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第624話 大豆と小豆と小麦。2

厨房ではとりあえず小豆を煮だしていた。

担当はスイーツ担当です。


「次はタケオ、何を作るのだ?」

「小麦粉を卵で練って、油で揚げてさらに黒蜜をかける物ですね。」

「ん~?」

「『かりんとう』と言います。」

「どう作るのだ?」

「小麦粉に砂糖、塩、卵、牛乳を加えて手につかない程度の硬さになるまで混ぜ合わせます。

 で、厚めに伸ばした物を人差し指ぐらいの大きさに切り分けます。

 そして油でこんがり揚げ、黒蜜を軽く煮たら揚げた物を入れ、弱火で転がしていると固まって来るので皿に置いて余熱を取れば完成です。」

「わからんな・・・パンを作って揚げた物を蜜で煮込むのか?」

「煮込むと言う程まで蜜の量は要らなかったかと。

 漬け込むではなくて、周りに絡め少し染み込ませる感じだったはずです。」

「何となく完成形はわかるが・・・ふむ。とりあえずこちらも確認してからするか。」

「そうですね。」

「「はい。」」

・・

「あとはこの豆だな。」

料理長が大豆を持ってくる。

「一つは『きな粉』と言ってこの大豆をフライパンで炒ってから皮をむき、石臼等で挽いた物です。」

「?・・・タケオにしては簡単な物が出てきたな。

 一つという事は他にはあるのだな?」

「大豆を茹でて絞り汁を利用する方法があります。

 ちなみに絞り汁を『豆乳』といい、絞りカスを『おから』といいます。

 まず豆乳は豆を半日水に浸けます。」

「「は!?」」

皆が驚く。

「ん?なんでしょう。」

「半日も水に浸けるのか?」

料理長が恐る恐る聞いてくる。

「ええ。

 そして・・・磨り潰します。滑らかになるように徹底的に。」

「う・・・うむ。」

「全部を磨り潰したら大鍋に移してかき混ぜながら10分~15分程度煮込みます。

 その間にボウルに布を張った物を用意し、ボウルにこぼれないように煮汁を入れます。

 そして、熱いうちに搾ります。

 そうするとボウルに豆乳があり、布の中におからが残ります。」

「・・・煮汁とそのカスか。

 煮汁の方が重要なのか?」

「煮汁はそのまま飲む人もいるでしょうが、基本的には豆乳を煮詰めると膜が出来るのですがこれを『湯葉』と言います。

 豆乳は湯葉を作ったり、鍋の元にしますね。」

「湯葉?・・・元々はこの豆だし味も付けていないから豆の味しかしないのではないか?

 それは美味しいのか?」

「単体ではそこまで美味しいかと言われると・・・他の食材に合わせて楽しむ食材ではありますね。

 例えば干し海老と干しシイタケを水で戻して出汁を取り、出汁に火をかける際に軽く塩を振ります。

 そこに海老とシイタケ、湯葉を綺麗に配置して大葉とか緑色の物も入れて出汁を入れるというスープがあります。」

「タケオ、基本的には塩のみなのだな?」

「はい。これは『お吸い物』とか『すまし汁』という出汁の基本の料理なのですが・・・」

「ん?簡単そうなのだが・・・何か問題なのか?」

「味がシンプルなのでどう美味しく見せるか(・・・・・・・・・・)も重要なのです。」

「料理の盛り付けか?

 だったら肉や魚料理でもしているが・・・あれとは違うのか?」

「一緒ですよ。

 ですが・・・すまし汁単体で・・・スープのみで感嘆の吐息を出させられますか?」

「・・・無理じゃないか?

 タケオはそのすまし汁でため息を漏らしたことがあるのか?」

「そんなお高い所で食べたことはないですよ。

 家庭料理が関の山です。

 ですが一流の調理人は見た目も工夫を凝らすらしいです。」

武雄が苦笑する。

「ふむ・・・王城の料理人はしてそうだな。」

「ええ、見た目は美味しそうでしたよ。

 ですが、味は・・・エルヴィス家の方が濃厚だったように思いますね。

 全体的に塩味が濃かったですかね。」

武雄が真顔で返す。

「・・・タケオの料理を基準に美味しさを決めないでくれ。

 うちはスミス様が居るから濃い目にしているし、タケオのアドバイスもあるから何とか出来ているだけだが、どこの貴族も大体王城のような味になるはずだぞ?」

料理長や料理人達が苦笑する。

「そうですか。」

武雄が特に何も思わずに返事をする。

武雄的には「無いなら作れば良いだけだしね。」と気軽に考えていたりする。

「で、タケオ、作るのはこれで終わりか?」

「あ、あと小麦粉と砂糖と深鍋を貸してください。」

「ん?何を作るんだ?」

「いえ、きな粉とつぶ餡ですからね。

 焼き団子を作って皆に持って行こうかと。」

「皆?」

「工房と試験小隊。」

「あぁ、なるほどな。

 で、団子はどう作る?」

「小麦粉と水と砂糖を混ぜた物を一口サイズにして一旦お湯で茹でてから上げて、布巾で水気を取って木串で刺して軽く表面を焼こうかと。」

「ふむ・・・

 では午前中は大豆を水に浸し、つぶ餡を昼までに作りその後にきな粉と団子の作成だな。

午後はかりんとうを作って夕方に豆乳を作り湯葉を使ったすまし汁を作成しよう。

 タケオ、おからはどうするのだ?」

「ハンバーグに混ぜれば肉の消費量が減らせますよ。

 味もたぶん変わりませんし・・・皆さんに内緒で出してわかるか試してみてはどうですか?」

「ふむ・・・どのくらいの分量にするべきだと思う?」

「肉2:おから1ですね。

 不安なら肉3:おから1でも良いですね。」

「最大3割も節約出来るのか・・・んー・・・これは良い事を聞いたな。」

「それにおからは美容や健康に良いとされていますね。ほら、豆なので味も淡白でサラダにも使えるんですよ。

 いろいろと試しに使ってみると良いかもしれません。」

「なるほど、余すところなく使えるのだな。」

「ええ。」

「という訳だ。さて皆、作るぞ!」

「「「はい!」」」

料理人達が動き出すのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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