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第634話 スライムとの交渉。3(その後の話。)

武雄がその場を離れて仁王とエルダームーンスライムが焚き火を囲んでいた。

「うむ、何とか上手くいったようだな。」

「精霊殿。

 あのタケオという人間は何なのでしょうか?」

「面白い奴だろう?」

「面白いというか・・・変ですね。

 普通スライムに頭を下げたり相談をしたり契約をしたりはしないです。

 スライムは攻撃能力がほとんどない種族です。

 ひっそりと森で暮らすしかない魔物です。

 それを保護し共存しようとする人間は初めて見ました。」

「うむ。」

「この地に初めて来た人間も私達の事は気にもしないでどんどん森を開墾していきました。

 それは人間に限らず、獣人もそうですし、魔物達もそうです。

 私達には目もくれずに開墾と開拓をしてくのが普通です。

 ・・・精霊殿、あのタケオの言っている商品とはどんな物なのでしょうか?

 私達を保護するだけの魅力があるのでしょうか?」

「んー・・・生活品に近いかもしれぬが、早く言えば紙に書いた文字を消すのにお主達の体液を使いたいのだ。」

「?」

エルダームーンスライムが仁王の説明がわからずに首を傾げる。

「それにお主達を使えれば他にもいろいろ出来るだろう。

 だが、何を作るにしてもタケオはお主達を酷使してまで作る気は少ないだろう。」

「そうなのでしょうか。」

「そこはお主達がこれからタケオを見て判断すれば良い事だな。」

「はい。」

仁王の言葉にエルダームーンスライムが頷く。

「ところで他のエルダームーンスライムはどうした?」

「その辺に居ます。」

エルダームーンスライムがそう言うと森から2体の人型のスライムがやってくる。

「で、そこの2人、いつまで出ないのだ?

 タケオはもうおらんぞ?」

仁王の言葉に小さいシルエットが2つ近寄ってくる。

「・・・ニオ、降りてきた時に私と目が合ったとは思っていましたが・・・

 主には気が付かれていないですよね?」

「チュン?」

ミアとスーが声をかけて来るのだった。

・・・

・・

「はぁぁぁ・・・眠っ・・・」

武雄は屋敷に戻り見回りをしていたメイドに帰宅の挨拶をしてから寝室を覗きアリスが寝ている事を確かめると書斎に行きソファに横になって仮眠しようとしていた。

と、書斎の窓をコンコンとノックされる。

「普通、この時間に窓からやって来るのは幽霊くらいだと思いますけど?」

武雄はソファから起きて窓を開けながらぼやく。

「え?主はゴーストを知っているのですか?

 この街には居ないみたいですけど。」

「チュン。」

チビッ子2名が何事もなかったかのように帰宅してくる。

「いや~まさか私達の部屋の窓が閉められるとは・・・ははは。」

「チチチッ。」

チビッ子2名がやれやれとしている。

「で、2人ともどこに居たのですか?」

「え?・・・えーとー・・・夜景が綺麗なので少し外出を。

 ねー?スー助?」

「チ?・・・チュン!」

最初、スーがきょとんとしたが、すぐにコクコク頷く。

「・・・夜間は危ないですからあまり出歩かない方が良いですよ?」

「それは主もです。

 あんな無防備に焚き火をしたら獣が近寄ってきますよ?」

「じゃあ、次回は気を付けますかね。

 外は寒かったでしょう。白湯でも飲みますか?」

「え?は・・・はい。」

「チュン?」

武雄はミア達を追求もせずに手からお湯をカップに注ぎ、2人の前に出す。

「お風呂と同じくらいですからスーも飲めますよ。

 少し体を温めなさい。」

「はぁ・・・」

「チチチッ・・・」

チビッ子2名は不思議そうな顔を武雄に向ける。

「ん?どうしましたか?」

「いえ・・・主は私達がどこに行ったか聞かないのですか?」

「夜の散歩なのでしょう?

 他に聞くことはありませんよ。」

「うぅ・・・そうですが・・・」

ミアが困り始める。

「それにしてもミア、スー、夜の散策は・・・あまり良くはないですが、出掛ける際に誰かにちゃんと言いましたか?

 万が一、怪我をしたりして動けなくなった場合に探しに行けないですからね。

 ちゃんとどこに行って何時頃に戻るかを伝えておかないとダメですからね。」

「主はちゃんと伝えているのですか?」

「ええ、ちゃんと伝えていますよ。

 今日のも深夜から朝方まで訓練場と言ってあります。」

「ざっくりなのですね。」

「今日はそうですね。

 ですが、これで朝方迄に屋敷に戻らなければ誰かしら訓練場に様子を見に来るでしょう。

 その時点で私に何かあれば探し始められるのですよ。

 この街は地方都市ですから王都よりも大きさは小さいですし、割りと住民はのんびりしています。

 ですが、この中から人を探すというのは大変難しいでしょう。

 自分を守る為にも家族に心配をかけない為にも大まかで良いから目的地と帰宅時間を言っておきなさい。」

武雄は朗らかに言う。

「は~い。」

「チュン。」

チビッ子達は白湯をすすりながら返事をする。

「ちなみに出掛ける事を誰かに言いましたか?」

「アリス様です。

 帰宅時間は言いませんでしたが。」

「ちゃんと夜の散策と言ったのですね?」

「あ・・・はい!」

ミアがコクコク頷く。

「そうですか。

 とりあえずそれを飲んだら寝ましょうか。

 私も少し限界ですね。

 瞼が重たいですよ。」

「はい。」

「チュン。」

チビッ子達も眠たそうに返事をするのだった。

・・・

・・

朝、日が昇った頃。

書斎の寝室側の扉がノックされ「タケオ様、います?」とアリスが小声で言いながら入ってくる。

「あら?

 ふふ、無事に終わったようですね。」

アリスはソファに横になっている武雄と武雄にかかっている毛布の真ん中で大の字で寝ているミアとスーを見て「もう少し寝かせておきましょうか。」と思いそっと元来た扉から静かに出て行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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