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第640話 工房の名前決定と飲み仲間の雑談。

ここはブラッドリー達の工房。

夕飯が終わり食堂でのんびりと・・・出来ていなかった。

明日の昼はこの街の工房の面々と打ち合わせを行う事になっているのだが、それを前にして工房名を決める為の話し合いが終わっており、夕飯の後に発表するとしていたからなのだ。


「発表します!」

ベインズが席を立って声を上げる。

「「「はい。」」」

バキト、サリタ、鈴音が背筋を伸ばす。

「私達の工房は今後、ステノ技研とします!」

「「「・・・」」」

若者3人は特に反応をしない。

「あれ?どうしたのですか。」

「『わー』とか『キャー 』とかないのかの?」

ベインズとボイドが不思議そうに聞いてくる。

「いや・・・キタミザト様の案そのままだなぁ~と。」

「まぁ、爺ちゃん達が決めたならいいよ。」

「親方達が納得して決めたのなら特には。」

3人とも淡白だった。

「はぁ。で、これがうちの今後の紋章になる。」

今まで黙っていたブラッドリーがため息をつきながら紋章を書いた図面を机に広げると3人とも覗き見る。

「盾の中央に懐中時計の文字盤ですか?」

「ああ。

 これは工房の刻印にも反映させるが偽造防止をしている。

 まぁ完璧には防げないがな。

 当たり前だがうち以外の類似品は修理も問い合わせにも対応しないからな。

 これでうちのものかを吟味することになるだろう。」

ブラッドリーがそう言う。

「「「・・・」」」

3人が一所懸命に偽造防止を探している。

「ん~・・・

 スズネ、盾の右下にあるこの点が不自然だよね。」

「はい。

 それに点が六角の盾の上側にも非対称で2点あります。」

「・・・あれ?これって・・・」

バキトが左上と右下の点に定規を当てる。

「あ!11時と5時の所の文字盤の線が・・・定規にピッタリだ。

 ということは・・・」

サリタが右上と右下の点に定規を当てる。

「3時の所の文字盤の線の端にピッタリです・・・

 あ、上の2点も12時の所の文字盤の線の端にピッタリ。」

鈴音も呟く。

「一応、これが偽造防止だが・・・気が付く者は気が付くだろうがの。」

ボイドがため息を付く。

「そうだな。後はこれから作る懐中時計は裏の蓋の内側にも打ち込んでおくぐらいしか出来んな。

 盾や剣等々を作った際には目立たない所に打ち込んでおくしかないだろう。」

ブラッドリーが呟く。

「そうですね。」

サリタがそう答えバキトも頷くのだった。

「さて、工房名も決まったし、刻印も決まった。

 明日の打ち合わせの中身を皆で吟味しようか。」

べインズが話題を変えるのだった。


------------------------

「それは災難でしたね、ほほほ。」

「そうですねぇ。これで・・・4軒目ですか。」

「・・・どこも一緒なんだな。」

「ははは、モニカさんも大変ですね。」

ローとラルフとベッドフォードとテイラーがモニカの話を聞いて感想を述べる。

「・・・何よ皆、他人事みたいに・・・」

モニカがジト目で4人を見る。

「「だって他人事だし。」」

ローとラルフが正直に言う。

「なによ!こっちは半分くらい店の将来をかけた金額にしちゃったわよ!」

「あぁ・・・その程度ならローさんもうちもしていますよ。

 普通ですね。

 それよりもベッドフォードさんの方が問題ですね。

 やる事は決まっている、仕事の8割はウスターソースに持っていかれる、失敗したら軽く潰れる。」

ラルフが酒を飲みながら呟く。

「あぁ・・・成功できるのかぁ!?」

ベッドフォードが机に突っ伏す。

「・・・壮絶ね。」

「うちだって仕立て屋を2軒傘下に入れて、組合を動かして工場まで作った・・・

 上手くいかなければ私は死ぬしかないでしょうね・・・」

ラルフがため息をつく。

「ラルフの所は受注が決まっているだろう?

 あとは良い品質を収め続ければ良いのですよ、ほほほ。

 うちはワイナリーが相手で酒の品質も熟成期間の3年前の生育状況に左右される・・・

 はぁ、酒商売は難しいですね。

 うちも傘下に入って来てくれていますからね。

 失敗は出来ないですね、ほほほ。」

ローが苦笑する。

「・・・ラルフさんもローさんも壮絶過ぎるわよ。

 生き死にをかけているの?」

「商売で成功したいならそのぐらいの覚悟は必要でしょう?」

「まったくですね、ほほほ。」

ラルフとローがモニカを横目に見ながら言う。

「はぁ・・・うちはまだこの程度で済んで良かったな。」

「ですね。」

モニカの旦那さんと父親がチビチビ飲みながら感想を言う。

「「「「え?」」」」

ローとラルフとベッドフォードとテイラーの4人がその言葉に反応し2人を見る。

「え?・・・どうしたの?

 うちの旦那とお父さんが変な事言った?」

モニカが驚きながら4人に聞いてくる。

「・・・テイラー、どう思いますか?」

「相手はキタミザト様ですからね。」

「・・・まともじゃないよな。」

「ですよね、ほほほ。」

4人が憐れみを込めた目をモニカ達に向ける。

「・・・ちょっと・・・どういう事よ!?」

モニカが若干焦る。

「・・・キタミザト様が4種類(・・・)しか頼まないわけないでしょう?」

代表してテイラーが説明を始める。

「「「え?」」」

「これから先・・・

 たぶん木材関係や文具関係が全部モニカさんの所に行きますね。」

「「「ええ!?」」」

「それも圧倒的な商談結果を添えて・・・

 確かローさんの所は何ていう感じで言われたんでしたっけ?」

「うちは『新しい酒の販売網を一気に独占しませんか?売らないなら違う所に回しますよ』という感じでしたね。

 ラルフの所はどうでしたか?」

「うちは『注文取ってきましたよ、900着。』だったかなぁ。

 言葉は穏便でしたが・・・そんな感じで一気に畳みかけてきて、断れない状況になっていましたよ。

 まぁ、おかげでうちもローさんも死に物狂いで働いているんですよ。」

ローとラルフが「ははは」と笑い飛ばす。

「・・・うち・・・どうなるの?」

「「死に物狂いで働くしかないでしょうね。」」

ローとラルフが真面目な顔で言う。

「労力はかかりますが、実入りもしっかりとキタミザト様は考えてくれますよ。」

「そうですね。

 利益等々を寄こせとは言いませんね。

 まぁむしろ言わないから怖いんですけど。」

「ですね。だからこっちから契約上の支払金額を多くするんですけどね。」

「・・・しっかり考えないといけないのね。」

「今後20年の事業計画が必要ですね、ほほほ。」

「はぁ・・・もうちょっと詳しく聞かせてよ。」

モニカ達が対武雄対策を話し合うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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