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第632話 58日目 スライムとの交渉。1

今は午前2時前。

試験小隊の射撃場の中央、小道の奥の広場との合流点で武雄は1人安座しながら簡易かまどを作ってのんびりと焚き火しながら鍋でお湯を沸かしていた。

傍らには料理長が用意した20㎏の生ゴミが入った樽(密封したので匂いはしない)が置かれていた。


武雄は報告会の後、アリスとチビッ子達と恒例のお風呂のやり取りをして皆を寝かしつけてからここに来ていた。

アリスとミアは一緒に来たがっていたが「今日は1人で行きます」と武雄が譲らなかった為、渋々アリスもミアも付いてこなかった。


武雄は夜空を見ながら「思えばここに来てのんびりと夜空を見たことがあったかなぁ」と感慨にふけっていた。

「タケオか?」

声がした方を武雄が見ると。人間大になっている(・・・・・・・・・)仁王がそこにいた。

「仁王様・・・人間(我々)と同じ大きさだと迫力がありますね。」

「ふふ、いつもはミアと同じ大きさだからな。可愛らしさを演出しているんだぞ?

 まぁ夜中の散歩くらい多少は大きくなってしたいのだよ。」

と仁王が武雄の横に座る。

武雄は何も言わずに鍋からお湯をコップに入れ仁王に渡す。

「うむ・・・すまんな。」

仁王が何も言わずにコップを受け取る。

「あ、あとかりんとうを作ってみました。」

「ふむ、茶請けには十分だな。頂こう。」

仁王がポリポリと食べ始める。

「それにしてもこの広さを1日で作ったのか?」

仁王が射撃場や広場を見ながら言ってくる。

「ええ。クゥに頼んだら思いのほか早く終わってしまいました。

 まぁ倒した木々はまだゴロゴロしていますが・・・こちらも買取が決まっています。」

「ふむ、やる事が早いな。

 で、この樽が今回の詫び品か?」

「エルヴィス邸から出る1日の生ゴミです。」

「・・・意外と少ない(・・・)な。」

「エルヴィス邸では必要以上の食材は買わないそうです。それと王都ではこれと比べ物にならないくらいの量が出ていましたよ。

 王都でもこの街でも生ゴミは肥料にすると言っていましたね。

 確か・・・腐葉土という肥料の一部にするのだとか。」

「ふむ。タケオ、肥料の三大要素は知っているか?」

「窒素、リン酸、カリウムでしたかね。

 畑の肥料には動物の糞尿が一番良いような事はなんとなく聞いた覚えがあります。」

「そうだな。

 それらの肥料を液体で作り出しているのが緑スライムだ。」

「効率が良いのですね。」

「うむ。

 スライムは森を育む存在として昔からいるようだな。」

「私達の所だと・・・細菌とか菌類ですかね?」

「うむ。

 ここにも細菌とかは居るがな。森の維持をしているというのはスライムを置いて他にはいないだろう。

 で、タケオ、伯爵達は今回の件をどう思っておるのだ?」

「私に一任されています。

 ですが、あくまでこちらから仕掛けたのだから最大級で向こうの要求は飲んでも構わないと言われています。

 ただ、決裂した場合は広場の拡張事業(・・・・・・・)をする事を提案しておきました。

 ・・・それに何かあっても拡張事業程度(・・・・・・)で収めないといけないでしょうし。」

「そうか。根絶やしには(・・・・・・)しないのだな。」

「はい。万が一、人間とスライムの間で対立をしてしまってもそこまではしたくありません。

 スライムの住居の移動を願うだけにするべきです。

 これはこの広場を作ってしまった私の責任で交渉をしないといけないですから。

 何とか穏便にすませないといけないとは思っています。」

「そうか・・・我は基本的にはその辺の助力は出来ん。この地の人間や魔物が選ぶことだからな。

 まぁ、我が居れば来るとは思うがな。」

「いえ、精霊が居る事で向こうが出て来やすい環境になるでしょうから。

 居てくれるだけでもありがたいと思います。

 私一人では近寄っては来てくれないでしょうから。」

「会う所まではお膳立てしておく。

 あとはタケオが思う通りに勧めれば良い。」

「はい。」

武雄と仁王が火を見ながらその時が来るのを待つのだった。

・・・

・・

午前3時半ごろ。

森の方から何かが近づいてくる音がしているのたが、武雄も仁王も見向きもしないで火を見ている。

「「・・・」」

やがて音は森と訓練場との境界付近でしなくなる。

「・・・」

「「・・・」」

武雄は見たいのを必死に堪えていた。


音がし始めた段階から見たくて見たくて仕方がなかったのだが、武雄は先に見ようとはしない。いや出来ない。

先に見てしまうとこの交渉で優位に立てないだろうと武雄は考えていた。

スライム相手に優位も何もないと言われるかもしれない。

だが、武雄からすればここをコラ達が使えるかの試金石だった。

この交渉が上手くいけば今後はやり易くなると武雄は確信めいた考えがあった。


「・・・あ・・・貴方は?」

森の方から来た何かが声を発してくる。

「はじめまして。エルダームーンスライム殿・・・でよろしいですか?」

「ん。」

武雄はこの時点でやっと安座をしながら体全体を森に向ける。

そこには見た目はジーナやアニータと同じぐらいな少女が真っ裸で立っていた。

「この度、この広場を作った責任者のタケオ・キタミザトと言います。

 説明に参りました。」

武雄は安座しながら手を着いて少し頭を下げる。

エルダームーンスライムがちらりと仁王を見て、仁王が頷いているのを確認する。

「・・・わかりました。」

エルダームーンスライムが武雄の正面まで来て座るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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