾の要望が来ています。

 今のままでは全滅(・・・・・・・・)しかねないのです。

 キャロル組合長、どうすれば価格は据え置きで高性能の盾を作れると思いますか?」

「それは・・・はい、キタミザト様が仰るように原価を下げるしかありません。

 ですが、他の工房がそれで納得するのでしょうか?」

「納得ですか?」

「はい。

 退出して行った工房の意見としては『自由に物が作れなそうだから』という意見がほとんどです。

 ステノ技研やキタミザト様が考える大規模工房では研究所が作り出した盾を作る為の工房という事が強調されています。」

「そうですね。

 そもそも私が所管する第二研究所は魔王国に面した貴族向けの武具の開発拠点とされています。

 なので、対象販売先はエルヴィス伯爵領とゴドウィン伯爵領、そしてテンプル伯爵領向けの商品になります。

 その3伯爵領相手の規模をこの街だけで作るのですよ?

 それなりに生産効率を上げないと賄えないでしょう。」

「3伯爵領の兵士向け・・・ですか?

 ・・・最大5000名・・・いや予備等々も含めれば6000名分・・・確かに各々でしていたら賄えません。

 んー・・・」

キャロル組合長が腕を組んで悩む。

「あと、自由に物が作れないとの意見ですが、基本的にはお好きにして構いません。

 ただし、研究所(私達)が作り出した機構を使って新たな物を作るのは私達と契約した工房のみになります。

 ですので、万が一、私達が生み出した物を勝手に使用した物を発見したなら制作した工房には相応の対価を頂きます。

 また、私達が作り出す武具については評価試験制度が導入されます。

 つまりは盾や剣・・・武具の基準が第一及び第二研究所が作り出す物がアズパール王国(この国)の基準になりますので、それを基準に良し悪しが語られるでしょう。」

「ということは・・・値段と性能が常に評価されると?」

「はい、一般向けにはそういう事になるでしょう。

 あとは意匠面であったり魔法具として性能を上げるとかいろいろ手はありますが・・・一様の基準は出来ます。

 それと私達からの指示で作った物が基準になる事もありますが、逆に制作側のステノ技研や制作工房の意見を国の基準にすることも可能です。」

「・・・私達が作った物が国の基準に?」

キャロル組合長の目つきが一気に経営者のものに変わる。

「正確には今出回っている武具の規格の統一でしょうか。

 長さは?強度は?耐久性は?価格は?・・・いろいろな平均値(・・・)を持って今の基準を作り上げる必要があります。

 いち早くその利点に気が付けば・・・平均基準に適合した物を早々に市場に送り出す事が出来、結構な確率で利益が出るとは思いませんか?

 それと平均よりも高付加価値の物を作りたい時の最初の指針がわかるはずです。

 そしていち早くこの国の市場動向が手に入る立場になるのです。」

「確かに・・・それはかなりの魅力です。」

「我々が作り出した技術は王都、一研、二研で共有され、契約された所には製造の許可が出ます。

 利益も少しは頂きます。

 基本的にはこの街以外でも作られるという事を念頭に置かないといけません。」

「はい。

 つまりキタミザト様は統合した工房には以下のような仕事をお願いするのですね?

 1.盾等の武具の一括生産を行える規模を有し原価低減等の努力が出来る事。

 2.早々に流通されている武具の平均値の割り出しを行い、現状での武具の基準を王都に知らしめる事。

 3.既存の武具の改良をするに当たってはそれを基準にさせる(・・・・・・・・・)だけの技術を研究所に提案する事。

 なのですね?」

「ええ、その通りです。

 同じ価格で物が売られていても一方は国の評価合格品、もう一方は何も評価されていない。

 さて・・・どちらがより買われるでしょうか。」

「・・・わかりました。

 この後、残った工房と話し合い工房の統合と新工房の立ち上げをしたいと思います。」

「はい、お願いします。

 製作販売するに当たっての研究所との契約内容は王都から頂いた資料をお見せします。」

「はい、畏まりました。」

キャロル組合長の言葉に他の工房の面々も頷く。

と扉をノックしてブラッドリー達が入って来るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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